ニュースリリース

2014年7月10日
キヤノン株式会社

キヤノンなど6社がパテント・トロール訴訟に対応する協定を締結

Asana、キヤノン株式会社、Dropbox, Inc.、Google Inc.、Newegg, Inc.、SAP AGの6社は、“License on Transfer Network (以下:“LOTネットワーク”)”を設立したことを本日発表します。

“LOTネットワーク”は、会員間の特許ライセンス契約を通して、パテント・トロール訴訟を削減し、また、近年増加しているパテント・プライバティアリング※1を抑制することを目的としています。

  • ※1企業が特許権を用いて収益を上げる方法のひとつ

米国における特許訴訟件数は、昨年過去最高の6,000件以上を記録しました。そのほとんどは、パテント・トロールと呼ばれる、特許ライセンスの供与と特許訴訟提起を生業とする組織によるものです。

また、パテント・トロールが使用する特許の7割以上は、現在事業を行っている企業から流出したものです。パテント・プライバティアリングでは、パテント・トロールが企業から特許を購入し、他の企業を攻撃しています。パテント・トロールが訴訟で得た収益の一部を受け取る取り決めをしている企業もあります。

“LOTネットワーク”は、このような問題に対応するための、新しい相互ライセンスです。特許使用料は発生しません。会員企業の特許が“LOTネットワーク”会員以外に売られた場合、他の会員企業はこの特許に関する使用権を取得することになります。つまり、会員企業は、自社の特許を手放さない限りは、これを行使する権利を持ち続けます。一方、特許を売却した場合は、ライセンスが他の会員企業に発効し、その特許を購入したパテント・トロールによる攻撃から防衛されます。

今回の“LOTネットワーク”の結成にあたり当初の会員となった企業は、新興企業から実績のあるテクノロジー企業まで幅広く、6社合わせて約30万件の特許を保有し、売上総額は1,170億米ドル(11.9兆円)以上※2、雇用者数も31万人以上※2にのぼります。

  • ※22013年度、1米ドル=102円ベース

【会員各社からのコメント】

[Google社 法務部次席部長 Allen Lo氏]

“LOTネットワーク”は、特許業界における軍縮のようなものです。会員企業が力を合わせることで、特許訴訟の件数を減らし、各社が素晴らしい製品を開発することに資源を集中できるようになります。

[Asana社(チームワーク・ソフトウェアのプロバイダー)共同創立者  Dustin Moskovitz氏]

新興企業は、成熟し繁栄するまでに多くのリスクを克服していかなくてはなりません。“LOTネットワーク”は、特許の乱用がこのようなリスクの一つとならないように機能する、強力かつ創造性に満ちた新しい発想です。

[キヤノン株式会社 取締役 知的財産法務本部長 長澤健一]

“LOTネットワーク”は、特許が本来持つ意義と価値を損なうことなく、パテント・トロールにとっての価値を下げる有効かつユニークな仕組みであり、このネットワークがさらに広がることで、特許システムが健全な姿を取り戻すことを期待しています。

[Dropbox社 知的財産担当弁護士 Brett Alten氏]

特許はイノベーションを妨害する目的で使用されるべきではありません。特許の乱用に対抗する“LOTネットワーク”は、新しい企業が参画するたびに効果が高くなる、創造的な解決策です。参加企業は多いほど望ましいのです。

[Newegg North America社 マーケティング責任者 Soren Mills氏]

Newegg社は、これまでもパテント・トロールとの抗争を成功裏に行ってきた歴史がありますが、“LOTネットワーク”もまた会員企業を根拠のない特許訴訟から守る貴重な手段となります。私たちは、Googleや世界をリードするテクノロジー会社とともに、業界の繁栄に不可欠なイノベーション精神を守ろうとする協定に参画できることをたいへん光栄に思います。

[SAP社 上級副社長兼知的財産責任者 Anthony DiBartolomeo氏]

“LOTネットワーク”の仕組みは、クロス・ライセンスと同様に、特許の有効的かつ有益な活用を妨げることなく、革新的な特許権者を不当な訴訟から守ります。メンバー会社は、特許を第三者に売却しない限り、すべての権利行使が依然として可能です。