従業員が高いモチベーションをもって働くことができる魅力的な職場環境づくりに努めています
キヤノンは、「真のグローバルエクセレントカンパニー」となるために、従業員一人ひとりが「エクセレントパーソン」であることが必須と考えています。
この認識のもと、向上心・責任感・使命感を尊重する「人間尊重」の精神や、「実力主義」に基づく公平・公正な配置・評価・処遇を徹底しています。また、こうした人事施策と相まって、「進取の気性」が発揮される企業風土の醸成を図るとともに、次代を担う人材育成に注力しています。
キヤノンの「行動指針」は、創業期から掲げる「三自の精神」を原点としています。三自とは、「自発」「自治」「自覚」を指し、何事も自ら進んで積極的に行い(自発)、自分自身を管理し(自治)、自分が置かれている立場・役割・状況をよく認識する(自覚)姿勢を意味します。
キヤノンは、この「三自の精神」をもって、前向きに仕事に取り組むことを全従業員に求め、全世界のグループ会社で浸透を図っています。
行動指針 | |
---|---|
三自の精神 | 自発・自治・自覚の精神をもって進む |
実力主義 | 常に、行動力(V:バイタリティ)・専門性(S:スペシャリティ)・創造力(O:オリジナリティ)・個性(P:パーソナリティ)を追求する |
国際人主義 | 異文化を理解し、誠実かつ行動的な国際人を目指す |
新家族主義 | 互いに信頼と理解を深め、和の精神をつらぬく |
健康第一主義 | 健康と明朗をモットーとし、人格の涵養(かんよう)につとめる |
キヤノンは、持続的な成長のために、ビジネスのグローバリゼーションとイノベーションを推し進める優秀な人材の獲得と定着を図っています。そのため、採用・配属・育成の施策を一貫した方針のもとで連携させています。
人材の獲得において、2021年はキヤノン(株)および国内グループ会社で約1,350人と積極的な採用を行いました。また、従業員一人ひとりが長期にわたって高いモチベーションを維持し、能力を発揮していけるように、キャリアマッチング制度(社内公募制度)のほか、育児や介護と仕事との両立を図る支援制度など従業員の就業継続をサポートする各種制度の充実を図っています。また、従業員意識調査を原則2年に一度実施し、結果は経営層を含め各部門へフィードバックして部内方針の策定に生かすなど、従業員エンゲージメントの向上にも努めています。これらの取り組みの効果もあり、キヤノン(株)の定着率は国内における業界の中で高い水準を維持しています。国内グループ会社、キヤノンUSA、キヤノンヨーロッパ、アジアのグループ販売会社においても定期的に従業員意識調査を実施し、従業員のエンゲージメント向上につなげています。
キヤノンは、経営幹部のグローバル化を進め、各国・地域のグループ会社の社長や役員、幹部社員に国籍を問わず適任者を登用し、地域に根ざした経営を推進しています。
例えば、キヤノン中国での地域責任者の現地社員率は、2013年の38%から2021年には75%に上昇しました。
キヤノンは、生産拠点の新設や拡張にあたって、雇用創出を通して地域の社会・経済の活性化に貢献すべく、現地で人材雇用を行っています。
例えば、キヤノンプラチンブリタイランドでは約6,800人を、キヤノンビジネスマシンズフィリピンでは約5,900人を現地で雇用しています(2021年末現在)。
またアジア地区の生産拠点全体では、2007年以来継続して6万人以上の現地の人材を雇用しています。
なお、雇用にあたっては、各地域の最低賃金を大きく上回る給与を保証しています。
キヤノン(株)は、年齢や性別にとらわれない公平・公正な人事・処遇を実現するため、仕事の役割と成果に応じて報酬を決定する「役割給制度」を導入しています。
役割給制度とは、仕事の難易度などに基づく役割等級によって基本給を定め、1年間の業績・プロセス・行動を評価して年収を決定する制度です。また、賞与には個人の業績だけでなく、会社業績も反映されます。
役割給制度は国内外のグループ全体にも展開し、すでに国内の大部分のグループ会社とアジアの生産会社に導入済みです。また、キヤノンUSA、キヤノンヨーロッパなど欧米のグループ会社やアジアの販売グループ会社においては、従来、仕事の役割と成果に基づく賃金制度を導入しています。
給与の昇給額・昇給率、賞与の原資・支給額などについては、キヤノン労働組合と年3、4回開催する賃金委員会において、労使で定めたルールに則って支給されていることを確認し、その議事録をすべての社員に公開しています。また、賃金制度の運用や改善についても同委員会において労使双方で議論しています。
キヤノンでは、入社から退職後に至るすべてのライフステージにおいて、従業員が安心して生活を営めるよう、各種の福利厚生制度を整備しています。
例えば、食堂・体育館などの設備、職場コミュニケーションの活性化を目的とした補助金制度や共通の趣味をもつ仲間が集うクラブ活動、各地域の文化や風習を生かしたイベントや社員の家族も参加できる催しの開催など、従業員のニーズにあわせた福利厚生制度の充実を進めています。
また、キヤノン(株)および国内グループ会社では、国の社会保障制度に加えて、社員を対象とした企業年金や共済会、健康保険組合による付加給付などの制度、さらには個人の意思で加入する社員持株会や財形貯蓄、グループ生命保険などを用意しています。
キヤノン(株)では、公的年金を補完し、より豊かな老後の生活に寄与することを目的に、役割等級に応じて付与される退職金ポイント制による確定給付型の企業年金制度「キヤノン企業年金」を運用しています。制度運用は会社による基金積立金によって賄われ、社員による拠出金の負担はありません。また、あわせてマッチング拠出にも対応した確定拠出年金制度も運用するなど、充実した保障を実現しています。
なお、国内グループ会社においてもそれぞれ独自の企業年金制度を運用しています。
キヤノンは、各国や地域の法律に基づき適正な労働時間の管理と削減に取り組んでいます。
例えばキヤノン(株)では、原則として時間外労働を禁止し、働き方の見直しを推進しています。また、5日連続で有給休暇を取得できるフリーバカンス制度に加え、2019年からは上司、部下間での期初面接時に年5日以上の休暇取得計画を立てるなど、さまざまな有給休暇の取得促進を行い、2021年の年間の平均有給休暇取得日数は16.4日となりました。2021年の一人当たりの総実労働時間は1,745時間となり、総実労働時間削減に向けた活動を開始した2010年(1,799時間)と比べて54時間減少しています。
キヤノンでは各国・地域の労働慣行を考慮した柔軟な働き方を促進しています。
例えばキヤノン(株)では、2005年より厚生労働省の指針に則りアクションプラン(行動計画)を策定して柔軟な働き方を推進し、仕事と家庭の両立支援や次世代育成支援に取り組んでいます。
キヤノン(株)では、社員がそれぞれの事情に応じて柔軟に休暇の取得が行えるようにしています。育児や介護、傷病などの理由で取得できる30分単位の時間単位休暇や、勤続年数に応じて心身のリフレッシュを目的としたリフレッシュ休暇など、各種の休暇制度を整備しています。また、2020年は生産性向上を目的としたテレワーク制度を導入し、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を推進しています。2021年4月からは、2024年3月までの3年間にわたる第七期行動計画を進めています。
このほか、キヤノン(株)では柔軟な働き方についての従業員調査を実施し、従業員の実情やニーズを把握し、働きやすい環境の構築をめざしています。
行動計画 | 対策 | 2021年末現在での実績 |
---|---|---|
(1)両立支援制度の利用率向上をめざし、制度の利用を推進する |
|
|
(2)多様な働き方を推進するとともに、時間外労働を前提としない働き方の促進および有給休暇取得促進の取り組みを継続し、総実労働時間を適正レベルに保つ |
|
|
(3)第六期に引き続き、社会貢献活動を通じて、次世代を担う子どもが参加できる地域貢献活動を実施する |
|
|
キヤノン(株)では、ボランティア活動に関心のある社員を対象とした「ボランティア活動休職制度」を設けています。この制度は、会社の認定を受けてボランティア活動に従事する場合、1年(青年海外協力隊の場合は2年4カ月)を上限にボランティア休職を取得することができます。
キヤノン(株)および国内グループ会社は、話し合いで解決を導く「事前協議の精神」を労使関係の基礎としています。賃金、労働時間、安全衛生、福利厚生などに関する諸施策を実行する際は、労働組合と真摯かつ十分な議論を尽くすよう努めています。
キヤノン(株)は、キヤノン労働組合※1との間で、「中央労使協議会」を開催しています。代表取締役会長兼社長をはじめとする経営幹部が出席し、さまざまなテーマについて意見や情報を交換しています。
このほか、賃金、労働時間、安全衛生、福利厚生などに関する各種委員会も設け、労使協議のもとで制度の新設や施策の運営に取り組んでいます。2021年末時点で、キヤノン労働組合の組合員数は2万5,447人、キヤノン(株)の社員に占める労働組合員比率は79%となっています。
また、キヤノン(株)および国内グループ会社の労使協議会として年に一回「キヤノングループ労使協議会」を開催しています。これは、国内グループ会社23社の幹部とグループ会社の19の単位組合が出席するもので、2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期しましたが、2022年は感染状況に配慮しながら開催する予定です。同協議会に加盟する労働組合の組合員数は、2021年末時点で5万3,150人、国内グループ会社23社の社員に占める労働組合員比率は82%です。
海外グループ会社においては、各国・地域の労働法制に従い、十分な労使協議による適切な労使関係を継続しています。グループ全体の社員に占める労働組合員比率※2は83%です。
キヤノン(株)では、人事異動などに際して従業員の生活にマイナスの影響を及ぼすことがないよう、労使協定において最低通知期間を定めています。
出向については発令日の2週間前、その他の異動については発令日の1週間前までに、対象者に対して内示を行っています。また、転居を伴う異動対象者に対しては、発令日を基準として4週間前までに異動の確認を行っています。
なお、国内外のグループ会社においても、各国・地域の法令に従って最低通知期間を定めています。