キヤノンの撮影光学系用の積層型回折光学素子の開発者が、文部科学省が主催する「平成24年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」において「科学技術賞(開発部門)」を受賞しました。
文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者の功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上と科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の文部科学大臣表彰を定めています。
このたび、主にデジタル一眼レフカメラ用の交換レンズに用いる撮影光学系用の積層型回折光学素子の開発に携わったキヤノンの開発者がその功績を認められ、同賞の「科学技術賞(開発部門)」を受賞しました。
中井武彦
(キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 光学技術統括開発センター 室長)
撮影光学系用の積層型回折光学素子の開発
カメラ等の撮影光学系は、より小型でより良好な光学性能であることが恒常的に要求されています。そこで、撮影光学系の小型化を図りつつ、大きな色収差補正効果が得られる回折光学素子を利用し、さまざまな角度から広い波長帯域の光が入射する撮影光学系においても回折光学素子の回折効率の低下を抑えつつ、高い精度の量産性を確保することのできる積層型回折光学素子を開発しました。この開発によって、世界で初めて回折光学素子が撮影光学系に搭載され、従来の屈折レンズのみの構成に比べて大幅に小型・軽量化された撮影光学系が実現できました。
この開発は、超望遠レンズ等の撮影光学系を撮影現場に持ち出しやすくして、プロフォトグラファーのみならず一般ユーザーの撮影機会を増やすことにより、写真文化の発展に寄与することができます。さらに、広い波長帯域を持つ光を利用する光学系全般への回折光学素子の適用も可能にすることで光学技術の発展にも貢献します。
なお、積層型回折光学素子が搭載された現行のキヤノン製品(一眼レフカメラ用交換レンズ)は、「EF70-300mm F4.5-5.6 DO IS USM」「EF400mm F4 DO IS USM」の2機種で、Diffractive Optics(=回折光学)の頭文字である「DO」が製品名称に組み込まれています。