特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第8期作品として、ボストン美術館所蔵、長谷川等伯筆「龍虎図屏風」6曲1双の高精細複製品を4月24日に新しくオープンする大分県立美術館へ寄贈します。
長谷川等伯筆「龍虎図屏風」安土桃山時代
サイズ:各隻 縦154.2㎝ 横340.0㎝
安土桃山時代の画家、長谷川等伯が手掛けた「龍虎図屏風」は、右隻(龍)と左隻(虎)からなる屏風です。右隻(龍)は米国の美術研究家であるアーネスト・フェノロサが購入し、その後別の人物のもとを経て、1911年にボストン美術館に寄贈されています。左隻(虎)も同様に、米国の医師で、日本美術の研究家・収集家としても知られるウィリアム・ビゲローが購入し、1911年にボストン美術館に寄贈されています。今回ボストン美術館の協力のもと、「龍虎図屏風」の高精細複製品を制作し、大分県立美術館に寄贈することで、両隻そろった形で日本への里帰りを実現しました。
「龍虎図屏風」の高精細複製品は、大分県立美術館の3階ホワイエに4月24日のオープンに合わせて設置され、特別公開される予定です。高精細複製品は、波と平坦な岩、わずかに風になびく竹だけというシンプルな構図ながら水墨画の特長である濃淡を生かし力強く表現されており、実物大ならではの迫力や美しさを間近で鑑賞できます。
上記以降は「小学生ファーストミュージアム体験事業」の際に同美術館2階研修室で活用されます。
「綴プロジェクト」では、今後も芸術を通した社会や文化の発展に貢献していきます。
「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風(びょうぶ)や襖絵(ふすまえ)、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。
2007年からスタートした本プロジェクトでは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、歴史教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。今回の作品を含め現在までに全32作品を制作しました。
入力 |
高精細デジタルデータの取得文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。 |
色合わせ |
高精度なカラーマッチング取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。 |
出力 |
世界最高レベルのプリンティング技術日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。 |
金箔・金泥・雲母 |
古来より伝承される伝統工芸の技により再現日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。 |
表装 |
京で鍛えられた確かな技術作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。 |