ニュースリリース

2018年10月23日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

大英博物館が所蔵する文化財の高精細複製品を文化財活用センターへ寄贈
「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」を制作

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第11期作品として、大英博物館所蔵の「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」の高精細複製品を独立行政法人 国立文化財機構文化財活用センター(以下 文化財活用センター)へ寄贈し、東京国立博物館にて本日より公開します。

平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風

「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」の高精細複製品を制作

「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」は、江戸時代(17世紀)の作品です。平家の滅亡を導いた2つの戦いが両隻に描き分けられており、右隻は、寿永3年(1184年)2月、源義経らの率いる源氏が平家のこもる摂津福原に奇襲をかけた「一の谷合戦」、左隻は、翌年の文治元年(1185年)2月、屋島によった平家が源氏に追われ、志度浦(しどうら)に逃れる「屋島合戦」です。義経のひよどり越えの場面や那須与一の挿話など、「平家物語」によって親しまれてきたいくつもの名場面が両隻に描かれ、確かな画面構成力と緻密な描写力を備えた有力な画人の手によるものと考えられています。
「綴プロジェクト」では、今期の作品より、複製品の制作過程で使用するカメラやレンズなどの機材を刷新し、これまで以上に高精細な複製品(本作品の画像データの総画素数は約54億画素)を実現しています。
作品のオリジナルは現在、大英博物館に所蔵されています。その高精細複製品を文化財活用センターに寄贈することで、日本絵画の名品の“里帰り”が実現します。

  • 第11期作品として、すでに、高精細複製品を奈良県談山神社、愛知県津島市/愛西市へそれぞれ1点ずつ寄贈しています。

寄贈作品は東京国立博物館で公開

作品は、本日より2018年12月2日まで、東京国立博物館で展示されます。
また、「綴プロジェクト」第11期「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」の活動に関する記録映像も展示場所およびキヤノンのホームページ(global.canon/ja/tsuzuri/movie.html)で本日より公開します。

綴プロジェクト記録映像

「綴プロジェクト」は「東京2020公認プログラム」の認証を取得しています

文化オリンピアード

キヤノンは、本プロジェクトを通じて、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国際教育や交流などを行う上での礎となる日本文化への理解を育み、次世代への継承と発展につなげていきます。

【「綴プロジェクト」とは】

「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。
2007年からスタートした本プロジェクトは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、小・中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。本作品を含め、現在までに全38作品を寄贈しました。

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。

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