ニュースリリース

2007年3月5日
財団法人 京都国際文化交流財団
キヤノン株式会社

京都国際文化交流財団とキヤノンが「文化財未来継承プロジェクト」
(愛称: つづりプロジェクト)を発足
日本の貴重な文化財をデジタル技術により保存し後世に継承

財団法人 京都国際文化交流財団(以下 京都国際文化交流財団)ならびにキヤノン株式会社(以下キヤノン)は、かけがえのない資産である日本の文化財を最新のデジタル技術により保存し、後世に継承することを目的とした「文化財未来継承プロジェクト」(愛称:つづりプロジェクト)を発足します。

「文化財未来継承プロジェクト」は、京都国際文化交流財団が主体となって推進する文化財保存活動の一環として発足したもので、キヤノンがその趣旨に賛同したことにより実現した新しい長期的なプロジェクトです。

本プロジェクトでは、屏風や襖絵をはじめ、古くから日本に伝わる貴重な文化財をデータとして記録するとともに、そのデータをもとに、デジタル技術を応用して高精細な複製品を制作します。キヤノンの大判プリンターを活用して原寸大に印刷し、必要に応じて金箔や表装を施すなど、デジタル技術と伝統工芸の融合により、オリジナルに限りなく近い複製品を完成させます。この複製品を活用することで、オリジナルの文化財はより良い環境のもとで劣化を防ぎながら保存することが可能となるため、文化財の未来への継承がより確実に行えるようになります。

この複製品を広く一般に公開することにより、日本の優れた文化や芸術に身近に接する機会を、世界中のできるだけ多くの方に提供することを目指しています。複製品は、オリジナルの文化財の現所有先や海外に流出する以前にオリジナル作品を所有していた社寺、さらには博物館、大学、文化財にゆかりのある都道府県などへ寄贈される予定です。寄贈を受けた都道府県では、日本の歴史・芸術・文化を伝える活きた教材として小・中学校での活用も検討しており、本プロジェクトが文化遺産をデジタル画像に保存する従来のデジタルアーカイブ事業から更に発展した、新しい試みとなることと確信しています。

本プロジェクトは、本年3月から2010年2月末までの3年間にわたって実施します。その間に、国内外に保存、展示されている日本の文化財の中から、重要度や希少性などをもとに厳選した15作品以上の複製を予定しています。複製する作品の中には、海外に流出してしまったために、日本国内では目にすることが困難な「里帰り」作品も数点含まれています。

一年目である本年は、メトロポリタン美術館に現在所蔵されている「八橋図屏風やつはしずびょうぶ」(尾形光琳筆おがたこうりん)、「老梅図襖ろうばいずふすま」(狩野山雪筆かのうさんせつ)、「列子御風図襖れっしぎょふうずふすま」(狩野孝信筆かのうたかのぶ)の原寸大複製の制作が決定しており、海外における初のケースとして期待を集めています。また、東京国立博物館所蔵の「松林図屏風しょうりんずびょうぶ」(長谷川等伯筆はせがわとうはく)、シアトル美術館所蔵の「琴棋書画図襖きんきしょがずふすま」(狩野孝信筆かのうたかのぶ)などの複製についても、現在関係者間の協議が進められています。

文化財の保存活動に長年の経験と蓄積を持つ京都国際文化交流財団と、高精度、高精細で高画質な画像再現技術をもつキヤノンとが一体となって、素晴らしい作品を後世に継承し、同時に世界へ発信する本プロジェクトを推進することにより、両者では、芸術を通じた社会や文化の発展に貢献していきたいと考えています。

【 概 要 】

名称 文化財未来継承プロジェクト(つづりプロジェクト)
主催 財団法人 京都国際文化交流財団
協賛 キヤノン株式会社
期間 2007年3月1日 ~ 2010年2月28日まで 3年間
対象 国内外にある日本の文化財(屏風・襖絵・掛け軸・絵巻物など)
テーマ 1.「海外へ流出した作品の里帰り」
2.「日本を代表する水墨画作品」
3.「歴史をひもとく文化財」
所蔵元 メトロポリタン美術館、シアトル美術館(調整中)、東京国立博物館(調整中)ほか
寄贈先 京都市、花園大学、東京国立博物館、妙心寺天祥院、建仁寺ほか
対象作品 八橋図屏風やつはしずびょうぶ」(尾形光琳筆おがたこうりん・メトロポリタン美術館所蔵)
老梅図襖ろうばいずふすま」(狩野山雪筆かのうさんせつ・メトロポリタン美術館所蔵)
列子御風図襖れっしぎょふうずふすま」(狩野孝信筆かのうたかのぶ・メトロポリタン美術館所蔵)
松林図屏風しょうりんずびょうぶ」(長谷川等伯筆はせがわとうはく・東京国立博物館所蔵・国宝-調整中)
琴棋書画図襖きんきしょがずふすま」(狩野孝信筆かのうたかのぶ・シアトル美術館所蔵-調整中)
鹿下絵和歌巻断簡しかしたえわかかんだんかん」(俵屋宗達筆たわらやそうたつ/本阿弥光悦筆ほんあみこうえつ・シアトル美術館所蔵-調整中)

上記を始め、3年間で国宝・重要文化財を含む計15作品以上の高精細複製品の制作を予定しています。