気候変動の取り組み
省エネルギー製品設計

キヤノンは、お客さまが製品を使用することで発生するCO2を減らすために、省エネルギーな製品の設計を心掛けています。
例えば、オフィス向けの複合機やレーザープリンターなどの製品には、独自の省エネルギー技術を採用しています。なかでも、オンデマンド定着技術やIH(Induction Heating)定着技術は、製品稼働時の消費電力削減に貢献しています。さらに、より低い温度で定着できる低融点トナーを新製品に搭載するなど、省エネルギー製品の拡大に向けた技術革新を続けています。

オフィス機器の環境配慮設計

オフィス向け複合機「imageRUNNER ADVANCE DX C3900F」シリーズでは、従来トナーより定着温度を大幅に改良した業界トップクラスの低温定着トナーを採用することで、従来機種にくらべ消費電力を最大約15%低減※1し、業界トップクラスの標準消費電力量(TEC値)※2を実現しています。本トナーはトナー粒子の形状を制御して転写効率を高めているため、印刷終了時に回収される転写残トナーの発生が少なく、回収トナー容器を交換するまでに印刷できる枚数は従来機種の約2倍に延びています。特に印刷量が多い環境では、トナーを廃棄する量が減り、環境負荷の低減につながります。また、定期消耗部品※3も長寿命化し、部品交換回数を削減した環境配慮設計を実現しました。

  • ※1 A3モデルのみ。従来機種は「imageRUNNER ADVANCE DX C3835F/C3830F/C3826F」(2021年10月発売)。
  • ※2 国際エネルギースタープログラム使用製品(25~35枚/分クラスのコピー/ファクス/スキャナー機能付きのデジタルカラー複合機)との比較において。2023年8月1日現在。(キヤノン調べ)
  • ※3 中間転写ユニット、2次転写外ローラー
imageRUNNER ADVANCE DX C3900Fシリーズ(オプション装着時)
imageRUNNER ADVANCE DX C3900Fシリーズ(オプション装着時)

カーボンフットプリント(CFP)の算定・開示

キヤノンは、LCAの手法を導入し、ライフサイクル全体(原材料調達、生産、流通、使用・維持管理、廃棄・リサイクル)を5段階に分け、それぞれで排出した温室効果ガス(GHG)をCO2排出量相当に換算し、CFPとして「見える化」しています。見える化により、自社製品のライフサイクル上で排出量の多いプロセスが特定でき、効率的にCO2排出量の少ない製品設計に取り組んでいます。

さらに、お客さまがよりCO2排出量の少ない製品を選択できるよう、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)のSuMPO環境ラベルプログラムにおける「SuMPO EPD※1」を取得し、情報開示に努めています。2024年には、サプライヤーとの協業のなかで、サプライヤーの一次データをSuMPO EPDに組み込み、公開することができました。

また、経済産業省が推進する「CFPを活用したカーボン・オフセット制度」を活用し、お客さまのご要望に応じてオフィス向け複合機と一部のプロダクションプリンターの製品ライフサイクル全体で排出するGHGについて、カーボン・オフセット※2を行うしくみをご用意しています。2024年のお客さまのご要望に応じたカーボン・オフセット量は合計で1,129tになりました。

  • ※1 2024年4月、「エコリーフ」を「SuMPO EPD」へ名称変更
  • ※2 カーボン・オフセットとは、自らの温室効果ガス排出量のうち、削減努力をし、それでも削減できない量を他の場所での排出量削減・吸収量で埋め合わせ(オフセット)する取り組みです。

参考:SuMPO環境ラベルプログラム登録製品

https://corporate.jp.canon/sustainability/environment/customer/products/cfp

参考:カーボンフットプリント(CFP)を活用したカーボン・オフセット制度対象機種

https://corporate.jp.canon/sustainability/environment/customer/products/cfp-certified

製品使用時における削減効果

オフィス向け複合機やレーザープリンターをはじめとしたオフィス機器の省エネルギー技術は、2013年から2024年までの累計で7,067GWhの省エネルギー効果を生みだしました。これにより、3,169千t-CO2eの削減効果が期待されます。

オフィス機器の省エネルギー量とCO2削減効果(累計)
オフィス機器の省エネルギー量とCO2削減貢献量(累計)
  • ※ 対象製品:電子写真方式のオフィス向け複合機とレーザープリンター(プロダクションプリンターは除外)
  • ※ 各年に販売した製品を5年間使用すると想定し、各年5年前に販売した製品の平均エネルギー(電力)消費量を基準とした省エネルギー効果
  • ※ 電力量のCO2換算は電気事業連合会および電気事業低炭素社会協議会(国内)、 IEA公表値(海外)から地域別売上の加重平均値を使用して算出

キヤノンUSAがENERGY STAR®アワード2024「Partner of the Year」を受賞

キヤノンUSAは、米国環境保護庁(EPA)が主催するENERGY STAR®アワード2024において、「Partner of the Year - Product Brand Owner」に9年連続で選出されるとともに、最高位の賞である「Partner of the Year-Sustained Excellence」を7年連続で受賞しました。

ナノインプリントリソグラフィ技術が第33回地球環境大賞において最高位の「地球環境大賞」を受賞

キヤノンは、これまでの投影露光技術とは異なる方式で回路パターンを形成するナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術を使用した半導体製造装置を世界で初めて実用化し、2023年に発売しました。従来の半導体露光装置が、ウエハー上に塗布されたレジスト(樹脂)に光を照射して回路を焼き付けるのに対し、NIL技術を使用した半導体製造装置は、ウエハー上のレジストに回路パターンを刻み込んだナノレベルのマスク(型)をハンコのように押し付けて、回路パターンを形成します。
一方、最先端半導体デバイスの需要増加に伴い、半導体デバイス製造にかかるエネルギーの省力化が、グリーン社会の構築に向けた喫緊の課題となっています。NIL技術は光源の波長による微細化を必要としないため、従来の露光技術方式と比べて製造プロセスの消費電力を約10分の1に大幅削減できるほか、現像工程が不要となることで廃液などの排出削減にもつながるなど、環境負荷低減に配慮しています。
この取り組みが評価され、株式会社産業経済新聞社が主催する第33回地球環境大賞において、最高位となる「地球環境大賞」を受賞しました。

  • ※ 1992年に「産業の発展と地球環境の共生」を目指し、産業界を対象とする顕彰制度として、公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパンの特別協力を得て創設された表彰制度。後援は、経済産業省、環境省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、総務省、一般社団法人日本経済団体連合会、日本商工会議所。
第33回地球環境大賞ロゴ
第33回地球環境大賞ロゴ
ナノインプリントリソグラフィ技術を使用した半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」
ナノインプリントリソグラフィ技術を使用した半導体製造装置
「FPA-1200NZ2C」

CO2削減による社会全体への貢献

ハードウエアによるライフサイクルCO2の削減に加え、ITソリューションの活用は業務の効率化や人やモノの移動削減、資源・エネルギーの消費抑制を実現するほか、社会全体のCO2削減につながります。たとえば、橋梁やトンネルの点検においても従来の目視から高精細画像の撮影、独自の画像処理技術および撮影したインフラ構造物の画像から変状(ひび割れなど)を検知するAI技術を融合させることで、作業人員の減少やモノの移動が不要となり、作業効率向上、高性能化の実現とともにCO2の削減を可能にします。

キヤノンは、さまざまなソリューションを社会に提供していくことで、自社のCO2削減にとどまらず、社会全体のCO2削減に貢献していきます。

トンネルや橋梁のメンテナンスの事例
トンネルや橋梁のメンテナンスの事例

また、近年のIoTの進展や、AIの活用によるデータ処理量の爆発的な増加が見込まれるなか、多量の電気を消費するデータセンターの省エネルギー化が求められています。キヤノンITソリューションズグループでは、「データセンター事業を通じて、CO2排出量を削減し、環境保護を図ること」を目的にデータセンターの環境活動を推進しています。具体的には空調効率や冷却水の温度の最適化に加え、機器の配置のレイアウトを工夫するなどお客さまと一体となった日々の運用について改善活動を実施しています。
西東京データセンターでは優良特定地球温暖化対策事業所の認定、省エネ法Sクラス達成、沖縄データセンターでは沖縄県内のデータセンターとして初の実質再生可能エネルギー100%化を実現しました。
さらに、CO2削減活動で創出したCO2削減クレジットの寄付も実施しました。

X線自由電子レーザー施設「SACLA」の省電力化への貢献

国立研究開発法人理化学研究所のX線自由レーザー施設「SACLA」は、分子構造のリアルタイム観察・解析を可能にし、医薬品・材料開発などに応用されています。SACLAの電子ビームの加速パワー源には、キヤノン電子管デバイスのクライストロンが活躍しています。キヤノン電子管デバイスは、マイクロ波変換効率を向上させ、従来製品に対し消費電力を約14%削減することを達成。施設全体で年間約730tのCO2削減を実現しました。

X線自由電子レーザー施設「SACLA」
X線自由電子レーザー施設「SACLA」