特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第11期作品として、英国大英博物館所蔵の「津島祭礼図屏風」の高精細複製品を、7月3日に愛知県津島市・愛西市へ寄贈します。
津島祭礼図屏風
江戸時代(17世紀)の作とされる「津島祭礼図屏風」は、八曲一双の大画面を余すことなく使い、全国33件の「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録される尾張津島天王祭の様子を描いた作品です。川岸に立ち並ぶ出店や行商人、歌舞伎や人形浄瑠璃が詳細に描かれ、当時の民衆の様々な娯楽を今に伝えます。尾張津島天王祭を題材にした屏風で現存が確認されているのは8点のみですが、本図は最古の作品の一つとされています。当時朝廷のあった関西圏以外の祭礼の様子を描いた屏風は珍しく、現在に続く祭礼を描いている点で歴史的意義も非常に高く、大英博物館が所蔵する日本美術品の中でも代表的な作品と位置づけられています。「綴プロジェクト」では、今期の作品より、複製品の制作過程で使用するカメラやレンズなどの機材を刷新し、これまで以上に高精細な複製品を実現しています。尾張津島天王祭が伝わる津島市・愛西市に高精細複製品を寄贈することで、日本絵画の名品の“里帰り”が実現します。
本作品は、2018年7月3日の寄贈以降、尾張津島天王祭が開催される7月29日まで、津島市・愛西市内の各施設で順次展示されます(7月30日以降の展示は検討中)。尾張津島天王祭は、津島神社の祭礼として600年近くの歴史があり、日本三大川祭りの一つとして、全国の数ある夏祭りの中でも最も華麗なものと言われています。
また、「綴プロジェクト」第11期「津島祭礼図屏風」の活動に関する記録映像も展示場所およびキヤノンのホームページで8月中旬から公開予定です。
キヤノンは、本プロジェクトを通じて、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国際教育や交流などを行う上での礎となる日本文化への理解を育み、次世代への継承と発展につなげていきます。
「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。
2007年からスタートした本プロジェクトは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、小・中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。本作品を含め、現在までに全37作品を寄贈しました。
入力 |
高精細デジタルデータの取得文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。 |
色合わせ |
高精度なカラーマッチング取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。 |
出力 |
世界最高レベルのプリンティング技術日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。 |
金箔・金泥・雲母 |
古来より伝承される伝統工芸の技により再現日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。 |
表装 |
京で鍛えられた確かな技術作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。 |