社会文化支援活動
取り組み

主な取り組み

アフリカ地域において技術力向上と雇用創出をめざす「Miraisha Programme」

アフリカでは、若者の失業率が深刻な問題となっています。また、写真・映像の撮影や印刷需要が高まる一方、そのスキルが国際水準に達しておらず、ビジネスの大半を外国企業が担っているという現状があります。こうした状況を受け、キヤノンヨーロッパは、写真・映像撮影や印刷産業におけるアフリカ地域の若者の技術力を向上させ、雇用拡大をめざす「Miraisha Programme」を進めています。「Miraisha」とは、日本語の「未来」とスワヒリ語の「マイシャ(生活)」を組み合わせた造語です。これまでケニア、ガーナ、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、ウガンダ、カメルーン、コートジボワールなどにおいて、地元政府機関や教育団体、イベント主催者、キヤノンアンバサダーに選ばれたプロの写真家、トレーナーと協業し、写真・映像撮影や印刷分野のワークショップを実施。

2023年は300人が参加し、累計でのべ7,000人がトレーニングを受けました。また、地元の写真家や映像制作者をキヤノン認定のMiraishaトレーナーとして育成する指導者養成プログラムも実施しています。2023年までに25人がMiraishaトレーナーとしてアフリカ全土で働いており、そのうち3人がキヤノングループの社員として採用されています。

ケニアで「Miraisha Programme」の映像ワークショップを受ける生徒たち
ケニアで「Miraisha Programme」の映像ワークショップを受ける生徒たち

青少年の創造性と表現力を育む「Canon Young People Programme」

キヤノンヨーロッパでは、欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域において、各国の現地NGOとの協業で地域コミュニティに働きかけ、恵まれない環境にある若者を対象とした「Canon Young People Programme(YPP)」を実施しています。この活動は、持続可能なよりよい未来に向けて、SDGsに沿った創造的なビジュアル・ストーリーテリング(視覚的に物語を伝えること)とクリティカル・シンキング(ものごとの本質を見極め判断すること)を取り入れた写真・映像撮影を通じ、若者たちに創造的な表現の機会を提供することを目的としています。

2023年には、31カ国以上でワークショップが開催され、1,300人以上の若者が参加しました。また、カタールで開催された「第五回 国連後発開発途上国会議(LDC5)」やイタリアで開催された「国連SDGsアクションアワード」など、世界的なイベントでも紹介されました。

カタールで開催されたLDC5でのYPPワークショップに参加した国連若手代表団
カタールで開催されたLDC5でのYPPワークショップに参加した国連若手代表団

ステークホルダーの声

SDGsがもたらすインパクト(環境、社会への好影響)を世界中で関心を寄せる人々に対して効果的に伝えるためには、心を揺り動かすストーリーが鍵になります。2023年、YPPと国連SDGアクションキャンペーンは、ドーハ(カタール)での後発開発途上国会議およびローマ(イタリア)でのSDGsアクションアワードにおいて協力を行いました。そこで両者は、市民社会と若年層がSDGsへの取り組みを表現し、コミュニティの経験を伝えられるよう、適切な指導と支援、活動に不可欠な写真機材を提供しました。私たちはこの実りあるパートナーシップが続くことを期待しています。世界中のパートナーがSDGsのインパクトを伝えるとき、一枚の写真は、千の言葉よりも実に雄弁であるからです。

マリーナ・ポンティ氏 国連SDGアクションキャンペーン グローバルディレクター
マリーナ・ポンティ氏
国連SDGアクションキャンペーン
グローバルディレクター

隆起印刷技術を活用したインクルーシブな取り組み

キヤノンプロダクションプリンティングは、UV硬化型インクを積層させる独自の隆起印刷技術をもっています。この技術によって、フェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」を油彩の凹凸や光沢を含めて再現し、マウリッツハイス美術館(オランダ)に触って分かる絵画として提供しています。

2024年、写真家の田頭真理子氏とホワイトハンドコーラスNIPPON芸術監督コロンえりか氏による「第九のきせき」シリーズの最新作「FUGA」を制作しました。この作品は、ベートーベンの「第九」第4楽章フーガ部分を手歌で視覚化したものです。手の動きの軌跡を隆起印刷で表現することで、視覚に障がいがある人もない人も、インクルーシブに写真鑑賞ができる作品に仕上がりました。

隆起印刷技術を活用した作品「FUGA」の制作風景
隆起印刷技術を活用した作品「FUGA」の制作風景

地球環境保護の重要性を伝える教育・研究プログラム「Eyes on Yellowstone」

キヤノンUSAは、世界的に有名な米国のイエローストーン国立公園の公式パートナーとして活動する非営利団体Yellowstone Foreverに製品と資金を提供し、絶滅危機に瀕した野生動物の保護のための調査活動を支援しています。

特に、教育・研究プログラム「Eyes on Yellowstone」では、キヤノンの映像機器を使用して生態観察を行い、自然環境や絶滅危惧種の保護に努めています。デジタル化された映像ライブラリーは、同団体のWebサイトで配信され、世界中の数百万人に及ぶ人々の教材として地球環境に関する知識や保護の重要性を認識するために役立てられています。

2023年には、屋外4Kリモートカメラを設置し、世界的にも有名な間欠泉オールド・フェイスフルのライブストリーミングを配信しています。

屋外4Kリモートカメラによる間欠泉の撮影
屋外4Kリモートカメラによる間欠泉の撮影

インドにおける多角的な支援「4Eʼs Project」

キヤノンインディアは、NGO「Humana People to People India」と連携し、オフィス近隣の貧しい村を対象に「アイケア(Eye Care)」「教育(Education)」「環境(Environment)」「自立支援(Empowerment)」の側面からさまざまな支援を行う「4E’s Project」を実施しています。

特に、アイケア分野は、キヤノンが重点事業戦略の一つに掲げ、強化・拡大を図るメディカルグループの技術を生かし、視覚障がい者を救済する眼科医療の充実に努めています。インドの視覚障がいの多数を占める白内障はその8割が予防や治療が可能といわれているにもかかわらず、医療のインフラが十分に整っていないため適切な検査や治療を受けられないという課題があります。そこで、対象となる村に「ビジョンセンター」を開設し、キヤノンの眼科機器を使用した検診を提供しています。

2023年は4,089人が訪れ、うち764人に無償で眼鏡を提供したほか、156人がさらなる診療のために病院で受診しました。また、4E’s Project全体としては、20,081人が参加しました。

インドでのアイケアプロジェクト
インドでのアイケアプロジェクト

アジアの教育支援

キヤノンでは、アジア各地で次世代を担う子どもたちの教育支援を行っています。

中国では、子どもたちの学ぶ権利を尊重し、就学機会を提供するための「キヤノン希望小学校」をこれまでに11校設立し、教育環境の改善に取り組んでいます。

ベトナムでは、子どもたちの学習環境向上のため、校舎の建設や机や椅子の提供、学用品の寄贈などを行う「Canon Friendship School Chain Project」を2007年より継続して行っています。2023年は、ベトナム東北部の山岳地帯にある貧困地域に51校目となる学校を開校しました。

またタイでも、貧困地域の児童たちが質の高い教育を快適に受けられるよう、社員が学校を訪問し、施設の修繕、生徒のID撮影・印刷、社員からの寄付で集まった本やおもちゃを寄贈するなど、教育支援のボランティア活動を継続的に実施しています。

このほかの地域でもマッチングギフト制度を通じた寄付活動を行っています。キヤノン(株)では、日本全国のキヤノンの従業員から、不要になった図書やCD、DVDなどを集めて行う社内バザー「チャリティブックフェア」を1997年より開催しています。収益金はマッチングギフト制度により会社から同額の寄付金を上乗せした上で、タイやラオス、カンボジアなどのアジア地域の教育・医療を支援する団体に寄付します。

ベトナムで開校した学校での学用品の寄贈
ベトナムで開校した学校での学用品の寄贈

東北復興支援活動

キヤノンマーケティングジャパンは、仙台エリアにおいて東北復興・創生推進室が活動しています。東日本大震災が発生した翌年の2012年に発足したこの組織は、時間とともに変化する被災地の多様な課題を把握し、復興に向けたコミュニケーションの促進や信頼関係の醸成、地域課題の解決に取り組んでいます。

2023年は被災地で写真教室を開催し、242人が参加しました。

日本古来の文化財を未来に継承する「綴プロジェクト」

キヤノン(株)は、2007年から特定非営利活動法人京都文化協会とともに文化財未来継承プロジェクト、通称「綴プロジェクト」を実施しています。

日本古来の貴重な文化財には、歴史のなかで海外に渡ったものや国宝として大切に保管されているものなど、鑑賞の機会が限られている作品がたくさんあります。綴プロジェクトでは、キヤノンのイメージング技術と京都伝統工芸の匠の技によって、オリジナルの文化財に限りなく近い高精細複製品を制作しています。制作された複製品は、寄贈先での一般公開や学校教育の現場など、さまざまな場面で活用されています。

そのほか、2023年は綴プロジェクトで制作した高精細複製品を一堂に展示する企画展を各地で開催し、合計で約4万人が来場しました。福島市写真美術館では国宝5作品を展示し、作品の世界観を映像で投影するプロジェクションマッピングも行いました。品川・キヤノンギャラリーSでは人気作品を中心に日本美術の多様な美しさを伝える企画展を開催。また、京都最古の禅寺である建仁寺では、スミソニアン国立アジア美術館所蔵の名品19点の高精細複製品を展示し、寺院空間での特別な鑑賞体験を提供しました。いずれの会場でもガラスケースに遮られることなく、じっくりと鑑賞することができ、複製品ならではの鑑賞方法で日本の文化財に親しむ機会を創出しました。

綴プロジェクト

作品鑑賞ツアーの様子(福島市写真美術館での企画展より)
作品鑑賞ツアーの様子(福島市写真美術館での企画展より)

「綴プロジェクト」 の高精細複製品が可能にした日本美術の特別な鑑賞体験

スミソニアン国立アジア美術館の開館100周年を記念した特別展では、門外不出とされる当館の日本美術コレクションのなかから選りすぐりの名品19点の高精細複製品が一堂に会しました。これらの名品を一挙に公開するという本展覧会のコンセプトは、オリジナル作品を限りなく忠実に再現した高精細複製品だからこそ実現できた、他にはない展覧会となりました。京都最古の禅寺である建仁寺で、ガラスケースに遮られず自然光のなかで、歴史ある空間に作品を展示するという点もオリジナル作品では不可能なことです。これにより来場者や専門家の方々は、作品が制作された時代にタイムスリップし、当時を彷彿とさせる環境のなかで作品を鑑賞するユニークな体験ができました。世界中の人々に当館のコレクションを届け、特別な鑑賞体験をもたらす本プロジェクトに、今後も協力していきたいと考えています。

フランク・フェルテンズ氏 スミソニアン国立アジア美術館 日本美術主任研究員
フランク・フェルテンズ氏
スミソニアン国立アジア美術館
日本美術主任研究員
俵屋宗達筆「雲龍図屏風」の高精細複製品(建仁寺での企画展より)
俵屋宗達筆「雲龍図屏風」の高精細複製品(建仁寺での企画展より)

ラグビーを通した社会への貢献

キヤノン(株)は、ラグビーというスポーツを通してスポーツファンや地域のみなさまに「感動」をつくり出し共有することをめざし、ジャパンラグビーリーグワンに所属する横浜キヤノンイーグルスを運営しています。

社会貢献活動として、全国の小中学生および高校生を対象に、イーグルスの現役選手・スタッフによるキャリア教育授業やタグラグビー教室を実施しており、ラグビーを通してチームプレーの大切さや体を動かす楽しさなどを体験してもらうことで、子どもたちの健やかな成長に貢献できるよう努めています。

2023年は小学校25校でキャリア教育授業とタグラグビー教室を開催し、生徒1,882人が参加したほか、チームの練習拠点であるキヤノンスポーツパーク(東京都)にて、地域のラグビースクールを招待し「ミニラグビー交流大会 イーグルスカップ2023」を開催しました。

企業スポーツ

ミニラグビー交流大会 イーグルスカップ2023
ミニラグビー交流大会 イーグルスカップ2023

「キヤノン財団」を通じた人類の持続的発展に貢献する研究助成活動

キヤノン財団は、科学技術の発展への貢献を目的に2008年に設立され、キヤノンの事業活動にとらわれることなく、幅広い分野で科学技術研究を助成しています。

社会の新しい価値をつくり出すことをめざし、先端の科学技術に挑戦する研究を支援するというコンセプトのもと、「善き未来をひらく科学技術」「新産業を生む科学技術」という2つの研究助成プログラムを実施しています。

これまで14期15年間で221件、約40億円の研究助成を行ってきました。1件平均は約1,800万円と比較的高額な研究助成を萌芽期の研究や、まだ実績の多くない若手研究者などに行い、特徴のある研究助成財団として日本全国の大学や研究機関に認知されています。

キヤノン財団 Webサイト

第14回 研究助成金贈呈式の様子
第14回 研究助成金贈呈式の様子

人類が直面する課題解決への貢献をめざす「キヤノングローバル戦略研究所」

キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は、キヤノン(株)の創立70周年を記念して、2008年に一般財団法人として設立された非営利の民間シンクタンクです。

CIGSは、世界において日本がどうあるべきかという視点から現状を分析し、「グローバルエコノミー」「外交・安全保障」「エネルギー・環境」など多岐にわたる分野において戦略的な提言を発信することを目的に、産学官各界の多様な研究者によってグローバルな活動と知識の交流を図っています。また、オンラインを活用したイベントや研究会活動などを通じ、積極的な情報発信と政策提言を行っています。

キヤノングローバル戦略研究所 Webサイト

日仏の専門家によるEU・日本の経済動向に関するワークショップ
日仏の専門家によるEU・日本の経済動向に関するワークショップ

その他の主な社会文化支援活動

人道・災害支援

寄付

2023年2月、トルコ南東部で発生した地震による被害への支援のために日本赤十字社やトルコ赤新月社などの団体へ、10万ユーロ(約1,400万円)を寄付するとともに、被災された方々の医療支援のために、医療機器を無償提供しました。

また、2024年1月に発生した能登半島地震の被災地支援のため、日本赤十字社を通して義援金3,000万円を寄付しました。

  • ※UNHCRの日本の公式支援窓口である国連UNHCR協会を通じての寄付
トルコの医療支援に活用されている6台の超音波診断装置
トルコの医療支援に活用されている6台の超音波診断装置

国連の支援活動への協力

国連UNHCR協会※1主催、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所協力にて開催した「難民映画祭」に協賛しました。また、国連WFP協会※2の支援活動への協力も行っています。

  • ※1 UNHCRの日本の公式支援窓口
  • ※2 WFP国連世界食糧計画の日本の公式支援窓口

地域社会活動

American Cancer Society

キヤノンUSAがスポンサーするアメリカがん協会(ACS)のACS乳がん撲滅チャリティーウォーク(Making Strides Against Breast Cancer Walk)は、2023年で25周年を迎えました。集められた資金は、アメリカがん協会に寄付され、乳がん研究、教育、患者サービスなど多くの活動のために使われます。

キヤノンUSA (WALKING FOR AMERICAN CANCER SOCIETY)

食料寄付活動

下丸子本社をはじめ、宇都宮事業所やキヤノンUSA、キヤノンカナダなどで、必要としている団体に食料を寄付するフードドライブおよびフードバンクの活動を実施しています。

社員からの寄付で集まった食料
社員からの寄付で集まった食料

教育・学術支援

ジュニアフォトグラファーズ

自然をテーマとした写真撮影会を通じて、子どもたちの環境に対する意識を高め、豊かな感性を育むことを目的としたプロジェクト。2023年は19カ所で写真教室を開催し、586人が参加しました。

ジュニアフォトグラファーズ

ジュニアフォトグラファーズでの撮影会の様子
ジュニアフォトグラファーズでの撮影会の様子

インターンシップ受け入れ

学生へのキャリア形成支援を目的としたプログラムなど、各種インターンシップを各グループ会社で実施。キヤノン(株)では、2023年は事務系・技術系・高専で合計1,710人を受け入れました。

芸術・文化・スポーツ支援

写真新世紀

1991年の発足から30年にわたり推進してきた、新人写真家の発掘・育成・支援を目的とした文化支援プロジェクト。2021年を最後に、公募を終了しましたが、2023年は30年の軌跡をまとめた「写真新世紀30周年記念本」を出版するとともに、展覧会をせんだいメディアテークで開催しました。

写真新世紀

せんだいメディアテークにて開催された展覧会
せんだいメディアテークにて開催された展覧会