特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第10期作品として、米国サンフランシスコ・アジア美術館所蔵の「四季山水図屏風」(式部輝忠(しきぶてるただ)筆)、「韃靼人狩猟・打毬図(だったんじんしゅりょう・だきゅうず)屏風」(伝 狩野宗秀(かのうそうしゅう)筆)の2作品の高精細複製品を、6月30日に京都国立博物館へ寄贈します。
(四季山水図屏風)
(韃靼人狩猟・打毬図屏風)
「四季山水図屏風」は、室町時代の式部輝忠の作品です。画面右からの梅、滝、紅葉、雪山によって四季が象徴され、右隻から左隻への連続図様となる六曲一双の山水図屏風です。式部輝忠の作品は、大画面の作品としては本作品を含め数例が知られるのみです。
一方、「韃靼人狩猟・打毬図屏風」は、桃山時代の狩野宗秀の作品と伝わっています。本作品は、韃靼人と呼ばれるモンゴル高原に住んでいた遊牧民族が、狩猟や現代の球技ポロに通じる打毬に興じる様を、金地に濃彩に描いた六曲一双の屏風です。
両作品のオリジナルは現在、米国サンフランシスコ・アジア美術館に所蔵されています。今回、高精細複製品を京都国立博物館へ寄贈することで、これら名品の日本への“里帰り”が実現します。
両作品は、京都国立博物館 平成知新館のグランドロビーにて6月30日から9月3日まで(7月28日から8月2日を除く)展示されるほか、今後も随時展示などで活用される予定です。
今年10周年を迎えた「綴プロジェクト」は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が推進する「東京2020公認文化オリンピアード」の認証を受けました。キヤノンは本プロジェクトの活動を通じて、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国際教育や交流等を行う上での礎となる日本文化への理解を育み、次世代への継承と発展につなげていきます。
「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。
2007年からスタートした本プロジェクトは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。本作品を含め、現在までに全35作品を寄贈しました。
入力 |
高精細デジタルデータの取得文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。 |
色合わせ |
高精度なカラーマッチング取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。 |
出力 |
世界最高レベルのプリンティング技術日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。 |
金箔・金泥・雲母 |
古来より伝承される伝統工芸の技により再現日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。 |
表装 |
京で鍛えられた確かな技術作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。 |