化学物質・汚染防止の取り組み
生産工程での化学物質管理

キヤノンは、生産工程で使用する化学物質について、人体・環境への影響や可燃性など、安全面から規制が求められている化学物質を「管理化学物質」としてリスト化し、「Aランク:使用禁止」「Bランク:排出削減」「Cランク:規制対象」の3レベルに分類して各レベルに応じた対策を講じています。「Aランク:使用禁止」物質には、化学兵器禁止条約、ストックホルム条約、モントリオール議定書および石綿の使用における安全に関する条約に規定される物質、さらに、特定の温室効果ガス(PFCs/HFCs/SF6)、その他の土壌・地下水汚染物質、人の健康に重大な影響を及ぼす物質を定めています。また、PFCs/HFCs/SF6以外の温室効果ガス、IPCCにより地球温暖化係数(GWP)が示されている温室効果ガス、揮発性有機化合物(VOC)、その他、キヤノンが対象として指定する物質を「Bランク:排出削減」物質に定めています。なお、「Cランク:規制対象」物質は、基準値の遵守、使用量・在庫量の把握などの遵守事項を定めた化学物質です。

化学物質関連データ(340KB)

管理化学物質の使用量・排出量の削減

キヤノンでは、管理化学物質の排出削減のために、生産プロセス改善による化学物質の使用量削減や再利用など、各拠点でさまざまな取り組みを行っています。2023年はキヤノンプラチンブリタイランドにおける管理化学物質の代替化やグリス塗布量の適正化や台湾キヤノンにおける研磨工程改善といった継続的な削減活動により管理化学物質排出量は396tと、前年と比較して4.1%の減少となりました。

管理化学物質排出量・PRTR制度※対象物質排出量の推移
管理化学物質排出量・PRTR制度対象物質排出量の推移
  • ※ PRTR制度:化学物質排出移動量届出制度。PRTRはPollutant Release and Transfer Registerの略
  • ※ 管理化学物質のうち「Cランク:規制対象」に分類している化学物質の集計は除いています
  • ※ 主にISO14001統合認証の取得会社を集計の範囲としています

大気や水域への排出抑制と汚染防止

キヤノンは、大気汚染や酸性雨の主要因となるNOx※1やSOx※2、海や湖沼の富栄養化の原因となるリンや窒素などの環境負荷物質の削減、水域での環境負荷指標であるBOD※3やSS※4の低減に努めています。たとえば、キヤノン・コンポーネンツでは、処理後の排水にわずかに残る顔料を取り除くために、廃汚泥に含まれる活性炭を再利用する新たなフローをグループで初めて導入。環境負荷低減を実現しています。

大気汚染を未然に防止するため、燃料使用設備の新規導入・更新に際しては、大気汚染物質(SOx、NOx、ばいじんなど)の発生が少ない燃料を使用する設備を選定するとともに、重油の使用を原則禁止しています。また、オゾン層破壊物質やストックホルム条約で定められた残留性有機汚染物質についても使用を禁止しています。排水については、各拠点に適用される法律などによる規制項目について、その規制値を拠点基準値に設定しています。それぞれの項目について、拠点基準値の80%を社内管理値に設定し、管理基準の遵守状況を定期的に確認しています。

  • ※1 NOx(窒素酸化物):大気汚染や酸性雨、光化学スモッグの主原因で、燃料中の窒素分の酸化や高温燃焼時に空気中の窒素ガスが酸化されることにより発生
  • ※2 SOx(硫黄酸化物):大気汚染や酸性雨の主原因で、石油や石炭などの化石燃料を燃焼することにより発生
  • ※3 BOD(生物化学的酸素要求量):水中の有機物を微生物が分解する時に消費する酸素量。BODの値が大きいほど水質は悪い
  • ※4 SS(浮遊物質量):水中に浮遊する粒径2mm以下の溶解しない物質の総称
大気放出(340KB)

半導体デバイス前処理工程の化学物資削減

半導体加工プロセスの過程では、化学物質を用いてウエハー(半導体素子材料)を洗浄する工程が全体の約3割を占め、洗浄加工で使用する各種化学物質は装置稼働有無にかかわらず、一定期間で交換されます。キヤノン綾瀬事業所半導体デバイス工場では生産計画やメンテナンス、設備能力といったデータと刻一刻と変化する生産現場における状況を反映した未来予測ツールを開発し、装置のメリハリ稼働を実現しました。計画的に装置の稼働停止期間を設けることで使用する薬液の交換回数を減らし薬液使用量を削減しました。年間で約2.3万Lの化学物質の削減を見込んでいます。

土壌・地下水汚染の管理状況

キヤノンでは、土壌・地下水環境の保全を重要視し、「土壌・地下水汚染に対する基本方針」を策定。この方針のもとに対策の徹底を図っています。万が一、土壌・地下水汚染が確認された拠点については、法に則った汚染除去などの措置を確実に実施しています。
また、新規に土地を取得する場合には、事前に土壌調査を行い、土壌浄化などの対策を実施した上で、浄化完了後に購入することを基準化しています。さらに、各拠点で使用する化学物質を把握するとともに当該国や地域の基準と照らし合わせ、各地の状況にあわせたリスク対応を展開しています。

土壌・地下水の管理状況
事務所 対象物質 対応
下丸子 1,2-ジクロロエチレン 薬剤注入、水質測定
宇都宮第一駐車場 フッ素およびその化合物 揚水処理、水質測定
取手 トリクロロエチレンなど
六価クロムおよびその化合物など
被覆、揚水処理、水質測定
キヤノンエコロジーインダストリー トリクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレン 被覆、揚水処理、水質測定
キヤノン・コンポーネンツ 水銀およびその化合物 被覆、水質測定
  • ※ 浄化中の拠点は、行政に報告しています

PCB廃棄物の管理

キヤノンでは、生体や環境へ影響を及ぼすPCB(ポリ塩化ビフェニル)について、法令に準拠し厳重に管理しています。2023年12月末現在、高濃度PCB廃棄物を保管している事業所は1拠点あります。これらについては、日本国内では中間貯蔵・環境安全事業株式会社において順次廃棄処理が進められています。