ニュースリリース

2018年10月29日
国立文化財機構 文化財活用センター
キヤノン株式会社

国立文化財機構文化財活用センターとキヤノン株式会社による
文化財の高精細複製品の制作と活用に関する共同研究プロジェクト発足

国立文化財機構文化財活用センター(以下 文化財活用センター)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)は、日本美術の名品について、キヤノンと特定非営利活動法人京都文化協会(以下 京都文化協会)による「綴プロジェクト」の技術を用いて高精細複製品の制作を行うとともに、新しい活用方法の開発についての共同研究と実証実験を行うことになりました。
日本の文化財は脆弱なものが多く、美術館や博物館の展示においてもさまざまな制限がかけられているのが現状です。そこで、文化財活用センターとキヤノンは、原本とほぼ変わりない鑑賞体験が得られる高精細複製品を制作し、新しい活用方法の開発を行うことによって、より多くの人に文化財に親しむ機会と、より深い文化体験を提供してまいります。

キヤノンは「綴プロジェクト」の活動を通して、これまでも数々の日本美術の名品の高精細複製品を制作し、国立博物館をはじめ、日本全国の多くの博物館や美術館、寺社などに寄贈してまいりました。また、2017年夏には、国立文化財機構に属する東京国立博物館とキヤノンが、「親と子のギャラリー びょうぶとあそぶ」を共同で開催し、複製品と映像を大胆に組み合わせた体験型の展示を行うなど、新しい文化体験の提案をしてまいりました。
本プロジェクトは、2018年7月に、国立文化財機構内に文化財活用センターが開設されたことに伴い、高精細複製品を使ったより先進的な文化財活用の在り方や、運用システムの開発を目指して発足したものです。

「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」(原本:大英博物館蔵)キヤノンから文化財活用センターに寄贈された高精細複製品

「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」(原本:大英博物館蔵)キヤノンから文化財活用センターに寄贈された高精細複製品

本プロジェクトの目的

  • 高精細複製品利用による、文化財に親しむ機会の拡大と文化財についての理解促進
  • 教育プログラムを実施するファシリテーターなど、文化財の活用に係る人材の育成
  • 高精細複製品について、原本の再現性、耐久性、活用に際しての利便性の向上

活動内容

高精細複製品の制作  気軽に活用できる名宝を

キヤノンと京都文化協会による「綴プロジェクト」の技術と経験を活かし、日本美術の名品の複製品を制作します。国立博物館の収蔵品や在外日本美術の名品から、展示や教育普及活動で効果が高く、多くの人に楽しんでいただける作品をセレクトし、2018年度、2019年度と各2点程度制作する予定です。

2018年度制作

「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」 原本:大英博物館蔵
国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」岩佐又兵衛筆 原本:東京国立博物館蔵

  • 「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」はキヤノンが文化財活用センターに寄贈、「洛中洛外図屏風(舟木本)」はキヤノンが文化財活用センターに技術協力します。

2019年度 制作(予定)

国宝「花下遊楽図屏風」狩野長信筆 原本:東京国立博物館蔵

国宝「花下遊楽図屏風」狩野長信筆 原本:東京国立博物館蔵

  • 屏風の一部を拡大した画像

重要文化財「風神雷神図屏風」尾形光琳筆/「夏秋草図屏風」酒井抱一筆 原本:東京国立博物館蔵

高精細複製品の活用  文化財の素晴らしさを、広く深く伝えたい

さまざまな手法で複製品の活用を推進し、原本ではかなわないような鑑賞体験を実現します。

1.東京国立博物館での展示

畳に座ってガラスケースなしで見るという、本来の屏風の鑑賞スタイルを展示室内に再現し、照明の変化によって変わる屏風の表情をお楽しみいただくなど、複製品ならではの企画展示を展開します。 また、2019年1月に予定されている「松林図屏風」の展示では、映像コンテンツの投影と組み合わせ、長谷川等伯の描いた松林図の世界で遊ぶ、体験型の展示も企画しています。

2018年10月23日(火)~12月2日(日) 本館特別4室
「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」 原本:大英博物館蔵

2019年1月2日(水)~2月3日(日) 本館特別4室
国宝「松林図屏風」長谷川等伯筆 原本:東京国立博物館蔵

  • 1月2日(水)~14日(月・祝)本館2室 国宝室での国宝「松林図屏風」(原本)の展示に合わせた企画です。
展示風景イメージ

展示風景イメージ

2.アウトリーチ・プログラムの展開

複製品の貸出と教育プログラムを実施します。屏風の置き方や光による変化を体験するワークショップや対話型鑑賞プログラムを、使用する複製品の特性、利用者のニーズに合わせて実施します。文化財活用センターおよび東京国立博物館の研究員・専門職員を派遣して実施する場合と、実施会場のスタッフに実施していただく場合を想定しています。

東京国立博物館でのワークショップ「屏風体験!」実施風景

東京国立博物館でのワークショップ「屏風体験!」実施風景

【想定される会場】
博物館、美術館、学校、ホールなど
【貸与品】
複製品、展示台・展示具・照明機器、ワークショップで使用するツールなど一式
【申込】
2019年2月受付開始(2019年4月実施開始)
【料金】
原則として無料

3.高精細複製品の貸出

複製品の公共施設などへの貸出を行います。
上記、「松林図屏風」の体験型展示で使用する映像コンテンツを含めた貸し出しも行います。

【想定される貸出先】
  • 美術館・博物館
  • 公共空間(空港、港、客船、ホテルなど)
  • 賓客応接、会議などにおける調度利用
  • 商業空間(ウインドウディスプレイなど)
  • 結婚式、各種パーティーなどでの調度利用
  • CM、テレビ番組などの撮影
  • 展示環境の制限や運用方法など、貸出の詳細条件は別途定めます。

【申込】
2018年12月受付開始
【料金】
原則として有料。
ただし、公共性が高い場合、また、文化振興、教育普及の意義が高いと認められる場合は無料。

サミット会場での複製品展示風景<br>(G7伊勢志摩サミット公式ホームページより)

サミット会場での複製品展示風景
(G7伊勢志摩サミット公式ホームページより)

ホテルロビーでの複製品の展示風景

ホテルロビーでの複製品の展示風景

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