社会文化支援活動
取り組み
主な取り組み
アフリカ地域において技術力向上と雇用創出をめざす「Miraisha Programme」
アフリカでは、若者の失業率が深刻な問題となっています。また、写真・映像の撮影や印刷需要が高まる一方、そのスキルが国際水準に達しておらず、ビジネスの大半を外国企業が担っているという現状があります。こうした状況を受け、キヤノンセントラルアンドノースアフリカは、写真・映像撮影や印刷産業におけるアフリカ地域の若者の技術力を向上させ、雇用拡大をめざす「Miraisha Programme」を進めています。「Miraisha」とは、日本語の「未来」とスワヒリ語の「マイシャ(生活)」を組み合わせた造語です。
地元政府機関や教育団体、イベント主催者、キヤノンアンバサダーに選ばれたプロの写真家、トレーナーと協業し、写真・映像撮影や印刷分野のワークショップをアフリカ全土の13カ国で実施しています。
2024年には、カメルーン、コンゴ民主共和国、ケニア、モロッコ、ナイジェリアで行われ、600人が参加し、累計でのべ7,600人がトレーニングを受けました。また、地元の写真家や映像制作者をキヤノン認定のMiraishaトレーナーとして育成する指導者養成プログラムも実施しています。2024年までに21人がMiraishaトレーナーとしてアフリカ全土で働いており、そのうち3人がキヤノングループの社員として採用されています。

青少年の創造性と表現力を育む「Canon Young People Programme」
キヤノンヨーロッパでは、欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域において、各国の現地NGOとの協業で地域コミュニティに働きかけ、恵まれない環境にある若者を対象とした「Canon Young People Programme(CYPP)」を実施しています。この活動は、持続可能なよりよい未来に向けて、SDGsに沿った創造的なビジュアル・ストーリーテリング(視覚的にものごとを伝えること)とクリティカル・シンキング(ものごとの本質を見極め判断すること)を紹介し、若者たちに写真・映像表現を学ぶ機会を提供することを目的としています。
2024年には、EMEA地域の32カ国でワークショップを開催。計527日間の創造的なストーリーテリングワークショップを通じて、1,725人以上の若者が自分たちの考えを述べ、ストーリーを語ることができるようサポートしました。ウクライナ・ザポリツィアの防空壕や南アフリカ・ボツワナの野生動物保護区でもワークショップが行われました。

隆起印刷技術を活用したインクルーシブな取り組み
キヤノンヨーロッパは、キヤノンのイメージングとプリンティング技術によって目の不自由な人にも写真体験ができる「World Unseen」のキャンペーンを欧州各地で開催しています。
セバスティアン・サルガド氏など著名な写真家による作品を、キヤノンの技術を活用して、インクの厚みで立体感を表現できるUV硬化型大判フラットベッドプリンターで印刷し、触って味わうことができるようにしています。2024年は欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域にて、27の展覧会を実施しました。さらにドイツで開催された世界最大の国際印刷・メディア産業展「drupa 2024」でもこのキャンペーンを展開し、来場者には隆起印刷した写真サンプルなどを体験してもらいました。2025年も各国で展示会を計画しています。

The World Unseen展示会開催協力者の声
英国王立盲人協会(RNIB)は、キヤノンとパートナーシップを組むことを非常に誇りに思っています。この展示会はインクルージョンへの素晴らしい取り組みです。展示作品は皆が異なる視点をもち、その多様な世界観が私たちの感情にさまざまな形で影響を与えることを教えてくれました。
写真には影響力があり、隆起印刷を使用する創造的な勇気は、私にとって非常に感動的なことです。これは単なるアート展示ではなく、撮影された画像を超えた写真の力を示しています。

英国王立盲人協会
理事長
地球環境保護の重要性を伝える教育・研究プログラム「Eyes on Yellowstone」
キヤノンUSAは、世界的に有名な米国のイエローストーン国立公園の公式パートナーとして活動する非営利団体Yellowstone Foreverに製品と資金を提供し、絶滅危機に瀕した野生動物の保護のための調査活動を支援しています。
特に、教育・研究プログラム「Eyes on Yellowstone」では、キヤノンの映像機器を使用して生態観察を行い、自然環境や絶滅危惧種の保護に努めています。デジタル化された映像ライブラリーは、同団体のWebサイトで配信され、世界中の数百万人に及ぶ人々の教材として地球環境に関する知識や保護の重要性を認識するために役立てられています。
2024年、キヤノンUSAが寄贈した4Kリモートカメラは、オールド・フェイスフル・ガイザー(間欠泉)のライブストリーミングでオオカミの群れをとらえました。

インドにおける多角的な支援「4Eʼs Project」
キヤノンインディアは、NGO「Humana People to People India」と連携し、オフィス近隣の貧しい村を対象に「アイケア(Eye Care)」「教育(Education)」「環境(Environment)」「自立支援(Empowerment)」の側面からさまざまな支援を行う「4E’s Project」を実施しています。
特に、アイケア分野は、キヤノンが重点事業戦略の一つに掲げ、強化・拡大を図るメディカルグループの技術を生かし、視覚障がい者を救済する眼科医療の充実に努めています。インドの視覚障がいの多数を占める白内障はその8割が予防や治療が可能といわれているにもかかわらず、医療のインフラが十分に整っていないため適切な検査や治療を受けられないという課題があります。
そこで、対象となる村に「ビジョンセンター」を開設し、キヤノンの眼科機器を使用した検診を提供しています。2024年は4,448人が訪れ、うち852人に無償で眼鏡を提供したほか、356人がさらなる診療のために病院で受診しました。また、4E’s Project全体としては、26,450人が参加しました。

アジアの教育支援
キヤノンでは、アジア各地で次世代を担う子どもたちの教育支援を行っています。
中国では、子どもたちの学ぶ権利を尊重し、就学機会を提供するための「キヤノン希望小学校」をこれまでに11校設立し、教育環境の改善に取り組んでいます。
ベトナムでは、子どもたちの学習環境向上のため、校舎の建設や机や椅子の提供、学用品の寄贈などを行う「Canon Friendship School Chain Project」を2007年より継続して行っています。2024年は、ベトナム東北部の山岳地帯にある貧困地域に54校目となる学校を開校しました。
またタイでも、貧困地域の児童たちが質の高い教育を快適に受けられるよう、社員が学校を訪問し、施設の修繕、生徒のID写真撮影サービス提供のほか、キヤノン製品や日用品を寄贈するなど、教育支援のボランティア活動を継続的に実施しています。
キヤノン(株)では、従業員が持ち寄ったカメラやレンズを集めて行う社内バザー「チャリティ・グッズ・フェア」を開催しました。収益金はマッチングギフト制度により会社から同額の寄付金を上乗せした上で、タイやラオス、カンボジアなどのアジア地域の教育・医療を支援する団体に寄付しました。

他社と協業し、それぞれの強みを生かした教育支援
キヤノンマーケティングジャパングループは、ぺんてる株式会社と協働で、建て替えや統廃合により取り壊される小学校を対象に、校舎での最後の思い出づくりをサポートする「校舎の思い出プロジェクト」に2014年から取り組んでいます。児童が校舎全体をキャンパスとして絵を描き、その様子を児童がデジタルカメラで撮影したものを大判ポスターにして寄贈しています。両社の強みを生かして児童の思い出づくりを支援し、芸術分野での意識醸成や、地域活性化にも貢献しています。

災害支援活動
キヤノングループは、2024年1月に発生した能登半島地震および同年9月に発生した能登半島大雨災害の復旧支援のために、総額4,000万円を義援金として日本赤十字社を通じて寄付しました。さらに、それぞれの災害において、社員募金を実施し、ジャパンプラットフォームに支援金として寄付しました。また、キヤノンマーケティングジャパンは、仙台の東北復興・創生推進室が、東日本大震災被災地での写真教室を継続して実施しました。
日本古来の文化財を未来に継承する「綴プロジェクト」
キヤノン(株)は、2007年から特定非営利活動法人京都文化協会とともに文化財未来継承プロジェクト、通称「綴(つづり)プロジェクト」を実施しています。
日本古来の貴重な文化財には、歴史のなかで海外に渡ったものや国宝として大切に保管されているものなど、鑑賞の機会が限られている作品がたくさんあります。綴プロジェクトでは、キヤノンのイメージング技術と京都伝統工芸の匠の技によって、オリジナルの文化財に限りなく忠実な高精細複製品を制作しています。制作された複製品は、寄贈先での一般公開や学校教育の現場など、さまざまな場面で活用されています。
2024年はスミソニアン国立アジア美術館の門外不出の名品、池田孤邨 筆「紅葉に流水・山景図屏風」の高精細複製品を作者ゆかりの地である新潟県阿賀野市に寄贈したほか、ボストン美術館所蔵の尾形光琳筆「松島図屏風」の高精細複製品を京都市立芸術大学へ寄贈しました。また、綴プロジェクトで制作した高精細複製品15点を一挙に展示する企画展「一度は見たい 国宝・名宝!?展」を岡山シティミュージアムで開催し、約1万人が来場しました。俵屋宗達、尾形光琳、葛飾北斎、伊藤若冲など名だたる絵師の作品をガラスケース越しではなく間近で鑑賞したり、プロジェクションマッピングにより作品世界を体感したり、複製品ならではの鑑賞方法で日本の文化財に親しむ機会を提供しました。

京都市立芸術大学芸術資料館 加須屋明子館長の声
2023年10月、本学のキャンパスは、京都の玄関口である京都駅近くへ移転しました。新たな「創造の現場」として活発な芸術の拠点をめざしていくスタートの重要なタイミングで、「綴プロジェクト」の高精細複製品「松島図屏風(尾形光琳筆)」をご寄贈いただいたことに、心より感謝いたします。
この高精細複製品は、ボストン美術館に収蔵されている、尾形光琳独自のスタイルが遺憾なく発揮された傑作であり、波頭のダイナミックな表現など高く評価される一方、なかなか日本では実見がかなわない名作としても知られます。このたび、細かな筆致や手作業による金箔など、緻密で完成度の高い複製をご寄贈いただくことにより、芸術を学ぶ学生だけでなく、本学を訪れてくださる方々にとっても、常時身近で複製美術品の魅力に触れることができることは、将来にわたっても意義深い、たいへん価値のあることです。今後ともこのお取り組みの継続を希望します。

京都市立芸術大学
芸術資料館 館長
ラグビーを通した社会への貢献
キヤノン(株)は、ラグビーというスポーツを通してスポーツファンや地域のみなさまに「感動」をつくり出し共有することをめざし、ジャパンラグビーリーグワンに所属する横浜キヤノンイーグルスを運営しています。
社会貢献活動として、全国の小中学生および高校生を対象に、イーグルスの現役選手・スタッフによるキャリア教育授業やタグラグビー教室を実施しており、ラグビーを通してチームプレーの大切さや体を動かす楽しさなどを体験してもらうことで、子どもたちの健やかな成長に貢献できるよう努めています。
2024年は小学校27校でキャリア教育授業とタグラグビー教室を開催し、生徒2,612人が参加したほか、チームの練習拠点であるキヤノンスポーツパーク(東京都)にて、地域のラグビースクールを招待し「ミニラグビー交流大会 イーグルスカップ2024」を開催しました。

「キヤノン財団」を通じた人類の持続的発展に貢献する研究助成活動
キヤノン財団は、科学技術の発展への貢献を目的に2008年に設立され、キヤノンの事業活動にとらわれることなく、幅広い分野で科学技術研究を助成しています。社会の新しい価値をつくり出すことをめざし、先端の科学技術に挑戦する研究を支援するというコンセプトのもと、「善き未来をひらく科学技術」「新産業を生む科学技術」という2つの研究助成プログラムを実施しています。
これまで15期16年間で235件、約43億円の研究助成を行ってきました。1件平均は約1,800万円と比較的高額な研究助成を萌芽期の研究や、まだ実績の多くない若手研究者などに行い、特徴のある研究助成財団として日本全国の大学や研究機関に認知されています。
「善き未来をひらく科学技術」では、未来社会に予見される社会課題を解決するための革新的な科学技術研究を助成します。2024年は、「多肥に依存しない食料生産に向けたイネの栄養素再利用能力の強化」をはじめ計3件が選出されました。
「新産業を生む科学技術」では、世の中でまだ知られていない新しい産業の創出につながる革新的、独創的な科学技術研究を助成します。2024年は、「神経ファイバー移植による脳機能の回復」と「超高感度レーザー分光で拓く次世代の放射性炭素検出技術」など計11件が選出されました。
また2024年は、これまで研究助成を受けた4名の研究者より、日本の農業の今後のあり方などに触れながら、食の未来を守るための先端研究の紹介を一般者向けにオンラインにて開催しました。当日は、10代から60代まで幅広い世代の方々が参加し、多くの質問や感想が寄せられ科学の有用性や面白さを共有しました。

人類が直面する課題解決への貢献をめざす「キヤノングローバル戦略研究所」
キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は、2008年に一般財団法人として設立された非営利の民間シンクタンクです。
グローバリゼーションの時代にあって、世界において日本がどうあるべきかという視点から、現状を分析し、戦略的な提言を発信しています。具体的な研究領域として、「マクロ経済」「エネルギー・環境」「外交・安全保障」を3つの柱としています。
「マクロ経済」の領域においては、広いパースペクティブで、いかに健全な経済成長を図れるかを研究します。また、グローバル経済の担い手にアジア、特に中国が加わるなかで、どのような経済分析手法があるのか、どのような政策策定メカニズムが望ましいのかなどを研究します。
「エネルギー・環境」の領域においては、本質的には経済成長の制約要因となり得るこれらの問題を、いかに成長に転化できるのかという動態的なとらえ方にもとづいて研究します。
「外交・安全保障」の領域においては、我が国が果たす役割を喫緊の課題から長期の対応まで、今後どのように考えるべきかを研究します。
このほか、医療制度や農林業、財政・社会保障、中国経済など、幅広い課題と現状、将来についての政策論議を深めています。CIGSは、こうした活動を通じてグローバルな知識のネットワークを構築し、新たに生みだされるさまざまな萌芽を次の世代にしっかりと引き継いでいきます。

その他の主な社会文化支援活動
人道・災害支援
寄付
2024年1月に発生した能登半島地震と同年9月に発生した能登半島大雨災害の被災地支援のため、日本赤十字社を通して義援金4,000万円を寄付しました。また、4月に発生した台湾地震、9月にアジアで発生した台風、10月に発生したUSAのハリケーンなどに対しても支援を行いました。

国連の支援活動への協力
国連UNHCR協会※1主催、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所協力にて開催した「難民映画祭」に協賛しました。また、国連WFP協会※2の支援活動への協力も行っています。
- ※1 UNHCRの日本の公式支援窓口
- ※2 WFP国連世界食糧計画の日本の公式支援窓口
地域社会活動
乳がん撲滅チャリティーウォーク
キヤノンUSAがスポンサーするAmerican Cancer Society(ACS:アメリカがん協会)のACS乳がん撲滅チャリティーウオークは、2024年で26年目を迎えました。集められた資金は、アメリカがん協会に寄付され、乳がん研究、教育、患者サービスなど多くの活動のために使われています。
キヤノンUSA (WALKING FOR AMERICAN CANCER SOCIETY)

食料寄付活動
下丸子本社をはじめ、国内外のキヤノングループで、必要としている団体に食料を寄付するフードドライブおよびフードバンクの活動を実施しています。
教育・学術支援
ジュニアフォトグラファーズ
自然をテーマとした写真撮影会を通じて、子どもたちの環境に対する意識を高め、豊かな感性を育むことを目的としたプロジェクト。2024年は21カ所で写真教室を開催し、753人が参加しました。また、プロジェクト20周年を記念した展覧会を開催しました。

インターンシップ受け入れ
学生へのキャリア形成支援を目的としたプログラムなど、各種インターンシップを各グループ会社で実施。キヤノン(株)では、2024年は事務系・技術系・高専で合計2,043人を受け入れました。
芸術・文化・スポーツ支援
大分国際車いすマラソン
世界で初めての車いすだけのマラソンの国際大会としてスタートした大分国際車いすマラソン大会に、キヤノン(株)はオフィシャルパートナーとして大会を支援しています。また、多くのグループ社員がボランティアとして大会運営に協力しています。
