開く

知的財産マネジメント

知的財産についての考え方

キヤノンは、創業当時から積極的な研究開発活動を続け、独自技術を搭載した製品によって新市場や新規顧客を開拓する研究開発型企業として発展してきました。

こうした背景から、キヤノンには「研究開発活動の成果は製品と知的財産である」という考えが根付いています。知的財産部門では、知的財産活動の目的を事業展開の支援と明確に位置づけ、10年後、20年後の姿を描き、知的財産戦略を策定・実行しています。

知的財産活動の基本方針

  • 知的財産活動は事業展開を支援する重要な活動である
  • 研究開発活動の成果は製品と知的財産である
  • 他社の知的財産権を尊重し、適切に対応する

事業展開を支援する知的財産活動

キヤノンでは、知的財産部門が研究開発部門だけではなく、生産部門、販売部門とも密に連携を取り、一丸となって発明の創出や深掘りをすることで、強い特許の取得を行っています。また、他者が到達するまでに時間がかかる技術については、特許の出願をせず、社内で営業秘密として管理しています。

経験豊富な人材の知識と技術力を有効活用した知的財産活動を通じて、現在と将来の事業の競争優位性を確保しています。

知的財産権の尊重

キヤノンは、製品の模倣や知的財産権の侵害に対して、厳格な対応を徹底しています。同時に、他社の知的財産権を尊重し、キヤノン製品が第三者の知的財産権を侵害することのないよう、明確なルールを定めています。

具体的には、第三者の特許を不用意に使用してしまうことを防ぐため、第三者の特許を徹底的に調査しています。この調査は、研究開発の開始時をはじめ、さまざまな段階において、その技術に関わる研究開発部門と知的財産担当部門の協力のもとで行われています。

また、このルールの徹底はクロスライセンスや共同研究など、他社や外部研究機関との適切でスムーズな提携を実現し、自社開発の技術や自社保有の特許だけでは成し得ない大きな成果を創出することにもつながっています。

新しい価値の提供のための特許ポートフォリオ

自社のコアコンピタンス技術を守り、競争優位性を維持するため、また、将来の事業の発展や新しい事業分野へのスムーズな参入のためにも、強い特許を多数保有することは非常に重要です。将来の事業と技術の進展を見据えて出願・権利化を行うとともに、常に特許の価値を評価し、保有する権利の入れ替えを行うことで、強い特許ポートフォリオを維持しています。

権利の取得

キヤノンは、グローバル規模での特許出願を重視し、特許・実用新案の保有件数は、全世界で約8万6,000件となっています(2021年1月現在)。

海外出願に際しては、地域ごとに事業戦略や技術・製品動向を踏まえて出願戦略を綿密に立て、必要な国や地域を見極めた上で出願しています。中でも、ハイテク企業が多く、市場規模も大きい米国での出願に注力し、米国の特許登録件数ランキングは35年連続で5位以内を保持しています。2020年は、同ランキング3位に位置し、日本企業においては、16年連続でトップの地位となっています。

2020年米国特許登録件数上位5社

順位 権利者 件数
1 IBM 9,130
2 サムスン電子 6,415
3 キヤノン 3,225
4 マイクロソフト 2,905
5 インテル 2,867
  • 米国の特許専門調査会社IFI CLAIMS Patent Servicesの2021年1月14日の発表に基づく

新しい価値の提供に向けて、消費者ニーズのモノからコトへの転換によるCX(顧客体験)の重要性の高まりやDXの加速などを踏まえ、次世代に必要な基幹技術に関する基本特許に加え、AI 、FinTech、セキュリティ、ヘルスケア、環境保全などの社会的ニーズを捉えた技術に関連する特許など、さまざまな研究開発成果を知的財産権として権利化しています。

また、さまざまなモノがつながる時代において、つながる条件を規定する標準化技術の重要性は増大し、キヤノンのさまざまなビジネスにも直結しています。キヤノンは、映像ストリーミング、動画符号化、無線通信、無線給電技術などについて、海外研究開発拠点と連携して国際標準化に参画し、規格策定に貢献するほか、標準必須特許の獲得を積極的に行っています。

標準必須特許は、現行事業による将来の製品開発の自由度を高めたり、次世代事業が新たな市場へ参入する際の持ち札として活用することが可能です。標準の規格策定は長期にわたるため、事業戦略、知的財産戦略を意識して、標準化活動を推進し、将来事業を支えます。

ライセンス活動との関係

キヤノンは、新たなビジネス創出のために、将来の外部環境を予測し、知的財産ライセンス契約において常に先手を打っています。例えば、これからのさまざまなモノがつながる時代には、異業種との連携も必要であり、異業種とのライセンス交渉も発生します。キヤノンは、つながる時代ならびにAI 、IoT技術の進展を見据え、異業種とのライセンス交渉に取り組んできました。優れた技術をもつさまざまな異業種企業とクロスライセンスを結ぶにあたって、標準必須特許やその他汎用技術特許などをライセンスする代わりに、他社の技術を使えるようにして事業の自由度を確保する一方で、キヤノンのコアコンピタンス技術はライセンスしないようにして競争力の源泉を守る、というオープン・クローズ戦略を取ることで、将来事業における自由度と競争力を確保しています。これを可能としているのが、まさに強い特許ポートフォリオです。

今後も、強い特許ポートフォリオを活用し、優れた技術をもつ企業と早い段階でクロスライセンスを結ぶことにより、キヤノンの技術と他者の技術を融合し、付加価値の高い製品・サービスを提供していきます。

キヤノングループの知的財産連携と人材育成

キヤノングループの特許の有効活用および特許ポートフォリオの全体最適化の観点から、キヤノン(株)の知的財産法務本部を中心とした知的財産管理体制を構築し、グループ全体の知的財産権を管理しています。

また、キヤノン(株)の知的財産法務本部は、国内外のグループ会社の知的財産部門と連携して、各国・地域における知的財産制度に関する最新情報や市場が拡大する新興国・地域の事業情報を入手し、市場や技術の流れに沿った知的財産活動を実施しています。

さらに、世界中のグループ会社にキヤノン(株)から、また、グループ会社からキヤノン(株)へ知的財産部員が相互に出向し、知識の共有や文化の融合を行うことにより、キヤノングループ全体の知的財産活動の強化と知的財産部員の育成を行っています。

オピニオンリーダーとしての活動

キヤノンは、知的財産の業界をリードする活動を積極的に行っています。2014年には、パテント・トロール訴訟の脅威を抑制するため、Googleなど5社と連携し、LOTネットワーク(License on Transfer Network)を設立しました。会員企業数は年々増加し、2020年12月現在で1,000社を突破しています。また、2019年より、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する、環境保全技術の移転の国際的枠組みである「WIPO GREEN」にパートナーとして参画しています。キヤノンが保有する環境保全技術を広く知ってもらい、また活用してもらうために、バイオプラスチックに関する技術に加え、2020年は新たに燃料電池に関する技術を登録しました。2020年には、各社に働きかけを行い、「COVID-19と戦う知財宣言」に発起人として参画することで、感染症の早期収束を支援しています。

キヤノン(株)の知的財産法務本部長は、産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の委員を務め、知的財産を活用してグローバルに事業展開する企業の立場からさまざまな提言を行い、知的財産行政の発展に貢献しています。また、日本知的財産協会の副会長、日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会長などを務め、知的財産制度の運用向上に貢献しています。

日本知財学会「産業功労賞を受賞」

キヤノンは、知的財産を重視した経営とその成果、日本の産業界の発展に向けた尽力が評価され、2020年に一般社団法人日本知財学会の第17回「産業功労賞」を受賞しました。今後も産業界の発展に尽力していきます。