事業で培った技術や知識を生かして、地域社会の持続的な発展に貢献します
キヤノンは「キヤノングループ CSR活動方針」のもと、「高度な技術力」「グローバルな事業展開」「専門性のある多様な人材」を生かし、全世界のグループ会社がそれぞれの地域の特性や課題にあわせた活動を展開しています。
グローバル優良企業グループ構想フェーズⅥの主要戦略として競争力強化を図るメディカル事業の技術を活用し、貧困地域での医療提供といった人道支援に精力的に取り組んでいます。また、イメージングやプリンティングの分野では、キヤノンが長年培ってきた光学技術やデジタルプリンティング技術を搭載した製品を活用し、各国・地域で写真撮影・印刷を通した教育・文化支援活動を行っています。
次世代を担う子どもたちに対する取り組みでは、ユニセフが国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンとともに策定した「子どもの権利とビジネス原則」を支持し、子どもの権利の実現に向けた社会貢献活動に取り組んでいます。
さらに、国内外のグループ会社の社会貢献担当者は定期的な情報共有を行うほか、SNSや社内イントラネット、社内報を通じて、グループ内の活動やSDGsへの取り組みなどを社員と共有し、グループ全体の社会貢献活動の活性化を図っています。
キヤノンインディアは、NGO「Humana People to People India」と協働し、オフィス近隣の貧しい村を対象に「アイケア(Eye Care)」「教育(Education)」「環境(Environment)」「自立支援(Empowerment)」の側面からさまざまな支援を行う「4E’sプロジェクト」を実施しています。
特に、アイケア分野は、キヤノンが重点事業戦略の一つに掲げ、強化・拡大を図るメディカルグループの技術を生かし、視覚障がい者を救済する眼科医療の充実に努めています。インドの視覚障がいの多数を占める白内障はその8割が予防や治療が可能といわれているにもかかわらず、医療のインフラが十分に整っていないため適切な検査や治療を受けられないという課題があります。そこで、対象となる村に「ビジョンセンター」を開設し、キヤノンの眼科機器を使用した検診を提供しています。2021年は4,650人が訪れ、うち648人に無償で眼鏡を提供したほか、190人がさらなる診療のために病院で受診しました。
インドでのアイケアプロジェクト
「Canon Young People Programme」に参加する学生たち
キヤノンヨーロッパでは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として、青少年の創造性と表現力の育成を目的とした「Canon Young People Programme(YPP)」を欧州、中東、アフリカ地域において展開しています。このプログラムは、SDGsの考えをもとに現地のNPOと協力しながら、写真・映像撮影を通じて、若者に創造的な表現の機会を提供しています。2015年にプログラムを開始して以来、これまで5,000人以上の若者を支援してきました。2021年は、オンラインでの授業を取り入れながら、イギリス、ロシア、南アフリカ、コンゴ民主共和国、リビア、また初めての開催となったアラブ首長国連邦など、各国・地域でプログラムを実施しました。3月には国連の「SDG Global Festival of Action 2021」に参加してYPPを紹介し、写真や動画が社会課題の解決に向けて、自分の思いを伝えるのに有効な手段であることを伝えました。
アフリカでは、若者の失業率が深刻な問題となっています。また、写真・映像の撮影や印刷需要が高まる一方、そのスキルが国際水準に達しておらず、ビジネスの大半を外国企業が担っているという現状があります。こうした状況を受け、キヤノンヨーロッパは、写真・映像撮影や印刷産業におけるアフリカ地域の若者の技術力を向上させ、雇用拡大をめざす「Miraishaプログラム」を進めています。「Miraisha」とは、日本語の「未来」とスワヒリ語の「マイシャ(生活)」を組み合わせた造語です。これまでケニア、ガーナ、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、ウガンダ、カメルーン、コートジボワールなどにおいて、地元政府機関や教育団体、イベント主催者、キヤノンアンバサダー(プロ写真家)などと、5,950人を超える参加者に対し、写真・映像撮影や印刷分野のワークショップを実施しました。また、地元の写真家や映像制作者をキヤノン認定のMiraishaトレーナーとして育成する指導者養成プログラムも実施しています。2021年までに26人がMiraishaトレーナーに認定され、うち3人はキヤノン社員として雇用されました。
ナイロビの「Miraishaプログラム」参加者
キヤノンでは、アジア各地で次世代を担う子どもたちの教育支援を行っています。
中国では、子どもたちの学ぶ権利を尊重し、就学機会を提供するための「キヤノン希望小学校」をこれまでに10校設立し、教育環境の改善に取り組んでいます。
ベトナムでは、インフラが整わない貧困地域の学校を対象に、教室の建築、机や椅子、本などの備品を寄贈しているほか、支援先の学校を訪問し、トイレや手洗い場などの施設の修復や学用品などの寄贈を継続的に実施しています。
また、タイでは、子どもたちの能力を高め、将来経済的に自立した人材を育成することを目的に小学校でのボランティア活動を継続して実施しています。2021年も48人の社員が小学校に出向き、農業体験や料理教室など幅広い活動を実施しました。
このほかの地域でもマッチングギフト制度を通じた寄付活動を行っています。キヤノン(株)では、日本全国のキヤノンの従業員から、不要になった図書やCD、DVDなどを集めて行う社内バザー「チャリティブックフェア」を1997年より開催しています。収益金はマッチングギフト制度により会社から同額の寄付金を上乗せした上で、タイやラオス、カンボジアなどのアジア地域の教育・医療を支援する団体に寄付します。
キヤノン(株)は、2007年から特定非営利活動法人京都文化協会とともに文化財未来継承プロジェクト、通称「綴(つづり)プロジェクト」を展開しています。
このプロジェクトでは、オリジナルの文化財に限りなく近い高精細複製品を制作し、かつての所蔵者やゆかりのある寺社、博物館などに寄贈し広く公開していただいています。文化財として価値の高い屏風や襖絵などをデジタルカメラで撮影し、独自のシステムを用いて高精度なカラーマッチングを行った上で、大判インクジェットプリンターで出力し、金箔や表装などの京都伝統工芸の技を加えて制作。日本の貴重な文化財の保存と高精細複製品の活用の両立を実現し、日本文化の継承と発信に貢献しています。
国宝「孔雀明王像」の高精細複製品の展示(東京国立博物館)
2021年は、東京国立博物館所蔵の国宝「孔雀明王像」の高精細複製品を制作して独立行政法人国立文化財機構へ寄贈し、大本山建仁寺所蔵の国宝「風神雷神図屏風」(俵屋宗達 筆)の高精細複製品を制作して建仁寺へ奉納しました。
また、国立文化財機構文化財活用センターとの「高精細複製品を用いた日本の文化財活用のための共同研究プロジェクト」において、国宝「観楓図屏風」(狩野秀頼筆)など3作品の高精細複製品を制作。東京国立博物館に開設された体験展示スペース「日本美術のとびら」をはじめ、綴プロジェクトの寄贈作品とあわせて広く活用されました。
キヤノン(株)は、ラグビーというスポーツを通してスポーツファンや地域の皆さまに「感動」を作り出し共有することをめざし、ジャパンラグビーリーグワンに所属する横浜キヤノンイーグルスを運営しています。
社会貢献活動として、全国の小中学生および高校生を対象に、イーグルスの現役選手・スタッフによるキャリア教育授業やタグラグビー教室を実施しており、ラグビーを通してチームプレーの大切さや体を動かす楽しさなどを体験してもらうことで、子どもたちの健やかな成長に貢献できるよう努めています。
2021年は小学校21校でキャリア教育授業とタグラグビー教室を開催し、生徒1,650人が参加したほか、東北復興支援活動として、宮城県内の中学生を対象としたラグビークリニック(講習会・指導)を行いました。
キヤノン財団は、科学技術の発展への貢献を目的に2008年に設立され、キヤノンの事業活動にとらわれることなく、幅広い分野で科学技術研究を助成しています。
社会の新しい価値を作り出すことをめざし、先端の科学技術に挑戦する研究を支援するというコンセプトのもと、「善き未来をひらく科学技術」「新産業を生む科学技術」という2つの研究助成プログラムを実施しています。
これまで12期13年間で192件、約34億円の研究助成を行ってきました。1件平均は約2,000万円と比較的高額な研究助成を萌芽期の研究や、まだ実績の多くない若手研究者などに行い、特徴のある研究助成財団として日本全国の大学や研究機関に認知されています。
キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は、キヤノン(株)の創立70周年を記念して、2008年に一般財団法人として設立された非営利の民間シンクタンクです。
CIGSは、世界において日本がどうあるべきかという視点から現状を分析し、「グローバルエコノミー」「外交・安全保障」「エネルギー・環境」など多岐にわたる分野において戦略的な提言を発信することを目的に、産学官各界の多様な研究者によってグローバルな活動と知識の交流を図っています。コロナ禍においても、オンラインを活用したイベントや研究会活動を通じ、積極的な情報発信と政策提言を行っています。
講演するCIGSの宮家邦彦研究主幹