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人権と労働労働安全衛生と健康経営

従業員が安心して働ける職場環境づくりのために、安全の確保と健康支援に取り組んでいます

方針および体制

キヤノンは、安全衛生を企業経営の基盤と位置づけ、「安全なくして経営なし」を安全衛生活動の理念としています。この理念のもと、安全衛生に関する規程類を制定し、労働組合との間で締結している労働協約でも安全衛生について定めるなど、労使一体となり従業員が安心して働ける職場環境づくりのために安全の確保と健康支援に取り組んでいます。

キヤノンでは、安全衛生活動の最上位機関として、キヤノン(株)代表取締役副社長が委員長を務める「中央安全衛生委員会」を設置しています。委員会では中央安全衛生活動方針や計画を策定し、労使で労働災害の撲滅、健康の維持・増進、交通安全、防火・防災、快適な職場づくりなどを推進しています。

キヤノン(株)および国内グループ会社では、各拠点に安全衛生委員会を設置し、中央安全衛生活動方針を踏まえて自拠点の実情にあわせた目標を設定し、請負会社なども含めたすべての労働者が安全に作業できるよう、健全な労働環境の構築に取り組んでいます。また、請負会社との間に安全衛生協議会を設置し、事業所構内の安全衛生の維持・向上に取り組んでいます。

海外においても、生産拠点を中心に各地域やグループ会社ごとの状況を踏まえつつ、グループ一体となって取り組みを進めています。

労働安全衛生

キヤノンは「安全・安心」な職場環境づくりに努め、キヤノン(株)および国内グループ会社では、次の重点目標・項目に取り組みました。

2021年重点目標

  1. 機械装置起因の挟まれ・巻き込まれ災害の撲滅(0件)
  2. 有害性の高い化学物質起因の災害の撲滅(0件)

実施項目

  1. キヤノングループ労働安全衛生マネジメントシステムのさらなる進化
  2. 労働災害撲滅に向けたリスクアセスメントの定着と作業者への浸透
  3. 啓発・教育の充実による安全衛生意識の向上

2021年は、機械装置起因の挟まれ・巻き込まれによる休業災害、および有害性の高い化学物質起因の休業災害は発生していません。労働災害が発生した場合には真因究明を実施し、職場担当者への再教育や装置の操作性改善を行うなど、教育と設備の両面で再発防止策を講じています。さらに発生拠点内で同様のリスクがないかリスクアセスメントを含めた安全総点検を実施しています。また、災害の情報は速やかに生産拠点を中心としたグループ会社に共有し、類似災害の再発防止を図っています。

キヤノングループ労働安全衛生マネジメントシステムのさらなる進化

キヤノンは、各拠点での自律的な安全衛生活動の推進をめざし、中央労働災害防止協会方式の労働安全衛生マネジメントシステムの要求事項をもとに、キヤノン(株)の基準やルールなどを確認項目に反映した「キヤノングループ労働安全衛生マネジメントシステム」を各国・地域の拠点で展開しています。さらに拠点間の相互監査を行うことで、さまざまな問題対応策や好事例の水平展開を図っています。

また、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるOHSAS18001から、新たな国際規格であるISO45001への移行を進め、2021年末時点ではキヤノン(株)および国内外グループ製造会社のうち、約16%がISO45001認証を取得しています。

労働災害撲滅に向けたリスクアセスメントの定着と作業者への浸透

キヤノンでは、幅広く労働災害安全衛生におけるリスクアセスメントを実施し、事故や疾病のリスクが高い作業を漏れなく洗い出し、適切なリスク低減措置や残留リスクの管理を行っています。中でも機械装置起因の事故を重大なリスクと捉え、既存事業における年に1回以上の定期的な見直しを行っています。また、新規事業においては研究開発段階からリスクの特定・評価を行い、その評価結果に基づく安全対策を実施しています。

2019年には新たにグループ共通のリスクアセスメント管理基準を制定しました。安全衛生担当者を対象とした新基準の確実な実施に向けたリスクアセスメント手法の理解を深めるための教育や、職場管理者および作業責任者などを対象としたeラーニングを実施しています。また、リスクが特定された場合には関係するすべての作業者に対し、リスクの通知と教育を実施し、作業内容の理解・習得度を確認しています。

啓発・教育の充実による安全衛生意識の向上

キヤノンは、労働災害が発生した場合、国内全拠点および海外生産拠点に直ちに情報を配信し、原因と対策をイントラサイトにて公開することで、類似災害発生の未然防止を図っています。

また、労働災害撲滅に向けて、リスクアセスメントを実施する職場の全管理職に対して研修を行うとともに、リスクアセスメントに携わる従業員を対象として、アセスメントの目的や手順の理解促進に向けたeラーニングを行い、2021年は3,323人が受講しました。

このほか、常に安全衛生を意識する職場風土の醸成に向けた活動に取り組んでいます。例えば、キヤノン(株)および国内グループ会社では、安全衛生教育の実施やオリジナルの啓発ポスターやリーフレットの掲示・配布などにより、作業時の基本的な安全行動の確認・励行の啓発を行っています。

海外においても、日本と同レベルの労働安全衛生管理体制の構築をめざし、主に生産拠点を中心に活動を展開しています。例えば、各拠点の従業員が母国語で理解できるように、キヤノン(株)が日本語・英語・中国語・ベトナム語で作成した作業手順書や安全衛生教育用教材、ポスターやリーフレットなどを海外各拠点の実情にあわせて有効に活用しています。キヤノンベトナムでは、危険を疑似体験して安全の重要性を実感できる体感型教育施設「安全体感道場」や、リスクアセスメント活動、気づき提案制度などを通じて、社員の安全衛生意識を高め、危険の芽を事前に摘み取る活動を精力的に展開しています。

健康経営

「健康第一主義」の健康支援

キヤノンは、行動指針の一つである「健康第一主義」に基づいた取り組みが、それぞれの能力を最大限に発揮し大きな成果を生み出す原動力であると考え、積極的な健康経営を推進しています。

キヤノン(株)および国内グループ会社では、次の実施項目・重点目標に取り組むことを中央安全衛生委員会で表明しています。コラボヘルスとして、データヘルス計画に基づいた健康保険組合との中長期的な健康施策目標や施策も含まれています。

中央安全衛生委員会 中期計画(2019-2021年)

重点目標

  1. 休職日数減少
  2. プレゼンティーイズム減少
  3. ハイリスク者の減少
  4. メタボ該当者の減少
  5. がん検診受診の定着

実施項目

  1. メンタルヘルス対策
  2. 生活習慣病対策
  3. 全社員への継続的な啓発活動
  4. 新型コロナウイルス感染症対策

メンタルヘルス対策

キヤノンでは、国内グループ会社でのメンタルヘルス対策として、4つのケア(セルフケア、管理職によるケア、産業保健スタッフによるケア、外部機関によるケア)と一次予防~三次予防を組み合わせた各種プログラムを展開しています。特に、休復職を含む不調者支援プログラムの整備、人事や健康支援担当者の能力向上研修などを行い、対応の標準化を図っています。ストレスチェック受検率は2016年の開始以降年々増加しており、2021年は96.6%となりました。高ストレス者に対しては産業医面接に加え健康相談を実施することで、高ストレス者の割合は減少傾向となっています。あわせて集団分析をもとに社内の各部門と連携し、各本部の健康状態を表した「健康レポート」を配信し、職場との懇談会を実施しています。また、職場の支援力を向上するため、管理職に向けたメンタルヘルス研修にも力を入れています。海外赴任者に対しても、国内同様にストレスチェックの実施・フォローを行い、現地の人事担当者と連携してメンタルヘルス対策を行っています。

生活習慣病対策

生活習慣病への対策として、従業員のデータ分析をもとに施策の重点項目や優先順位を決定しています。例えば、10年分の健診データ分析から、メタボリックシンドロームの発症について、短時間睡眠、喫煙、運動習慣などの影響が明らかになり、それらを施策の重点項目としています。特に睡眠については、啓発活動に加えて睡眠計を用いた個別指導を実施し、睡眠の改善だけでなく、健診結果やプレゼンティーイズム(疾病就業)の改善にもつながっています。また、キヤノン(株)と国内グループ会社では敷地内禁煙を実施し、禁煙セミナーやオンライン禁煙プログラムなどの施策を継続することで、喫煙率は2004年の取り組み開始から17年間で17.4ポイント減少し、2021年には15.0%となりました。

健康診断では、キヤノン(株)と国内グループ会社で事後措置基準を統一し、重症化予防を徹底しています。ハイリスク者の受診勧奨と就業上の配慮を徹底し、特定保健指導該当者には健康保険組合と連携し専門会社による保健指導を実施した結果、ハイリスク者、特定保健指導対象者ともに減少傾向となっています。また、がん対策では、キヤノン健康保険組合のがん検診制度の活用や、疾病を抱えながら働く人への治療と仕事の両立支援にも力を入れています。

全従業員への継続的な啓発

キヤノン(株)では、階層別などの継続的な教育や、「睡眠」「栄養」「運動」をテーマとしたキャンペーン活動、イントラネットでの定期情報配信の啓発活動と、ICTツールによる健康行動目標管理や社内イベント実施などを通して、自己健康管理を推進しています。また、キヤノン(株)および国内グループ会社では30~60歳における節目年齢において、各年代や女性特有の健康課題や自己管理のポイントを学習するeラーニングを毎年実施し、2021年には5,328人が受講しました。

2021年は朝食摂取と適正飲酒をテーマとした栄養キャンペーン活動に力を入れ、健康保険組合・労働組合・社内売店・食堂などとのコラボレーション企画を実施しました。さらに、毎年開催しているICTツールを活用したウォーキング大会には過去5年間で最高となる9,372人が参加しました。また、キヤノン健康保険組合の「キヤノン・ヘルスコール」では、国内に限らず海外勤務者も含めてさまざまな相談に24時間電話対応できる体制を整えています。

海外グループ会社においても、各地域の特性に応じた独自の取り組みを実施しています。キヤノンプラチンブリタイランドでは、女性従業員への妊産婦教育や新型コロナウイルスに関する映像教育コンテンツの制作、キヤノンビジネスマシンズフィリピンでは、メンタルヘルスに関する産業医セミナーの開催や各種健康に関する啓発を行っています。

新型コロナウイルス感染症対策

キヤノン(株)では、新型コロナウイルス感染症に対して、「感染防止」「相談体制」「ハイリスク者対応」「情報提供」を軸に対策を行っています。具体的には、ガイドライン・マニュアルの策定や感染防止対策備品の整備、産業医・看護職による健康相談対応や、24時間体制でのヘルスコール相談を実施しています。基礎疾患のある方やメンタル不調者などに対しては、必要な治療の継続、安全な勤務への支援を行っています。また、国内外で定期的な情報発信や産業医によるセミナーなど正しい情報を迅速に提供しています。2021年は職域ワクチン接種をキヤノン(株)および国内グループ会社で迅速に行い、家族や請負会社社員なども含め、約6万人に接種を実施しました。

感染症対策

キヤノン(株)では、感染症予防対策の一環として、海外への出張者および出向者に対し、渡航前にHIV、マラリアを含む感染症について、厚生労働省検疫所の感染症情報を参考に教育を行っています。また、厚生労働省検疫所および外務省の情報に基づき、渡航先の国や地域に応じた各種予防接種を会社負担で推奨しています。

請負労働者に対する健康教育

日本では、全国的に屋内外作業場における熱中症の発症率が高まっていることから、請負労働者に対する熱中症予防教育を継続するとともに、作業環境面での予防対策も実施しています。