従業員一人ひとりがキャリアを築き、活躍できる機会を提供しています。
キヤノンは、中長期経営計画「グローバル優良企業グループ構想フェーズⅤ」の主要戦略の一つに、「地球儀を俯瞰して職務を遂行するグローバル人材の育成」を掲げています。この戦略に基づき、経営、技術開発、ものづくりなどのさまざまな分野で、グローバルに活躍できる人材を育成していきます。
グローバル化を進めるキヤノンの事業は、世界のさまざまな国・地域に広がり、2019年末時点で370の事業拠点※があります。こうした中、国際舞台でリーダーシップを発揮できる人材の育成を強化しています。
キヤノンは海外グループ会社の経営層を対象に、キヤノン式の経営哲学の共有とグローバルな環境でイノベーションを生み出す経営幹部の養成を目的とした「グローバル経営幹部研修」を実施しています。
キヤノンでは、グローバルな協業やグローバル規模で活躍できる人材の育成を促進する目的で、日本から海外だけではなく、海外から日本、さらには欧州から米国など、国際間の双方向での人材交流を活性化するため、世界中のグループ会社を対象とした国際出向制度「Canon Global Assignment Policy(CGAP)」を設けています。
CGAPはグループ共通の国際出向の指針であり、これに基づき、各地域で出向規程を設けています。これらを組み合わせて運用することで、人材交流がさらに活性化するとともに、基本的な理念や仕組みを共有しつつも、法律や文化など地域ごとの特性にも柔軟に対応しています。
例えば欧米では、入社3年以上の社員のための1年間の人材交流プログラム「US/Europe Exchange Program」、アジアでは幹部候補育成を目的とした欧米での1年間の研修プログラム「ASIA CGAP」などを実施しています。
これらの制度を利用して、2019年末現在で合計1,031人が国際出向中です。
キヤノン(株)では、社員が語学力や国際的なビジネススキルを身につけるために、早くから海外勤務を経験するさまざまな制度を設けています。
例えば「アジアトレーニー制度」は、30歳以下の社員を対象とした、アジア現地法人での実務研修制度で、1995年にスタートし、2019年までに累計118人をアジア各地の現地法人に派遣しています。業務上、英語以外の言語の使用頻度が高い国・地域では、現地の大学で約6カ月間の語学研修を受けた後、トレーニーとして約1年間現地法人で実務を経験します。また、欧米に若手人材を派遣する「欧米トレーニー制度」は、2012年にスタートし、2019年までに累計68人を派遣しています。特に英語圏以外への派遣者に対しては、アジアトレーニー制度と同様の語学研修や実務研修を実施しています。
さらに、国際社会で通用する技術者の育成や、将来キヤノンの基幹となり得る技術の獲得を目的に、技術系社員を対象とした「技術者海外留学制度」を設けています。1984年にスタートし、2019年までに累計127人が海外の大学に留学しています。欧米での研究開発体制を強化していくことも踏まえ、今後も毎年数名程度の留学生を選出していきます。
キヤノンは、メーカーとしてイノベーションを創出し続けるための技術人材の確保・育成を推進しています。
例えばキヤノン(株)では、機械、電気、光学、材料、ソフトウエアなど専門分野ごとの教育体系を整備し、長期的な視野に立って次世代を担う技術人材を育成しています。中でも前記5つの主要分野では、分野ごとに「技術人材育成委員会」を設置し、新入社員から若手、技術リーダーに至るまで、階層に応じた育成体系を構築し、研修や施策を実行しています。また、解析技術など分野横断型の研修も実施しています。2019年は各分野あわせて197講座の研修を開催し、国内グループ会社含めてのべ6,266人の技術者が受講しました。
またキヤノン(株)は、2018年にソフトウエア技術者を育成する「Canon Institute of Software Technology(CIST)」を設立しました。これにより、製品のソフトウエア開発を担当する技術者のスキルアップから、新入社員や職種転換をめざす社員の基礎教育まで、体系的かつ継続的な人材育成に取り組んでいます。このほか、ソフト系の技術人材育成として、国立情報学研究所が主催しているスーパーアーキテクトを育成するトップエスイーコースに受講生を8人派遣しています。
ソフトウエア技術者を育成するCIST(東京・下丸子)
キヤノンでは、キヤノン(株)の「ものづくり推進センター」が中心となって、生産活動を支える人材の育成に注力しています。
2019年は同センター主催による研修を海外の生産拠点11拠点で計72回開催し、合計576人が受講しました。
また、海外拠点で独自の教育を推進するために、管理監督者や工場技能者などを対象に、技術・技能研修や職場管理研修の講師を育成する「トレーナー養成研修」にも力を入れています。2019年は、トレーナー養成研修を15回開催し、計64人が受講しました。
さらに、国内と同一水準の「技能検定制度」を海外拠点にも導入・運用し、2019年はタイ、ベトナム、中国、マレーシアの計8拠点において、成形、実装、プレスなどの7職種で検定を実施、442人が受検しました。
キヤノン(株)では、従業員のモチベーションや専門性の向上を支援していくために、「階層別研修」「選択研修」「自己啓発」で構成される教育体系を整備しています。
階層別研修では、役割等級別に必要な意識および知識やスキルの修得に加え、行動指針を中心に求められる行動意識の醸成を図っています。階層別研修に連動する形で、eラーニングを含む選択研修と自己啓発支援を行っています。また、これらの研修では、ハラスメントの防止やコンプライアンスの徹底などのプログラムも取り入れています。
経営人材の育成については、「経営塾」「Canon Leadership Development Program(LEAD Program)」を実施しています。経営塾は、一流の経営リーダーたる人材の育成を図るものです。代表取締役会長が塾長を務め、各界(政治・外交・経済・科学技術など)のエキスパートを講師に迎えて、事業部長や所長等の上級管理職を対象に実施し、これまでに多くの役員を輩出しています。またLEAD Programは、リーダー候補者の意識を経営視点へ切り替えた上で、リーダーシップの醸成や戦略立案力・実践力の強化を図るプログラムで、管理職各階層の登用前後の研修および登用前のアセスメントを実施しています。今後は経営人材に加え、グローバル人材、技術人材、ものづくり人材など、次代を担う人材を計画的に育成する取り組みを一層強化する方針です。
なお、キヤノン(株)における2019年の社員一人当たりの平均研修時間は約20時間で、平均研修費は約18万1,000円でした。また、国内グループ会社および海外販売会社での社員一人当たりの平均研修費は約9万8,000円でした。
役割給制度のもと、社員一人ひとりの「役割達成度」と「行動」を評価するために、期初・中間・期末の年3回、上司と部下の面接を行っています。面接では、役割、目標、達成状況、今後のキャリアについて確認しています。
評価結果の通知では、より高い成果の達成と行動の改善に向けた助言と指導をあわせて行います。部下は自分の強みや弱みを具体的・客観的に受け止め、さらなる成長へとつなげるとともに、上司は今後の育成計画に生かしています。
社員の主体的なキャリア形成をサポートする仕組みとして「キャリアマッチング制度」(社内公募制度)を設けて、適材適所の人材配置や人材の流動化・活性化を図っています。2019年は同制度を利用して163人が異動しました。
また、未経験の領域の仕事にチャレンジする意欲のある社員に対して、あらかじめ研修を実施し、そのレベルに応じた業務に配置する、研修と社内公募を合体させた「研修型キャリアマッチング制度」も実施しています。
自己啓発意欲の高い従業員のキャリア形成を支援するために、週末や「ワーク・ライフ・バランス推進期間※」の終業後に受講できる研修・イベントのほか、モバイル受講が可能なeラーニングなど、学ぶ機会の多様化を進めています。2019年はのべ5,000人を超える従業員が受講しました。
社員が定年退職後の人生をより豊かなものにできるよう、50歳、54歳時に「クリエイティブライフセミナー」を実施しています。ライフプランやキャリアプランについて考える機会を早い段階で設けることにより、60歳以降の準備を自立的かつ計画的に進められるようにしています。
キヤノンでは、「人と組織の成長」と「業務成果の達成」の同時実現をめざし、組織開発の専門部門を設け、多様化する組織課題に応じたコンサルティングとその後のサポート、階層別トレーニングなどの組織活性化支援を行っています。2019年までに国内外のグループ会社を含む、のべ457部門、1万6,000人の支援を行っています。
キヤノンは、多様な認定・表彰制度を設けて、グループ社員の功績を評価しています。
例えば、「Canon Summit Awards」では、キヤノングループの活動および製品分野において、社業の発展に多大な貢献をしたグループ内の企業、部門、チームおよび個人を表彰しています。このほか、発明および知的財産活動に貢献した社員に対する「発明表彰」や、「品質表彰」「生産革新賞」など優れた活動に対する賞、幅広い技能でものづくりに貢献した個人に対する「マイスター認定・表彰」、卓越した技能をたたえ、キヤノンに必要な技能の伝承を図るための「キヤノンの名匠認定」、優れた環境活動を表彰する「環境表彰」、調達機能の強化に大きく貢献した活動を表彰する「調達革新表彰」などを実施しています。