ニュースリリース

2014年4月3日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

「四季耕作図襖(しきこうさくずふすま)」の高精細複製品を大覚寺へ寄贈
約250年ぶりに襖の姿で再現された正寝殿竹の間を特別公開

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴プロジェクト(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)」の第7期2作品目として、ミネアポリス美術館所蔵、伝狩野山楽(かのうさんらく)筆「四季耕作図襖」全16面の高精細複製品を旧嵯峨御所大覚寺門跡へ寄贈します。

伝狩野山楽筆「四季耕作図襖」江戸時代

伝狩野山楽筆「四季耕作図襖」江戸時代

「四季耕作図襖」16面の高精細複製品を大覚寺へ寄贈

江戸時代の画家、狩野山楽筆とされる「四季耕作図襖」は、四季を通じた耕作の様子が襖16面にわたって描かれた作品です。もともとは大覚寺正寝殿竹の間を飾っていたとされ、現在はアメリカのミネアポリス美術館に所蔵されています。「綴プロジェクト」では、ミネアポリス美術館の協力のもと、「四季耕作図襖」の高精細複製品を制作し、大覚寺へ寄贈することで、作品の里帰りを実現します。これにより、16面の襖が約250年ぶりにもともとあった場所に、立体的な空間で再現されます。

「四季耕作図襖」が飾られた大覚寺正寝殿竹の間を特別公開

「四季耕作図襖」全16面の高精細複製品が飾られた大覚寺正寝殿竹の間は、2014年には春と秋にそれぞれ約2ヵ月間、その後も定期的に特別公開される予定です。「四季耕作図襖」の高精細複製品は、風景を彩る岩、松や柳などの、立体感や質感の繊細な濃淡までも精密に再現され、さらに京都の伝統工芸の技で金泥や大覚寺独特の引き手も再現されていて、実物大ならではの迫力や美しさを間近で鑑賞できます。

【「綴プロジェクト」第7期作品「四季耕作図襖」の2014年春の特別公開について】

公開期間
2014年4月4日(金)~ 6月2日(月)9:00~17:00(入門は16:30まで)
公開場所
旧嵯峨御所大覚寺門跡(京都府京都市右京区嵯峨大沢町4)正寝殿竹の間

「綴プロジェクト」では、今後も芸術を通した社会や文化の発展に貢献していきます。

  • 第7期には2作品を制作しています。第7期1作品目は、臨済宗妙心寺派 天球院の方丈障壁画のうち、重要文化財「竹に虎図襖」と「梅花遊禽図襖(ばいかゆうきんずふすま)」合わせて8面を2014年3月に天球院に寄贈しました。

【「綴プロジェクト」とは】

「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。
2007年からスタートした本プロジェクトでは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、歴史教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。今回の作品を含め現在までに全29作品を制作しました。

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。

【ご参考】

春の特別名宝展※1『大覚寺の遺宝 ~ 桃山の栄華 ~ 』 4月4日(金)~6月2日(月)

「綴プロジェクト」第7期作品「四季耕作図襖」の2014年春の特別公開※2は、旧嵯峨御所大覚寺門跡の春の特別名宝展と時期を合わせて行われます。春の特別名宝展では、激動の戦国時代を経て桃山時代から江戸時代にかけての近世大覚寺復興の時代にスポットを当て、嵯峨御所大覚寺の繁栄の基礎を築いた門跡尊信親王・空性親王と織田信長・豊臣秀吉らの関係資料や狩野山楽の描いた重要文化財の障壁画など、伝来の書画などによって大覚寺門跡文化の栄華が紹介されます。

  • ※1入場料(寺内拝観料を含めて、大人800円/小中高生600円)が必要です。
  • ※2寺内拝観料(大人500円/小中高生300円)で鑑賞できます。