「目的に忠実な画像映像を撮る技術」とは
「目的に忠実な画像映像を撮る技術」とは、私たちの目でとらえることができる可視光に加え、とらえることのできない、電子線、X線や、近赤外光、テラヘルツ波、超音波、ラジオ波などの広範囲にわたる波長をとらえる、キヤノンのイメージング分野の基盤となる技術です。キヤノンの製品では多様な波長が使われています。CT装置ではX線、カメラやプリンター、オフィス向け複合機では可視光、超音波診断装置では超音波、MRIではラジオ波など、それぞれの波の特長を生かし、それらの波をとらえることで、「目的に忠実な画像映像を撮る」を実現しています。
「世界一のカメラをつくりたい」という創業の想いから生まれたカメラのセンサーや光学にかかわる技術を出発点に、ミクロからマクロの世界まで、「撮る」技術を蓄積してきました。ノイズが少ないという強みが評価され、他社との協業も広がっています。

キヤノンの「目的に忠実な画像映像を撮る技術」の強み
キヤノンの「撮る技術」の強みは、圧倒的に低ノイズで「目的に忠実な画像映像を撮る」ことができる点です。独自の「センサー技術」で多様な光の波をとらえ、カメラメーカーとして培ってきた「光学技術」、ナノメートルレベルの形状・駆動精度を実現する独自の「精密機構技術」で高速・正確につたえ、「画像処理技術」でクリアにデジタル化。これらの高レベルな技術を複合的に組み合わせることで、高速で移動するものや微細で見えないもの、さらには暗闇などでも低ノイズに、かつ医療機器は低被ばくで、高速に「撮る」ことができます。これまで広範囲にわたる波長を対象に「撮る」技術を磨いてきたため、膨大な画像データを蓄積していることもキヤノンの強み。マスデータがAIを活用した精度の高い画像処理を可能にし、さらなるノイズ低減を実現しています。

活用事例:
日本電子株式会社 電子顕微鏡
世界最高レベルの理科学・計測機器を誇る日本電子株式会社の電子顕微鏡にセンサー技術が採用されるなど、他社との協業でも活用されています。
透過型電子顕微鏡は、試料※1に電子線を当て、透過した電子をセンサーで読み出し、映像化しています。電子線の照射時間が長いと試料を破壊してしまうため、読み出しの時間の長いCCDセンサーから高速で読み出し可能なCMOSセンサーへの置き換えが期待されています※2。他方、ゆっくり動かしてもミクロの世界では高速で移動するため、ローリングシャッター方式※3のCMOSセンサーでは映像が歪むことが課題でした。壊れやすい試料に対しては電子線量を抑える必要がありますが、取得する映像は低ノイズであることも求められます。
キヤノンのグローバルシャッター方式※3のCMOSセンサーは、高速で移動するものを歪みなく、圧倒的に低ノイズで「撮る」ことができるため、日本電子株式会社との共同開発がスタート。ミクロの世界を歪みなく、高精細で滑らかに映し出す電子顕微鏡用CMOSセンサーの開発に成功しました。
- ※1 実験や分析の対象となる物質
- ※2 CCDセンサーは、感じた光を電子に変換後、画素から画素へバケツリレーのように電子を転送し、最後にまとめて電気信号を読み出す方式。一方、CMOSセンサーは、各画素にスイッチのオン・オフ機能を備え、画素ごとに増幅した電気信号を直接読み出す方式。
- ※3 ローリングシャッター方式のCMOSセンサーは、光を順に取り込んで画像を生成する。一方、グローバルシャッター方式のCMOSセンサーは、光を同時に取り込んで画像を生成する。
活用事例:
東京大学木曽観測所 天体観測システム「トモエゴゼン」
キヤノンの「撮る技術」の活用は、宇宙にまでおよびます。静止画撮影という天体撮影の常識を覆し、動画撮影を実現した東京大学木曽観測所の天体観測システム「トモエゴゼン」にも、この粋を集めたCMOSセンサーが搭載されています。
これまで主流だったCCDセンサーは、読み出しが遅く動画撮影に不向きなうえ、高感度な画像を得るためには、真空冷却装置を設置して熱によるノイズを抑える必要がありました。キヤノンの超高感度CMOSセンサーは、高感度、高画質、かつ熱によるノイズが低いという特長があります。3000万画素クラスのデジタルカメラ用フルサイズ※4センサーと比べ、画素の面積が10倍以上であるため、天体の光を効率よくとらえることができます。さらに、画素が大型化すると増える傾向にあるノイズを低減する技術を用いているため、冷却装置を必要とせず、小型化にも成功。このCMOSセンサーを84個並べた「トモエゴゼン」は、移動する物体の検出を可能にし、超新星の発見や地球接近小惑星の発見などの実績を上げ、新しい宇宙の姿の解明に貢献しています。
- ※4 デジタルカメラのセンサーサイズ規格の一つで、主に35mmフィルムカメラで使われていた35mmフィルム(24mm×36mm)とほぼ同じサイズのセンサー。センサーサイズが大きく、光(=情報)をたくさん取り込めるため、高画質な写真が撮影可能。プロフォトグラファーが使用するカメラの上位モデルにも多く搭載されている。


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