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人権の尊重

キヤノンは、従業員や取引先をはじめとする事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重しています

基本的な考え方

キヤノンは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」にもとづき、従業員や取引先をはじめとする事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重しています。キヤノンは、1937年の創業時より、全従業員を身分、性別、年齢、職種で区別することなく、皆一律に社員と呼んで公平公正に接し、人間尊重主義を貫いてきました。創立51年目にあたる1988年には、「共生」を新しい企業理念として掲げ、創業以来の人間尊重主義をグローバルに昇華させて、世界中のステークホルダーのみなさまとともに歩んでいく姿勢を明確にしました。そして、昨今、国際規範に基づく人権対応が社会的な要請であることから、2021年、代表取締役会長兼社長CEO名で「キヤノングループ人権方針」を定めました。キヤノンは、今後も人権尊重の取り組みを推進していきます。

方針

「キヤノングループ人権方針」は、企業理念「共生」のもと、人権尊重や人権保護への取り組みに対するキヤノンの姿勢を表明するものであり、その内容はキヤノンの各種方針や手続きに反映されます。

この方針において、キヤノンは、児童労働の防止、強制労働・不合理な移動制限の防止、過重労働の防止、結社の自由と団体交渉権の尊重など国際的に認められた人権の尊重に加え、人権デュー・デリジェンス(DD)の実施、救済メカニズムの整備・運用、啓発活動やステークホルダーとの対話を行う旨を明らかにしています。人権方針は、日本語と英語で公開され、各国・地域のステークホルダーにWebサイトで周知しています。

キヤノングループ人権方針

キヤノンは、1937年の創業時より、全従業員を、身分、性別、年齢、職種で区別することなく、皆一律に社員と呼んで公平公正に接し、人間尊重主義を貫きました。

その後、創立51年目にあたる1988年には、一企業や一国の利益を超えて、全人類の幸福と繁栄を目標とする「共生」を新しい企業理念として掲げました。「共生」とは、文化、習慣、言語、民族などの違いを問わず、すべての人類が末永く共に生き、共に働き、幸せに暮らしていける社会をめざすものです。キヤノンは、この「共生」の理念により、創業以来の人間尊重主義をグローバルに昇華させて、世界中のステークホルダーの皆さまとともに歩んでいく姿勢を明確にしました。

本方針は、上記の企業理念の下、人権尊重や人権保護への取り組みに対するキヤノングループの姿勢を表明するものであり、その内容は、キヤノンの各種方針や手続きに反映されます。

  1. 人権の尊重
    キヤノンは、その事業活動において、「世界人権宣言」、「労働における基本的原則および権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」、「国連 ビジネスと人権に関する指導原則」、および「経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業行動指針」にて表明されている国際的に認められた人権を尊重します。具体的には、基本的人権の尊重と人種・国籍・性別・宗教・信条等による差別・ハラスメント・暴力の禁止、ダイバーシティ(多様性)の推進、児童労働の禁止、強制労働(人身取引を含む)の禁止、不合理な移動制限の禁止、各地の法令に則した結社の自由と団体交渉権の尊重、従業員に対する法定賃金以上の賃金の支払い、過重労働の防止と適切な休日の付与、労働安全衛生の確保、労働災害の未然防止、プライバシーの保護、および責任ある鉱物調達に取り組みます。
  2. 人権デュー・デリジェンス
    キヤノンは、「国連 ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、自社の事業活動に伴う人権への負の影響を特定し、負の影響が認められる場合にはそれを防止・軽減する人権デュー・デリジェンスの取り組みを行います。また、人権デュー・デリジェンスの結果を踏まえて、本方針を必要に応じて見直します。
  3. 救済メカニズム
    キヤノンの事業活動に伴う人権への負の影響を把握するために、社内外からの実効的な通報システムを整備し、運用します。また、キヤノンが人権への負の影響を引き起こしまたはこれを助長したことが判明した場合には、適切な手続きを通じてその是正に取り組みます。
  4. 啓発活動
    キヤノンは、キヤノンの役員・従業員が、人権に関する国際規範や本方針に対する理解を深め、人権に関する諸問題に適切に対応できるよう、人権に関する啓発活動を継続的に行います。
  5. ステークホルダーとの対話
    キヤノンは、本方針に定める人権に対する取り組みについて当社ウェブサイト等を通じてステークホルダーにお伝えします。また、本方針の一連の取り組みにおいて、外部専門家からの人権に関する専門知識を活用するとともに、キヤノンの事業活動により人権に関する影響を現に受けまたは受ける可能性がある従業員、サプライヤー等のステークホルダーとの対話を行います。

キヤノンのステークホルダーの皆さまにおかれましても、人権に関する国際的な状況をよくご理解いただき、キヤノンが実施する調査や監査、発見されたリスクへの対応にご協力いただくなど、キヤノンとともに人権に関する課題に取り組むことをお願い致します。

キヤノン株式会社
代表取締役会長兼社長 CEO
御手洗 冨士夫

Fujio Mitarai

制定年月日 2021年10月15日

推進体制

キヤノンでは、人権の担当役員である代表取締役CFOを責任者として、キヤノン(株)サステナビリティ、法務、人事部門が推進事務局となり、調達部門とも連携しながら人権対応を推進しています。推進事務局では、人権対応の全体計画の立案、救済メカニズムの整備・運用、ステークホルダーエンゲージメントの実施等を行い、重要案件については、担当役員に報告します。また、2022年からは、取締役会決議により設置されるリスクマネジメント委員会において、人権侵害リスクが重大なリスクとして特定され、キヤノン(株)各部門および各グループ会社において人権リスクを防止・低減するための取り組みを実施しています。取り組みの結果はリスクマネジメント委員会において毎年評価し、CEOおよび取締役会に報告される体制となっています。

人権の取り組み

キヤノンは人権の取り組みとして、①人権方針の策定・見直し ②人権DD ③救済メカニズムの整備・運用 ④人権啓発活動 ⑤サプライチェーンにおける人権リスクの対応 ⑥ステークホルダーエンゲージメントなどを行っています。これらの活動については外部専門家のアドバイスも参考にしています。

人権デュー・デリジェンスの実施

キヤノンでは、人権DDをリスクマネジメント委員会下の活動として位置づけ、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」や「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」にもとづき、グループ全体で実施しています。キヤノン(株)各部門および各グループ会社は、サプライチェーンを含むそれぞれの事業活動における人権に対する負の影響の洗い出し、評価および顕著な人権リスクの特定を行っています。その後、推進事務局は各組織の人権リスクを集約、分析、評価し、ステークホルダーエンゲージメントを経て、キヤノンとしての顕著な人権リスクを特定しています。人権リスクの評価にあたっては、Responsible Business Alliance(RBA)が提供する国・地域別の人権リスクインデックスなども参照しています。

また、各部門・各社で特定された顕著な人権リスクのうち、現状の取り組みでは不十分と思われるものについては、リスクを防止・軽減するさらなる取り組みを実施しています。

事業部門におけるワークショップの様子

キヤノンにおける顕著な人権リスク

キヤノンの事業活動において発生する可能性がある人権リスクのうち、顕著な人権リスクとして特定したのは、「人種・性別・宗教等による差別」「ハラスメント」「児童労働」「強制労働」「賃金不払い・低賃金」「過重労働」「労働安全衛生」「プライバシーの保護」など11項目です。これらのリスクについては、下表記載の通り、リスクを防止・低減するためのさまざまな対応策がとられています。

また、新規事業についても人権リスクを評価しています。たとえば、M&Aを行う際には、DDの一環として、労働基準や安全衛生などに関する法令の遵守状況を調査し、新たにグループ入りする企業に重大な人権リスクがないことを確認しています。

キヤノンにおける顕著な人権リスク

  権利主体 キヤノンにおける対応
サプライヤー・
委託先従業員
自社従業員 顧客・消費者 地域社会
人種・性別・
宗教等による差別
      ダイバーシティ&インクルージョンの推進
ハラスメント       ハラスメントの防止
児童労働       サプライチェーンにおける人権尊重
強制労働       サプライチェーンにおける人権尊重
賃金不払い・
低賃金
      サプライチェーンにおける人権尊重
過重労働     過重労働の防止
サプライチェーンにおける人権尊重
労働安全衛生     労働安全衛生と健康経営
プライバシーの
保護
    個人情報の保護
紛争鉱物の調達       責任ある鉱物調達への取り組み
事業拠点の
騒音、環境汚染
      環境
製品に起因する
健康被害・事故
      製品責任

救済メカニズム

キヤノンでは、人権に関する具体的な懸念について従業員が現地語で通報することができる内部通報窓口を国内外のほぼすべてのグループ会社に設置しています。また、イントラネットや研修などを通じて通報窓口の周知に努めています。

さらに、社外のステークホルダーに対しても、キヤノンの企業活動にともなう人権に関する具体的な懸念について通報を受け付ける窓口をWebサイトに設けています。

社内外いずれの窓口においても、通報者のプライバシーは保護され、通報したことを理由として不利益な取り扱いを受けることがないよう、匿名での通報も可能となっています。通報を受け付けた事案については、事実関係の調査を行い、問題があると判断されれば、適切な手続きを通じてその是正や再発防止に取り組んでいます。

2022年において通報を受けた人権に関する事案(差別・ハラスメント、賃金、労働時間など)は110件ありました。当該110件の中で、2022年末時点で調査が完了した事案のうち、是正すべき事案が21件認められました。

加えて、キヤノンが加盟している業界団体が救済メカニズムを提供しており、キヤノンのステークホルダーは、このプラットフォームを通じて人権に関する具体的な懸念を通報することもできます。

人権啓発活動

ビジネスと人権に関わる基礎的な知識およびキヤノンの人権に関する取り組みの周知・啓発を目的として、2021年より従業員を対象としたeラーニングプログラムを実施しています。

2022年には国内グループ会社に展開し、33,100人が受講を完了しました(受講率98.2%)。

従業員ハンドブックによる従業員への周知

キヤノンベトナムでは職場環境をさらに改善し、会社と従業員の相互理解を深めるため、「従業員ハンドブック」を発行しています。ハンドブックではキヤノングループ行動規範、RBA行動規範、人権の保護を含むキヤノンベトナムのさまざまな社内ルールを網羅しています。

従業員ハンドブックによる従業員への周知

ステークホルダーエンゲージメント

「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」では、企業が、自らの活動において、実際のまたは潜在的な負の影響を特定する時点でステークホルダーとのエンゲージメントを行うことが重要であると規定しています。2022年も、人権DDの一環として、キヤノンの顕著な人権リスクを特定するにあたり、従業員の代表であるキヤノン労働組合と対話を行いました。その中で、とりわけ従業員の人権リスクとして考えられる「人種・性別・宗教等による差別」「ハラスメント」「過重労働」「労働安全衛生」「プライバシーの保護」について、労働組合の認識を確認するとともに、テレワークの浸透による働き方の変化や男性の育児休暇取得に関する内容など広く意見を交換し、その結果はキヤノンとしての顕著な人権リスクの特定に反映されました。労働組合からは、組合にて把握しているリスクについての紹介に加え、コロナ禍における働き方に関する具体的な事例も提示され、相互理解を深めることもでき、今後の継続的な対話の実施を確認しました。

キヤノン労働組合との対話の様子

従業員の人権尊重

過重労働の防止

キヤノンでは、過重労働のリスクが特に高いとされる海外の生産拠点において、従業員の労働時間を正しく把握するしくみを構築し、その運用状況はキヤノン(株)の人事部門に毎年報告されます。また、2015年にアジア生産会社向けに労働ガイドラインを導入して人権に関する取り組みを始めましたが、2022年、RBAの基準にも適合する形で、新たな労働ガイドラインへ刷新し、国内外すべてのグループ生産会社に対して統一の労働ガイドラインを導入しました。

結社の自由と団体交渉権の尊重

キヤノンは、「キヤノングループ人権方針」において明らかにしているように、各地の法令に則し、結社の自由と団体交渉権を尊重しており、労使の対話を促進することで、労働に関するさまざまな課題の解決に努めています。たとえばキヤノン(株)は、キヤノン労働組合との間で締結している労働協約において、団体交渉を通して会社と組合の双方が正常な秩序と信義をもって迅速に問題の平和的解決に努めることを明記しています。

ハラスメントの防止

キヤノンは、創業以来の人間尊重主義に従い、性別や職種による差別の禁止に加え、「ハラスメントを許さない」という考えのもと、経営幹部をはじめとしてキヤノンで働くすべての従業員にハラスメント防止を周知徹底しています。

キヤノン(株)では、セクシュアルハラスメントとパワーハラスメントの禁止に加え、マタニティハラスメントなどの禁止を明記した「就業規則」「ハラスメント防止規程」を制定しています。同規程を国内グループ会社に周知し、多くのグループ会社では同様の規程が設けられています。

また、キヤノン(株)および多くの国内グループ会社では、快適な職場環境の保持を図るために、ハラスメント相談窓口を設置しています。なお、従業員からの相談に関しては、プライバシーの保護など、相談者・協力者が不利益を受けることのないよう徹底しています。

ハラスメント防止対策として、キヤノン(株)の各事業所、国内グループ会社の担当者を対象に定期的に連絡会を開催し、相談窓口の運用状況について把握・共有するほか、マニュアルの確認や対応方法の共有を行っています。

自社生産拠点における人権侵害リスク評価と改善活動

キヤノンでは、国内外の自社57の生産拠点において、RBAのSAQ(Self-Assessment Questionnaire)を用いた人権侵害リスク評価を実施しています。SAQでは、児童労働、強制労働、結社の自由や団体交渉権の確保等を確認していますが、重大な人権侵害のリスクは確認されていません。しかし、2022年は、外国人従業員の処遇についてRBAの行動規範に未達の部分があり、外国人従業員の代表との協議、対話を行いました。さらに、2022年は国内外の16の生産拠点でRBAの外部監査を受審しました。人権を含む労働、安全衛生などに関して重大な不適合はありませんでしたが、指摘されたRBA行動規範の要求事項と現地法にもとづく自社ルールや手続きの違いによる不備について、ルールや手続きを改定し、是正しました。また、指摘事項についてはグループ各社へ水平展開しています。食堂運営会社や警備会社といった構内の業務委託先についてもキヤノンの独自調査やRBAの外部監査を実施し、確認された懸念点について改善要請し、是正を行っています。キヤノンではさまざまな宗教の方が働いています。職場への礼拝施設の設置や、就業中の祈祷・礼拝・服装、食事等、宗教上の配慮が必要な場合は相談に応じる窓口を設置し、対応方法を協議することを定めたルールを整備するなど、対応を進めています。

児童労働の防止

キヤノンでは、児童労働を防止するために、入社時の年齢確認を徹底するとともに、万が一、就労可能年齢にいたらない従業員が発見された場合に備えた対応フローを整備しています。

強制労働・不合理な移動制限の防止

キヤノンでは、国内外の自社の生産拠点において、RBAのSAQを用いた自己点検を行い、強制労働および職場や施設内での自由な移動に関して不合理な制限がないことを確認しています。

サプライチェーンにおける人権尊重

キヤノンは、RBA行動規範を採用した「キヤノンサプライヤー行動規範」を策定し、労働・安全衛生・環境・マネジメントシステムなどに配慮した調達活動を推進しています。また、主要サプライヤーについては、RBA行動規範の遵守に関する同意書を取得するほか、サプライヤーにおける児童労働・強制労働・不合理な移動制限・過重労働を防止し、労働安全衛生を確保することを目的に、RBAのSAQを用いた自己点検を毎年実施しています。一部の主要サプライヤーについては、キヤノンが自己点検結果の検証や現地監査を行っています。

また、サプライヤーや業界団体と協力しながら、責任ある鉱物調達の取り組みも進めています。

継続的なモニタリング

「キヤノングループ人権方針」で表明した内容の遵守状況については継続的にモニタリングするとともに、人権DDについては、継続的に特定・評価手法を改善し、定期的にグループ全体で確認していきます。また、社会的な要請やステークホルダーとの対話、キヤノンの事業状況に応じて、キヤノンの人権への取り組み内容は適宜見直しを行っていきます。

現代奴隷法への対応

自社およびそのサプライチェーンにおいて強制労働、人身取引、児童労働のリスクについて問題のないことを確認し、年次のステートメントを公表することを義務づける現代奴隷法にもとづき、キヤノンは情報開示を行っています。