キヤノンがめざすデザインとは
キヤノンがめざすデザインとは、現場観察や利用環境の調査などの徹底したユーザー理解により、「使う人のためのデザインを追求すること」です。
どんなに性能がよくても、使っていてストレスを感じるのでは、よい製品とは言えません。キヤノンの製品がカメラやプリンターといった一般ユーザー向けから、CT装置や半導体露光装置といった医療・産業などの現場で働くユーザー向けへと広がり、デザインに求められる役割も、製品単体のデザインから、大型機器が使われる現場の作業効率や導線、他の機器との連携なども含めたものへと範囲を拡大しています。領域や役割が変化する中でもキヤノンが変わらずに大切にしていることは、ユーザーへの理解を深め、使いやすさを追求すること。製品が実際に使われている現場に人間工学のエキスパートであるデザイナーが出向き、お客さまに直接話を聞いたり、使用中の様子を観察したりしてデザインに落とし込みます。
また、医療機器の場合は、装置を使う医療従事者に加えて患者さんの心理的、身体的状況を研究してデザインを検討するなど、使いやすさと美しさを融合させたデザインを追求しています。

活用事例:
オフィス向け複合機「imageFORCE」
キヤノンでは年齢や性別、国籍、障がいの有無などにかかわらず、誰もが利用しやすい製品をめざす「ユニバーサルデザイン」の考えのもと、製品をデザインしています。多様な使われ方を想定し、デザインを検討することで、さまざまな改善ポイントに気づきます。
たとえばオフィス向け複合機「imageFORCE」では、上部にあるフィーダーの前面にどこからでも持ち上げやすい形状を採用し、片手がふさがっていたり、腕をケガしたりしている場合でも操作できるような工夫を施しています。また、車いすの方や身体の大きさ、姿勢に関わらず、誰でも操作パネルに手が届き操作しやすいようにデザインしています。キヤノンではお客さまが製品を使う際に起こりうる問題を整理した「ユニバーサルデザインガイド」を制作し、つねにお客さま視点での発想にもとづいた製品開発・デザインに取り組めるよう、社内で運用しています。
活用事例:
マルチポジションCT「Aquilion Rise」
医療機器では、医療従事者の使いやすさに加え、患者さんが安心して検査を受けられるように、患者さんの姿勢や導線、さらには視線まで意識してデザインを検討しています。
「Aquilion Rise」は一般的なCTの使われ方である臥位(横たわった状態)に加え、立位・座位の3つの姿勢での撮影が可能なマルチポジションCTで、従来見えなかった病変が早期に発見できることが期待できます。「Aquilion Rise」は、患者さんが検査室に入ってきた際の視線や、検査を受ける際の心理状態などを研究し、不安や緊張を和らげ、心身の負担を緩和するような丸みを帯びた形状を採用しています。
医療機器や半導体製造装置のような大型製品は、限られたスペースを有効活用できるように空間デザイナーの存在が欠かせません。空間デザイナーが緻密なCG空間を描き、モーションキャプチャーを使ってユーザーの動きを細部まで再現し、検討を重ねることで、使用状況に応じた最適なデザインを実現しています。
