特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)ならびにキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が3カ年計画で取り組んでいる「綴プロジェクト」(正式名称:「文化財未来継承プロジェクト」)の第二期の成果として、このほど5作品が完成しました。これらの作品は、オリジナルの文化財を現在所有している所蔵元へ寄贈されます。
「綴プロジェクト」は、京都文化協会が主体となって推進する文化財保存活動の一環として発足したもので、キヤノンがその趣旨に賛同して2007年3月から開始したプロジェクトです。屏風や襖絵、絵巻物など、古くから日本に伝わる貴重な文化財をデジタル化して記録するとともに、そのデータをもとに、デジタル技術を応用して高精細な複製品を制作*します。これらの作品を活用することで、オリジナルの文化財はより良い環境のもとで劣化を防ぎながら保存することが可能となるため、貴重な文化財の未来への継承がより確実に行えるようになります。本プロジェクトは、「海外へ流出した作品の里帰り」、「日本を代表する水墨画作品」、「歴史をひもとく文化財」の3つのテーマのもとに対象文化財を選定しています。
- *キヤノンのデジタル一眼レフカメラでオリジナル作品の高解像なデジタル画像データを作成し、大判プリンターで高精細に原寸大で印刷します。さらに伝統工芸士が金箔や表装を施すことにより、作品が完成します。
今回の第二期では、毛利博物館に所蔵されている国宝の「山水長巻」(雪舟筆)などの「日本を代表する水墨画」作品3点に加え、神戸市立博物館に所蔵されている「南蛮屏風」(狩野内膳筆)などの「歴史をひもとく文化財」作品2点が完成し、それぞれの所蔵元である社寺や博物館、美術館へ寄贈することになりました。これまでに制作された作品は、初年度である第一期の5作品と、今回新たに完成した5作品の、計10作品になります。
寄贈先では、今後、作品を広く一般に公開することにより、日本の優れた文化や芸術に身近に接する機会を、世界中の多くの方に提供する予定です。
また、今回の第二期5作品の制作にあたっては、キヤノン独自の高精度・高精細カラーマッチングシステムを採用したことにより、制作期間を大幅に短縮するとともに、よりオリジナルに忠実な色再現を実現しました。
文化財の保存活動に長年の経験と蓄積を持つ京都文化協会と、入力から出力までの一貫したデジタル画像技術を持つキヤノンとが協力して本プロジェクトを引き続き推進することにより、両者は、今後も芸術を通じた社会や文化の発展に貢献していきたいと考えています。
綴プロジェクト(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)
国宝「山水長巻」一巻(うち第11紙、及び第12紙) 室町時代 雪舟筆
原本:財団法人 防府毛利報公会 毛利博物館
【 概 要 】
| 名称 |
: |
綴プロジェクト (正式名称:文化財未来継承プロジェクト) |
| 主催 |
: |
特定非営利活動法人 京都文化協会 |
| 協賛 |
: |
キヤノン株式会社 |
| 期間 |
: |
2007年3月1日 ~ 2010年2月28日まで 3年間 |
| 対象 |
: |
国内外にある日本の文化財(屏風・襖絵・絵巻物など) |
| テーマ |
: |
1.「海外へ流出した作品の里帰り」
2.「日本を代表する水墨画作品」
3.「歴史をひもとく文化財」 |
【 第二期対象文化財 】
| 作品名 |
員数 |
作者名 |
時代 |
テーマ |
現所蔵元 / 寄贈先 |
| 山水長巻(国宝) |
一巻 |
雪舟 |
室町時代 |
2 |
毛利博物館(山口県防府市) |
| 四季花鳥図屏風(重要文化財) |
六曲一双 |
狩野元信 |
室町時代 |
3 |
白鶴美術館(兵庫県神戸市) |
| 雲龍図襖(重要文化財) |
四面 |
海北友松 |
安土・桃山時代 |
2 |
建仁寺(京都府京都市) |
| 南蛮屏風(重要文化財) |
六曲一双 |
狩野内膳 |
安土・桃山時代 |
3 |
神戸市立博物館(兵庫県神戸市) |
楼閣山水図屏風
(月夜山水図屏風)(重要文化財) |
六曲一双 |
曽我蕭白 |
江戸時代 |
2 |
近江神宮(滋賀県大津市) |
【 2009年度以降対象文化財(予定) 】
2009年度以降の対象作品として、テーマ1.「海外へ流出した作品の里帰り」からは、俵屋宗達、本阿弥光悦など、日本の歴史上、特に重要な作家の作品を厳選して制作することを予定しています。その他のテーマの作品に関しては、現在検討中です。
【 参考資料 】