ニュースリリース

2021年11月5日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

日本の文化を未来に継承する「綴プロジェクト」にて
国宝「風神雷神図屏風」の高精細複製品を京都府の建仁寺へ奉納

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下「京都文化協会」)とキヤノン株式会社(以下「キヤノン」)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第14期作品として、国宝「風神雷神図屏風」(俵屋宗達筆)の高精細複製品を制作し、2021年11月5日に京都府の臨済宗大本山建仁寺(以下「建仁寺」)へ奉納します。

国宝「風神雷神図屏風」(俵屋宗達筆)

国宝「風神雷神図屏風」(俵屋宗達筆)

国宝「風神雷神図屏風」の高精細複製品を最新技術・機材にて制作

建仁寺が所蔵する国宝「風神雷神図屏風」は、琳派(りんぱ)の祖、俵屋宗達の最高傑作と言われ、日本を代表する文化財のひとつです。作品保護の観点から、現在は京都国立博物館に寄託されており、一般公開される機会が限られています。
本作品の複製制作は、綴プロジェクト第4期でも手掛けており、2011年に建仁寺へ奉納した高精細複製品は、これまで国内外の多くの方々に鑑賞されてきました。今期では、この10年間で進化した最新技術を用いて、オリジナル文化財をより忠実に再現した高精細複製品を新たに制作しています。
制作にあたっては、オリジナル文化財を高性能フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」で撮影し、総画素数約42億画素の高解像度データの取得を実現しました。こうしたキヤノンの最新デジタルイメージング技術と京都伝統工芸の匠(たくみ)の技の融合により、金地に墨の濃淡で表現される黒雲や顔料の粒子、細線などの細部に至るまで忠実に再現しています。さらに、独自開発のカラーマッチングシステムの精度を向上させることで、短時間で高精度な色合わせを実現し、オリジナル文化財への負担を可能な限り低減しながら、より忠実な高精細複製品を制作しました。

建仁寺に奉納し常設展示

最新技術を用いて制作した高精細複製品は、2021年11月5日に建仁寺へ奉納します。奉納作品は、建仁寺にて展示され、参拝者は随時、鑑賞できます(拝観料は別途必要)。

綴プロジェクトでは、鑑賞の機会が限られるオリジナル文化財をより良い環境で保存しながら、高精細複製品を通して多くの方々が日本の文化財に触れる機会を創出してまいります

  • 建仁寺の詳細は、こちらをご覧ください。建仁寺ホームページ:https://www.kenninji.jp

「綴プロジェクト」とは

「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。本作品より、複製品の制作過程で使用するカメラを「EOS R5」、ストロボを「スピードライト EL-1」に変更することで撮影システムを刷新し、これまで以上に高精細な複製品の制作が可能となりました。
2007年からスタートした本プロジェクトは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、小・中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。葛飾北斎や俵屋宗達、尾形光琳の作品など、現在までに全58点の高精細複製品を制作、寄贈しました。

  • これまでにも第11期作品より、制作で使用するレンズは「EF400mm F2.8L IS II USM」、第12期作品より、大判プリンターは「imagePROGRAF PRO-4000」に変更。

「綴プロジェクト」の制作プロセス

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。

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