労働安全衛生と健康経営
取り組み

労働安全衛生

労働災害の防止

2023年は、キヤノン(株)および国内グループ会社では、機械装置起因の挟まれ・巻き込まれによる災害が1件発生しました。有害性の高い化学物質起因の休業災害は発生していません。労働災害が発生した場合には真因究明を実施し、職場担当者への再教育や装置の操作性改善を行うなど、教育と設備の両面で再発防止策を講じています。さらに発生拠点内で同様のリスクがないかリスクアセスメントを含めた安全総点検を実施しています。また、災害の情報は速やかに生産拠点を中心としたグループ会社に共有し、類似災害の再発防止を図っています。

キヤノングループ労働安全衛生マネジメントシステムの効果的な運用の推進

キヤノンは、各拠点での自律的な安全衛生活動の推進をめざし、中央労働災害防止協会方式の労働安全衛生マネジメントシステムの要求事項をもとに、キヤノン(株)の基準やルールなどを確認項目に反映した「キヤノングループ労働安全衛生マネジメントシステム」を各国・地域で展開しています。さらに拠点間の相互監査を行うことで、さまざまな問題対応策や好事例の水平展開を図っています。

また、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるOHSAS18001から、新たな国際規格であるISO45001への移行を進め、2023年末時点ではキヤノン(株)および国内外グループ製造会社のうち、約31%がISO45001認証を取得しています。

ISO45001認証取得状況(478KB)

リスクアセスメントの深化と効果的な活用

キヤノンでは、すべての作業と機械装置を対象に、グループ共通の管理基準によるリスクアセスメントを実施しています。事故や疾病のリスクが高い作業を漏れなく洗い出し、適切なリスク低減措置や残留リスクの管理を行っています。なかでも機械装置起因の事故を重大なリスクととらえ、既存事業における年に1回以上の定期的な見直しを行っています。また、新規事業においては研究開発段階からリスクの特定・評価を行い、その評価結果にもとづく安全対策を実施しています。

グループ共通の管理基準によるリスクアセスメント実施に向けて、アセスメント手法の理解を深めるための教育や、職場管理者および作業責任者などを対象としたeラーニングを行っています。また、リスクが特定された場合には関係するすべての作業者に対し、リスクの通知と教育を実施し、作業内容の理解・習得度を確認しています。

啓発・教育の充実による安全衛生意識の向上

キヤノンは、労働災害が発生した場合、国内全拠点および海外生産拠点に直ちに情報を配信し、原因と対策をイントラネットにて公開することで、類似災害発生の未然防止を図っています。

また、労働災害撲滅に向けて、リスクアセスメントを実施する職場の全管理職に対して研修を行うとともに、リスクアセスメントに携わる従業員を対象として、アセスメントの目的や手順の理解促進に向けたeラーニングを実施し、2023年までに累計で8,801人が受講しました。

このほか、つねに安全衛生を意識する職場風土の醸成に向けた活動に取り組んでいます。たとえば、キヤノン(株)および国内グループ会社では、安全衛生教育の実施、オリジナルの啓発ポスターやリーフレットの掲示・配布などにより、作業時の基本的な安全行動の確認・励行の啓発を行っています。

海外においても、日本と同レベルの労働安全衛生管理体制の構築をめざし、主に生産拠点を中心に活動を展開しています。たとえば、各拠点の従業員が母国語で理解できるように、キヤノン(株)が日本語・英語・中国語・ベトナム語で作成した作業手順書や安全衛生教育用教材、ポスターやリーフレットなどを海外各拠点の実情にあわせて有効に活用しています。たとえば、キヤノンベトナムでは、危険を疑似体験して安全の重要性を実感できる体感型教育施設「安全体感道場」や、リスクアセスメント活動、気づき提案制度などを通じて、従業員の安全衛生意識を高め、危険の芽を事前に摘み取る活動を精力的に展開しています。

健康経営

メンタルヘルス対策

キヤノンでは、国内グループ会社でのメンタルヘルス対策として、4つのケア(セルフケア、管理職によるケア、産業保健スタッフによるケア、外部機関によるケア)と一次~三次予防を組み合わせた各種プログラムを展開しています。具体的には、休復職を含む不調者支援プログラムの整備、人事や健康支援担当者の能力向上研修などを実施しています。

キヤノン(株)のストレスチェック受検率は高い水準を維持しており、2023年は95.4%となりました。高ストレス者に対しては産業医面接に加え健康相談などの個別支援を行っています。あわせて、集団分析の結果を上司にフィードバックするほか、各本部の健康状態を表した「健康レポート」の配信や職場との懇談会を実施しています。また、職場の支援力を向上させるため、管理職に向け、メンタルヘルスeラーニングを実施し、受講対象者の9割以上が受講しました。

生活習慣病予防

従業員のデータ分析をもとに施策の重点項目や優先順位を決定しています。健診データ分析から、メタボリックシンドロームの発症要因として短時間睡眠、喫煙、早食いなどの影響が明らかになり、それらを施策の重点項目としています。特に睡眠については、啓発活動に加えて睡眠計を用いた個別指導を実施し、睡眠の改善だけでなく、健診結果やプレゼンティーイズムの改善にもつなげています。また、キヤノン(株)と国内グループ会社では敷地内禁煙を実施しており、禁煙セミナーやオンライン禁煙プログラムなどの施策を継続しています。健康診断については、キヤノン(株)および国内グループ会社のすべての従業員へ年に1回の定期健康診断を実施し、統一した数値基準や措置基準のもと個別フォローや教育を行うなど重症化予防を徹底しています。

また、特定保健指導の該当者には健康保険組合と連携し専門会社による保健指導を実施した結果、メタボリックシンドローム該当者、特定保健指導対象者ともに減少傾向となっています。また、がん対策では、キヤノン健康保険組合のがん検診制度の活用や、疾病を抱えながら働く人への治療と仕事の両立支援にも力を入れています。

ヘルスリテラシーの向上

キヤノン(株)および国内グループ会社では、「睡眠」「栄養」「運動」をテーマとしたキャンペーン活動のほか、定期情報配信による啓発活動、ICTツールによる健康行動目標管理や社内イベントなどを通して、自律した健康管理を推進しています。

運動キャンペーンとしてセミナーの定期開催やICTツールを活用したウォーキング大会を継続的に実施しました。また、階層別・年代別などのeラーニングを実施、各年代や女性特有の健康課題、自己管理のポイントを学習する機会を設けています。さらに、キヤノン健康保険組合の「キヤノン・ヘルスコール」では、国内に限らず海外赴任者およびその家族も含めてさまざまな相談に24時間電話対応できる体制を整えています。

海外グループ会社においても、国内同様の健康支援を実施し、各地域の特性に応じた独自の取り組みを実施しています。キヤノンUSA、キヤノン中国などにおいては、健康診断に関する産業医セミナーの開催や各種健康に関する啓発活動を行っています。

感染症対策

キヤノン(株)では、新型コロナウイルス感染症に対して、感染予防、相談体制、ハイリスク者対応、情報提供を軸に対策を行ってきました。また、4回の新型コロナワクチン職域接種に加え、インフルエンザ予防接種も毎年行っています。その他、海外への出張者および出向者に対し、渡航前にHIV、マラリアを含む感染症について、厚生労働省検疫所の感染症情報を参考に教育を行っています。さらに、厚生労働省検疫所および外務省の情報にもとづき、渡航先の国や地域に応じた各種予防接種を会社負担で推奨しています。

請負労働者に対する健康教育

日本では、全国的に屋内外作業場における熱中症の発症率が高まっていることから、請負労働者に対する熱中症予防教育を継続するとともに、作業環境面での予防対策も実施しています。

社外からの評価

キヤノン(株)は、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「健康経営銘柄」に2019年から2023年まで5年連続で選定されるとともに、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人(大規模法人部門(ホワイト500))」に7年連続で選定されました。創業当時より掲げている「健康第一主義」にもとづき、長きにわたる先進的な健康支援の取り組みを続けていることが評価されました。

健康経営銘柄 / 健康経営優良法人