環境・社会分野における重点課題(マテリアリティ)

マテリアリティの特定

2022年、キヤノンは、改訂された国際ガイドラインGRIスタンダード2021をもとに、下記の4つのステップに従って自社の活動が環境・社会に及ぼす正負ならびに潜在・顕在のインパクトを考慮し、環境・社会分野における重点課題(マテリアリティ)を6つ特定しました。

特定した6つの重点課題のうち、「気候変動」「資源循環」「化学物質」については、私たちの社会が直面する課題であると同時に、各国・地域における政策の強化がキヤノンの事業拠点活動や製品競争力に大きく影響を与えることから、また、「人権と労働」については、多様な人材が互いに個性を尊重しあい、力を発揮できる職場環境をつくることは、企業の持続的な発展において非常に重要な要素であることから、最重要課題と位置づけました。一方、「生物多様性」は重要ではあるものの、上述の課題に比較してキヤノンの事業が及ぼすインパクトは小さいと考えられます。また、「社会文化支援活動」については企業活動が社会全体の発展に支えられているという認識のもと、重要課題と位置づけました。これらの分析結果を社外有識者と意見交換することで客観性を確保し、経営層とも協議の上、確定いたしました。

キヤノンでは毎年、世界各国・地域におけるサステナビリティに関する動向調査や関連法規制の分析を実施し、サステナビリティ活動の見直しを行っています。この結果、気候変動や資源循環、人権などの2022年に設定した環境・社会に関するマテリアリティ項目に変更はありませんでした。

社内ではそれぞれの課題に向けた専門的なプロジェクトの立ち上げや、具体的な活動を推し進めています。

統合報告書

特定プロセス

以下4つのプロセスを経て環境・社会分野における重点課題(マテリアリティ)を特定しました。

STEP1 社会課題の把握 ・社会のメガトレンド、国際ガイドライン「GRIスタンダード」ほか各種国際的な枠組み、サステナビリティ調査など各種指標、ステークホルダーアンケート、直接の対話を通じて把握した社会からの要請、課題の網羅的把握
STEP2 自社の事業活動との照合 ・自社の事業活動や中長期経営計画に沿った活動が環境や社会に与えるインパクトの把握
STEP3 重要度の評価 ・STEP2で確認したインパクトの重要性を評価
STEP4 検証と承認 ・評価結果について、社外のサステナビリティ専門家との対話を通じて選定項目や優先順位を検証 ・経営層の承認のもと環境・社会分野における重点課題(マテリアリティ)を特定

環境・社会分野における重点課題(マテリアリティ)

★:達成または良好 ☆:一部達成

  特定した重点課題
(マテリアリティ)
重要度 めざすもの 目標 2023年の成果/実績 状況
環境分野 気候変動
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
13 気候変動に具体的な対策を
最重要 2050年に製品ライフサイクルを通じたCO2排出量ネットゼロの達成 SBTiの基準に即し、2030年にスコープ1、2 排出量を2022年比で42%削減、スコープ3(カテゴリー1、11)排出量を2022年比で25%削減 2022年比でスコープ1、2排出量10.2%削減、スコープ3(カテゴリー1、11)排出量18.5%削減(→P18)
2023-2025年ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数 年平均3%改善、2030年に2008年比50%改善 ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数:年平均3.95%改善(2008~2023年)(→P18)
2023-2025年原材料・使用CO2製品1台当たりの改善指数年平均3%改善 原材料・使用CO2製品1台当たりの改善指数:年平均2.37%改善(2008~2023年)(→P18) 着実な改善は進んでいるものの、進捗の鈍化により目標は未達成
2023年エネルギー使用量の原単位改善度:2.4% エネルギー使用量の原単位改善度:4.5%改善(→P18)
資源循環
6 安全な水とトイレを世界中に
12 つくる責任 つかう責任
最重要
  • 新規資源投入の抑制、再生材の活用
  • 包装材におけるシングルユースプラスチック全廃
2023年廃棄物総排出量の原単位改善度:1% 廃棄物総排出量の原単位改善度:1.4%悪化(→P18) 生産調整などに起因する廃棄物増加により未達成
2023年水資源使用量の原単位改善度:1% 水資源使用量の原単位改善度:0.8%悪化(→P18) 設備のメンテナンスなどに起因する水使用量増加により未達成
包装材におけるシングルユースプラスチック削減の推進 包装材の脱プラスチックの取り組みで「PowerShot V10」が「2023日本パッケージングコンテスト」において、「電気・機器包装部門賞」を受賞(→P31)
プリンティング製品の資源循環率2025年:20%、2030年:50% プリンティング事業の資源循環率2023年:約17%(→P29)
化学物質
6 安全な水とトイレを世界中に
12 つくる責任 つかう責任
最重要 製品や生産で使用する化学物質の徹底管理 2023年管理化学物質排出量の原単位改善度:1%改善 管理化学物質排出量の原単位改善度:0.2%悪化(→P18) 部品洗浄の増加などに起因する化学物質使用量増加により未達成
当該化学物質の使用禁止期限の1年前に製品への含有禁止 禁止物質の製品への含有ゼロ(→P34)
生物多様性
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさも守ろう
17 パートナーシップで目標を達成しよう
重要
  • グローバルな視点にもとづきつつ、多様な地域性に配慮した生物多様性の保全
  • あらゆる事業活動にともなう生物多様性への影響低減や、生物多様性の保全につながる社会貢献活動の推進
「事業所を中心とした生物多様性への配慮」事業活動を行う地域における環境影響の把握、動植物の生息/生育空間の保全
  • 拠点における生物種の増加(→P37)
  • バードブランチ活動の展開
    ビオトープやバードバス(野鳥の水浴び場)、巣箱の設置・掃除、バードストライク対策など、野鳥が敷地内で生息しやすい環境の整備、生物季節モニタリングへの参加(→P37)
  • 「下丸子の森」が環境省の「自然共生サイト」に認定、G7サミットでコミットされた30by30目標達成へ貢献(→P38)
  • 工場の緑地整備(→P38)
「生物多様性を育む社会づくりへの貢献」地域社会と連携した生物多様性保全活動の推進、教育活動の推進
  • 専門家の支援のもと野鳥の棲みやすい環境の整備(→P37)
  • 小・中学生を対象とした環境出前授業・キャリア教育の実施(→P38)
森林資源保全に配慮した木材製品の調達 「森林認証用紙」や「環境に配慮された供給源の原材料から製造された用紙」の採用(→P37)
社会分野 人権と労働
5 ジェンダー平等を実現しよう
8 働きがいも 経済成長も
10 人や国の不平等をなくそう
16 平和と公正を全ての人に
最重要 事業活動におけるすべてのステークホルダーの人権を尊重 人権デュー・デリジェンスの実施によるリスク低減
  • サプライチェーンを含む事業活動における顕著な人権リスクの特定(→P43)
  • 国内外拠点 59拠点でRBAツールを使った自己点検(→P46)
従業員が高いモチベーションをもって前向きに働くことができる職場環境 各国や地域の法律にもとづき適正な労働時間の管理と削減 キヤノン(株)総実労働時間:1,734時間(2010年:1,799時間と比較し65時間減少)(→P48)
有給休暇の取得促進 キヤノン(株)平均有給休暇取得日数(年間):17.7日(→P48)
従業員一人ひとりの個性、能力を最大限に生かし、かつ多様性を相互に認め合いそれぞれが活躍できる環境 キヤノン(株):女性管理職比率2025年末までに2011年比の3倍以上
  • キヤノン(株)女性管理職比率:2025年末までの目標に対して93%の達成度(→P51)
  • VIVID(Vital workforce and Value Innovation through Diversity)活動方針のもと、社長と女性社員の座談会やアンケートによる意識調査のほか、社内外の女性リーダー候補者との交流会、キャリアアップ研修、女性リーダー研修や育児休業取得者を対象とした研修を実施(→P51)
キヤノン(株):男性の育児休業取得率2025年末までに50%以上 キヤノン(株)男性の育児休業取得率:65.8%(2011年は1.9%、63.9ポイント増加)(→P52)
障がい者の積極的な採用 キヤノン(株)障がい者雇用率:2.55%(法定雇用率 2.3%)(→P53)
従業員にとって安心・安全な職場環境 キヤノン(株)および国内グループ会社:機械装置起因の挟まれ・巻き込まれ災害(0件) キヤノン(株)および国内グループ会社:機械装置起因の挟まれ・巻き込まれ災害(1件)(→P55) 災害発生により未達成
キヤノン(株)および国内グループ会社:有害性の高い化学物質起因の災害(0件) キヤノン(株)および国内グループ会社:有害性の高い化学物質起因の災害(0件)(→P55)
健康経営の推進 キヤノン(株):健康経営銘柄を2019年から2023年まで5年連続で受賞(→P56)
従業員一人ひとりがキャリアを築き活躍ができる環境 階層に応じた育成体系を構築し研修や施策を実行
  • キヤノン(株)および国内グループ会社 技術者向け研修:273講座、6,638人受講(→P58)
  • ソフトウエア技術者を育成する研修機関「CIST(Canon Institute of Software Technology)」では、製品のソフトウエア開発を担当する技術者のスキルアップから、新入社員や職種転換をめざす社員の基礎教育を実施(→P58)
キャリア支援施策の実施 キヤノン(株):社内公募制度(キャリアマッチング制度)の異動者304人(→P59)
社会文化支援活動
1 貧困をなくそう
2 飢餓をゼロに
3 すべての人に健康と福祉を
4 質の高い教育をみんなに
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
11 住み続けられるまちづくりを
15 陸の豊かさも守ろう
16 平和と公正を全ての人に
17 パートナーシップで目標を達成しよう
重要 よき企業市民として、よりよい社会の実現に貢献 キヤノンのもつ「高度な技術力」「グローバルな事業展開」「専門性のある多様な人材」を有効に活用し、国際社会と地域社会のなかで社会文化支援活動を推進
  • 青少年の創造性と表現力を育む「Canon Young People Programme」を国連の2つのイベントで紹介(→P62)
  • アフリカ地域において技術力向上と雇用創出をめざす「Miraisha Programme」参加者:約300人(→P61)
  • インドにおける多角的な支援「4Eʼs Project」参加者 20,081人(→P63)
  • 日本古来の文化財を未来に継承する「綴プロジェクト」の企画展来場者数:約4万人(→P64)
  • ※  スコープ1:直接排出(都市ガス、LPG、軽油、灯油、非エネルギー系温室効果ガスなど)、スコープ2:間接排出(電気、蒸気など)、スコープ3:サプライチェーンでの排出(購入した物品・サービス、輸送・流通、販売した製品の使用)
環境・社会分野における重点課題 (P11-12) (1.2MB)