特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第8期作品として、ボストン美術館所蔵、曽我蕭白筆「雲龍図」全8面の高精細複製品を臨済宗天龍寺派大本山である天龍寺へ寄贈します。
曽我蕭白筆「雲龍図」江戸時代
江戸時代の画家、曽我蕭白が手掛けた「雲龍図」は、もともとは襖(ふすま)として描かれていたと考えられており、現在は米国のボストン美術館に所蔵されています。「綴プロジェクト」では、ボストン美術館の協力のもと、「雲龍図」の高精細複製品を制作し、寺号の由来が今回の寄贈作品でもある「龍」にゆかりが深い天龍寺に寄贈することで、曽我蕭白が誕生した地である京都への里帰りを実現します。
「雲龍図」全8面の高精細複製品は、国の史跡・特別名勝に指定されている曹源池庭園に面する大方丈、龍の間の壁面に設置されます。高精細複製品は毎年、年間90日程度、特別公開される予定です。「雲龍図」の高精細複製品は、ユーモラスな表情、太く力強い曲線で描かれる龍の爪、ところどころに飛び散る飛沫(ひまつ)の激しさ、さらには墨特有のにじみと濃淡のある雲が表現されており、実物大ならではの迫力や美しさを間近で鑑賞できます。
上記以降の特別公開についての詳細は未定です。決定次第、キヤノン綴プロジェクトホームページにてお知らせします。
「綴プロジェクト」では、今後も芸術を通した社会や文化の発展に貢献していきます。
「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風(びょうぶ)や襖絵(ふすまえ)、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。
2007年からスタートした本プロジェクトでは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、歴史教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。今回の作品を含め現在までに全30作品を制作しました。
入力 |
高精細デジタルデータの取得文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。 |
色合わせ |
高精度なカラーマッチング取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。 |
出力 |
世界最高レベルのプリンティング技術日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。 |
金箔・金泥・雲母 |
古来より伝承される伝統工芸の技により再現日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。 |
表装 |
京で鍛えられた確かな技術作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。 |