キヤノンサイエンスラボ

CDとDVD

デジタル記録メディアには、USBメモリーやメモリーカードなどのほかに、CD(コンパクトディスク)やDVD(デジタル多用途ディスク)、ブルーレイディスクなど、光ディスクと呼ばれるものがあり、その名の通り、読み書きに光の技術が利用されています。
もともとデジタルオーディオの記録媒体として登場したCDですが、デジタルデータを記録するメディア「CD-R」としても使われています。CDのディスク内面には、ピット(pit)やスポットと呼ばれる数マイクロメートルの小さなくぼみが並び、ここにレーザー光を当て、反射光によってデータを読み取るしくみになっています。DVDも基本的原理はCDと同じです。

ディスク内面の凹凸でデータを記録

CDのディスクは3つの層からできています。約1.2ミリの透明なプラスチック板の上にアルミニウム薄膜の反射層があり、上部は表面の保護層となっています。CDのデータが記録されるのは反射層側の透明なプラスチック板の表面です。そこには幅約0.5マイクロメートル、長さ数マイクロメートルの凹凸があります。これがピットです。CDのデータを読み込む際は、プラスチック板の側からレーザー光をあて、反射のする光の強度の違いでピットの有無を判断してデータを読み取ります。

レンズでレーザー光を集光するピックアップ

CDのデータを読み取る装置を光学ピックアップといいます。「レーザーダイオード」から出たレーザー光は、「コリメーションレンズ」で平行光線にそろえられ、さらに「対物レンズ」で小さなスポットに集光されてディスクの反射層にあてられます。ディスクから反射して戻ってきた光はプリズムによって分離され、かまぼこ型の「シリンドリカルレンズ」を通って取り出されます。この反射光がデータとして読まれるのです。

色素変化で記録するCD-R

データの書き込みができる「CD-R」(Compact Disc Recordable)には、ピットの凹凸はありません。CD-Rは青緑色の有機色素層と例えば金の反射層があります。この色素層に強いレーザー光を照射すると色素が光を吸収し、反射層を局部的に熱して変形させます。よく「CD-Rに焼く」といいますが、まさに熱で色素と反射層を焼いているわけです。これによってピットの凹凸と同様な反射率の違いが生じ、CD-Rにデータを書き込むことができるのです。

相変化材料で記録するCD-RW

何度でもデータを読み書きできる「CD-RW」(Compact Disc ReWritable)。このCD-RWの反射層に使われているのは「相変化」の性質をもつ特殊な合金です。合金のなかには、熱したあと急冷すると液体状態の配列が残る「アモルファス」という性質になるものがあります。こういった特殊な合金にレーザーを照射すると、結晶状態から非結晶状態への転移が起こります。レーザーの照射によって結晶相(消去状態)とアモルファス(相記録状態)を作り出し、両者の反射率の違いを利用してデータを読み取るのがCD-RWです。

弱くレーザーを照射してゆっくり冷却すると記録層の結晶が再構成され、レーザーを強く照射して急速冷却すると記録層の結晶が解けたアモルファス状態となり、記録されます。結晶相とアモルファスが可逆的な相変化材料を使うことで、1000回以上のデータの書き換えが可能になっています。

青色レーザーで記録密度が倍増

このようにCDのデータは、ピットやスポットという小さな点を利用してディスク上に記録されています。ということは、スポット径、つまり点の大きさが小さければ小さいほど、同じ面積のディスク上に多くのデータを記録できることになります。それでクローズアップされているのが「青色レーザー」です。これまでは「赤色レーザー」が使われていたため、スポット径はほぼ1マイクロメートル(1000ナノメートル)でした。青色の波長は赤色のほぼ半分で、スポット径を500ナノメートル程度に小さくすることができます。青色レーザーを使うと、単純計算で同じディスクに4倍のデータを詰め込むことができます。
このしくみを利用して大量のデータを保存できるようにした光ディスクがブルーレイディスクで、映像コンテンツなどの保存で多く使われています。