瓶に入った黒色反射防止塗料の俯瞰図

光を“取り込む”技術で、センシングの未来を支える

黒色反射防止塗料

光学機器やセンサーの性能を左右する要因の一つが、不要な光の反射をどれだけ抑えられるかです。キヤノンは、長年培ってきた光学技術と材料技術を融合し、光を効率よく取り込み反射を抑える独自の黒色反射防止塗料を開発しました。そのしくみや特長、活用が期待される分野について紹介します。

目次

黒色反射防止塗料とは

光には、物体に当たると反射するという性質があります。例えばカメラは、レンズを通った光をセンサーで受け取りますが、太陽光などがレンズの内部や周辺部材で反射すると、不要な光(迷光)がセンサーに入り込み、画像に悪影響を及ぼすことがあります。
こうした反射を抑える方法には、黒い色を使って光を吸収する方法と、光を構造の内部に取り込み、外へ戻りにくくする方法があります。一般的な黒色反射防止塗料は、主に光の吸収によって反射を抑えますが、光を効率よく取り込む構造を塗料の膜に形成することが難しく、特に斜めから入る光への対応に課題があります。
このため、カメラなどの光学機器では、黒色塗料の黒さによる吸収に加え、部材表面に凹凸加工を施すなどして、さまざまな方向から入る光の反射を抑える方法が用いられています。


塗料によるフレア抑制の説明図
レンズ内面の部材の反射を抑えることで、画像が白っぽく霞んでしまう「フレア」を抑制できる

キヤノンの黒色反射防止塗料の強み

最大の強みは、キヤノンが長年培ってきた光学技術と材料技術を融合し、光を効率よく取り込む構造を設計するとともに、その構造を塗装によって形成できるようにした点です。この塗料を物体に塗布すると、独自の機能性粒子(フィラー)が立体構造を形成し、斜めから入る光まで効率よく取り込み、吸収して反射を抑制します。
また、塗装するだけで効果を発揮するため、複雑な形状の物体や、金属、ガラス、プラスチックなど、幅広い材料に適合します。同様の構造を加工で形成する場合に比べ、特殊な機材や高価な材料を必要としないことから、コスト面でのメリットも期待できます。こうした特長により、性能と生産性の両立が求められる幅広い分野で活用されることが見込まれています。

塗料による反射防止イメージの図解
塗装により独自の機能性粒子(フィラー)が立体構造を形成する

活用が期待される事例

キヤノンの黒色反射防止塗料は、カメラやセンサー、光で材料の性質を調べる分析装置など、光を利用するさまざまな機器において迷光を低減し、安定した認識や測定に寄与します。活用が期待される分野の一つが、自動車のADAS(先進運転支援システム)です。車載カメラやLiDAR※などの光学センサーは、強い西日や反射光の影響で誤検知が発生することがあります。そのため、黒色反射防止塗料をセンサー周辺の部材に塗布することで迷光を抑え、誤検知の低減が期待されます。 また、フロントガラス上に情報を投影するヘッドアップディスプレイの投影装置に塗布することで、内部で発生する迷光を低減し、ディスプレイに表示される文字の視認性の向上が見込まれています。
このほか、工場の自動化設備で使われる光学センサーやプロジェクターなど、光を利用する機器全般への応用も期待されています。迷光を減らすことで測定誤差や誤検知を抑制し、高精度なセンシングや安全性の向上に貢献できます。
キヤノンは、次世代のセンシング社会を支える材料としてこの黒色反射防止塗料の実用化を進めています。

  • ※ レーザー光を照射し、反射して戻ってくるまでの時間を測定して対象物までの距離を計測するシステム
黒色反射防止塗料の活用が期待される車載センシングのイメージ図
黒色反射防止塗料の活用が期待される車載センシング(イメージ)