ニュースリリース

2016年7月8日
バチカン教皇庁図書館
Digita Vaticana
株式会社NTTデータ
キヤノン株式会社

バチカン図書館が所蔵する貴重な手書き文献の再現複製物を限定で配布
~人類の歴史的遺産を現代の技術で再現する取り組みを実施~

バチカン教皇庁図書館(以下:バチカン図書館)、株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)、キヤノン株式会社(以下:キヤノン)の三者は、NTTデータが電子化・保存したバチカン図書館が所蔵する貴重な手書き文献の画像データを用いて、キヤノンが保有する独自の質感画像処理技術とキヤノンのグループ会社であるオセ社(本社:オランダ)の隆起印刷技術を用いて印刷し、再現した複製物を200部限定で配布することに合意し、2016年6月27日に覚書を締結しました。

バチカン図書館とNTTデータはこれまで、バチカン図書館所蔵の貴重文献電子化プロジェクトを2014年4月から開始し、人類の歴史的遺産を未来に残す取り組みを進めてきました。また、キヤノンは、共生の理念のもと、地球環境の保護、国際社会の発展、教育、社会福祉、芸術・文化支援活動など、さまざまな社会貢献活動を展開してきました。このたび、三者は、バチカン図書館所蔵の貴重文献電子化プロジェクトを世界中の人々により広く理解してもらうことを目的として、貴重な手書き文献の素材の質感などを再現した複製物を作成し、200部限定で提供することとなりました。

複製物の対象となる文献は、西暦400年頃に作成されたバチカン版ウェルギリウスとして知られる「Vat.Lat.3225」で、アエネーイスの一場面を描いた鮮やかな挿絵を含むページです。NTTデータが電子化した、この文献の画像データを、キヤノンが独自の質感画像処理技術を用いてプリンターで出力できる質感情報に変換し、オセ社の隆起印刷技術を用いることで、手書き文献の素材や表面の凹凸などの質感を再現します。

複製物の提供は、本プロジェクトの資金管理団体であるDigita VaticanaのWebサイトより寄付した賛同者を対象として、2016年9月からDigita Vaticanaより順次配布します。

背景、概要

バチカン図書館とNTTデータは、2014年4月から文献の電子化作業および、NTTデータのデジタルアーカイブソリューション「AMLAD®(アムラッド)」を活用し、電子化された文献画像データの長期保存システムや画像公開用の閲覧ビューワーを含むデジタルアーカイブシステムの構築など、バチカン図書館が所蔵する希少文献を未来に残すための取り組みを進めてきました。電子化の対象には、マニュスクリプト(manuscript:写本の意)と呼ばれる貴重な一点ものの手書き文献があり、華麗な装飾が施された「装飾写本」と呼ばれる美術的価値の高いものや、当時の歴史、法律、哲学、科学および神学について著された研究的価値の高い貴重な文献がバチカン図書館にて大切に保管されています。

このたび、バチカン図書館、NTTデータ、キヤノンの三者は、人類の歴史的遺産を未来に残すための意義ある取り組みである本プロジェクトを世界中の人々により広く理解してもらうことを目的として電子化したバチカン図書館所蔵の貴重文献のデジタルデータを、キヤノンが保有する素材の質感を再現できるプリント技術で印刷し、複製物として配布することに合意しました。

対象となる文献は、西暦400年頃に作成されたバチカン版ウェルギリウスとして知られる「Vat.Lat.3225」で、ラテン文学の最高傑作ともうたわれるアエネーイスの一場面を描いた鮮やかな挿絵付きのページです。キヤノンのグループ会社であるオセ社の質感プリント技術を用いて、約1600年前の文献素材の質感や凹凸、古代ローマの技法で描かれた挿絵部の色彩などを再現した複製物を提供します。通常はバチカン図書館内に保管されており、触れることのできない希少な文献の象徴的なページの複製物であることから、配布部数は200部限定とし、本プロジェクトに対する賛同金を500ユーロ以上寄付した賛同者を対象に、2016年9月からDigita Vaticanaより順次配布します。賛同は、本プロジェクトの資金管理団体であるDigita VaticanaのWebサイト <URL:http://www.digitavaticana.org/> にて行うことができます。

図:複製する「バチカン版ウェルギリウス」の対象ページ

各者について

NTTデータ

NTTデータは、2014年3月20日から、バチカン図書館の貴重文献の電子化プロジェクトに参画しました。本プロジェクトにおいて電子化した画像や文献の情報は、NTTデータのデジタルアーカイブソリューションである「AMLAD」を活用し、構築したバチカン図書館のWEBサイト上で公開されています。同サイトは、2016年5月17日にバチカン図書館の公式デジタルライブラリサイトDigiVatLib <URL:http://digi.vatlib.it/> としてリニューアルし、マニュスクリプトのみならず初期の活版印刷本(インキュナブラ)を含めたバチカン図書館が公開している全文献の電子化画像を公開しています。DigiVatLibでは、オープンなメタデータ基準や関連APIを採用することで、インターオペラビリティ(相互運用性)を実現し、特にIIIF(International Image Interoperability Framework)と呼ばれる国際基準に準拠することで、世界中の研究者がデジタル文献に簡単にアクセスできる環境を提供しています。

キヤノン

キヤノンは、バチカン図書館の貴重文献の電子化プロジェクトの主旨に賛同し、本プロジェクトの認知や理解を広めるための活動への貢献として、今回、希少文献の質感複製物200部を作成し、提供します。この質感複製物は、独自の質感画像処理技術とオセ社の隆起印刷技術を用いて印刷し、「色、凹凸、光沢」を再現します。実物は約1600年前に描かれたものであり、誰もが自由に手にとって見ることはできませんが、質感までも再現した印刷物として提供することで、貴重な文化の共有と継承に役立つことができると考えています。

今後について

今後も、バチカン図書館とNTTデータは、引き続き電子化プロジェクトを推進し、2018年3月末までに3,000冊の貴重文献のデジタル画像化を進めていきます。また、バチカン図書館による、本プロジェクトの認知・理解をより一層広めるための活動への貢献も行っていきます。

参考

バチカン図書館について

バチカン図書館は、世界最古の図書館の一つであり、人類遺産ともいうべき歴史的図書の重要なコレクションを収容する図書館です。15世紀半ばにローマ教皇ニコラウス5世により設立されてから今日に至るまでに、寄贈と購入を通じて世界中から貴重な文書を収集し所蔵品としてきました。10万冊を超える古文書、60万冊の印刷本、40万個のコインやメダル、10万点の印刷物、絵画、活字版、15万点の写真など、世界中から収集された数々の貴重文献を擁するバチカン図書館は、現代の人類の歴史と思想の巨大な宝庫といえます。その中には、マニュスクリプト(manuscript)と呼ばれる貴重な1点ものの手書き文献が約82,000点あります。これら手書き文献には、華麗な装飾が施された「装飾写本」と言われる美術的価値の高いものから、当時の歴史、法律、哲学、科学および神学について著された研究的価値の高い貴重な文献までが大切に保管されています。もっとも著名な蔵書としては最古の聖書写本として知られるバチカン写本があります。

Digita Vaticanaについて

Digita Vaticanaは、バチカン図書館のデジタルアーカイブ事業を世界中の人々に広く伝え、関心を集めることを目的として設立された基金団体です。同団体が運営するポータルサイトより、デジタル画像化されたバチカン図書館所蔵の文献が閲覧できます。また、Digita Vaticanaは、バチカン図書館が推進するデジタルアーカイブ事業へ賛同し支援を望む世界中の人々からの寄付を募っており、同ポータルサイト <URL:http://www.digitavaticana.org/> より基金へ寄付をすることが可能です。

  • 「AMLAD」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • 本文内の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。