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社会文化支援活動

事業で培った技術や知識を生かして、地域社会の持続的な発展に貢献しています

基本的な考え方

キヤノンは、創業当時から、事業活動を通じて社会に貢献していくという精神が企業文化として定着しています。この考えのもと、社会貢献活動の重点分野として、メディカル事業の技術を活用した貧困地域での医療提供や、キヤノンが長年培ってきたイメージング、プリンティング技術を活用した教育・文化支援活動に注力しています。この分野は中長期経営計画「グローバル優良企業グループ構想フェーズⅥ」の主要戦略として競争力強化を図っている領域であり、これらの事業活動の進展を通して社会課題の解決に貢献していきます。

また、ユニセフが国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンとともに策定した「子どもの権利とビジネス原則」を支持し、次世代を担う子どもたちの権利の実現に向けた活動に取り組んでいます。

2022年は、社会貢献活動費として約18億円を支出しました。

方針

キヤノンは、「キヤノングループ CSR活動方針」を制定し、芸術・学術・スポーツ支援、人道・災害支援、豊かな生活と地球環境の両立への貢献などを活動分野としています。本方針にもとづき、キヤノンの強みである「高度な技術力」「グローバルな事業展開」「専門性のある多様な人材」を生かし、グループ全体で社会文化支援活動を展開しています。

推進体制

キヤノンでは、キヤノン(株)サステナビリティ推進本部がグループ全体の社会文化支援活動を統括・推進しています。重要事項は、随時、キヤノン(株)執行役員であるサステナビリティ推進本部長が代表取締役会長兼社長ならびに代表取締役副社長に報告し、リスク・機会への対応の方向性、施策について承認を受けています。

さらに、国内外のグループ会社の社会貢献担当者は定期的な情報共有を行うほか、SNSや社内イントラネット、社内報を通じて、グループ内の活動やSDGsへの取り組みなどを社員と共有し、グループ全体の社会文化支援活動の活性化を図っています。

主な取り組み

インドにおける多角的な支援「4E’sプロジェクト」

キヤノンインディアは、NGO「Humana People to People India」と協働し、オフィス近隣の貧しい村を対象に「アイケア(Eye Care)」「教育(Education)」「環境(Environment)」「自立支援(Empowerment)」の側面からさまざまな支援を行う「4E’sプロジェクト」を実施しています。

特に、アイケア分野は、キヤノンが重点事業戦略の一つに掲げ、強化・拡大を図るメディカルグループの技術を生かし、視覚障がい者を救済する眼科医療の充実に努めています。インドの視覚障がいの多数を占める白内障はその8割が予防や治療が可能といわれているにもかかわらず、医療のインフラが十分に整っていないため適切な検査や治療を受けられないという課題があります。そこで、対象となる村に「ビジョンセンター」を開設し、キヤノンの眼科機器を使用した検診を提供しています。2022年は6,105人が訪れ、うち644人に無償で眼鏡を提供したほか、188人がさらなる診療のために病院で受診しました。

インドでのアイケアプロジェクト

また、エンパワーメントの分野では、若者の心に写真文化を浸透させる取り組みを展開しています。たとえば、デリー首都圏政府の女性・子ども開発省と連携してニューデリーの少年ホームで子ども向けの写真ワークショップを開催しています。保護された16~18歳の子どもたちを対象に、写真を探求しこの分野での雇用機会を創出することを目的として、ワークショップを実施しています。2022年は74人の子どもたちがワークショップを受講しました。

2022年は、4E’s Project全体で86,494人が参加しました。

青少年の創造性と表現力を育む「Canon Young People Programme」

「Canon Young People Prgramme」に参加する学生たち(ヨルダン・ザータリ難民キャンプにて)

キヤノンヨーロッパでは、欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域の恵まれない環境にある若者を対象に、創造的なビジュアル・ストーリーテリング(視覚的に物語を伝えること)を紹介する「Canon Young People Programme(YPP)」を実施しています。この活動は、よりよく、持続可能な未来のために若者の声を届けることを目的としています。

本プログラムは、各国の現地NGOとの協業で地域コミュニティに働きかけ、写真・映像撮影を通じて若者の創造的な表現の機会を提供しています。2022年は、EMEA全域で、ヨルダンやトルコなど新たに10カ国を含む24カ国でプログラムが実施され、1,200人以上の若者が参加しました。

アフリカ地域において技術力向上と雇用創出をめざす「Miraishaプログラム」

アフリカでは、若者の失業率が深刻な問題となっています。また、写真・映像の撮影や印刷需要が高まる一方、そのスキルが国際水準に達しておらず、ビジネスの大半を外国企業が担っているという現状があります。こうした状況を受け、キヤノンヨーロッパは、写真・映像撮影や印刷産業におけるアフリカ地域の若者の技術力を向上させ、雇用拡大をめざす「Miraishaプログラム」を進めています。「Miraisha」とは、日本語の「未来」とスワヒリ語の「マイシャ(生活)」を組み合わせた造語です。これまでケニア、ガーナ、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、ウガンダ、カメルーン、コートジボワールなどにおいて、地元政府機関や教育団体、イベント主催者、キヤノンアンバサダー(プロ写真家)などと、6,500人を超える参加者に対し、写真・映像撮影や印刷分野のワークショップを実施しました。また、地元の写真家や映像制作者をキヤノン認定のMiraishaトレーナーとして育成する指導者養成プログラムも実施しています。2022年までに26人がMiraishaトレーナーに認定され、うち3人はキヤノン社員として雇用されました。

ケニアでの「Miraisha Programme」の様子

地球環境保護の重要性を伝える教育・研究プログラム「Eyes on Yellowstone」

キヤノンUSAは、世界的に有名な米国のイエローストーン国立公園に資金を提供し、絶滅危機に瀕した野生動物の保護のための調査活動を支援しています。

特に、教育・研究プログラム「Eyes on Yellowstone」では、キヤノンの映像機器を使用して生態観察を行い、映像ライブラリーをデジタル化してWebサイトで配信。この映像は、世界中の数百万人に及ぶ子どもたちに教材として利用され、地球環境に関する知識や保護の重要性を認識するために役立てられています。

アジアの教育支援

キヤノンでは、アジア各地で次世代を担う子どもたちの教育支援を行っています。

中国では、子どもたちの学ぶ権利を尊重し、就学機会を提供するための「キヤノン希望小学校」をこれまでに10校設立し、教育環境の改善に取り組んでいます。

ベトナムでは、子どもたちの学習環境向上のため、校舎の建設や机や椅子の提供、学用品の寄贈などを行う「Friendship School Chain Project」を2007年より継続して行っています。2022年は、ベトナム東北部の山岳地帯にある貧困地域に50校目となる学校を開校しました。

またタイでも、支援が届きにくい辺地や近隣の設備が整っていない学校を社員が訪問し、施設の修繕や自給自足のための菜園づくり、備品・学用品などの寄贈をするなど、教育支援のボランティア活動を継続的に実施しています。

このほかの地域でもマッチングギフト制度を通じた寄付活動を行っています。キヤノン(株)では、日本全国のキヤノンの従業員から、不要になった図書やCD、DVDなどを集めて行う社内バザー「チャリティブックフェア」を1997年より開催しています。収益金はマッチングギフト制度により会社から同額の寄付金を上乗せした上で、タイやラオス、カンボジアなどのアジア地域の教育・医療を支援する団体に寄付します。

日本の文化を未来に継承する「綴プロジェクト」

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キヤノン(株)は、2007年から特定非営利活動法人京都文化協会とともに文化財未来継承プロジェクト、通称「綴(つづり)プロジェクト」を実施しています。

日本古来の貴重な文化財には、歴史の中で海外に渡ったものや国宝として大切に保管されているものなど、鑑賞の機会が限られている作品がたくさんあります。綴プロジェクトでは、キヤノン独自のデジタルイメージング技術と京都伝統工芸の技によって、オリジナルの文化財に限りなく近い高精細複製品を制作しています。寄贈先での一般公開や学校教育の現場で活用されるなど、さまざまな場面での活用を可能にしました。

2022年は米沢市上杉博物館において綴プロジェクトの技術で制作された高精細複製品24点が一堂に会する企画展「日本画をたのしもう~高精細複製が語る名品の世界~」(主催:米沢市上杉博物館)に特別協力し、オリジナルの文化財ではかなわない夢の競演を実現しました。

また、東京国立博物館創立150年記念 特別企画「未来の博物館」の第2会場となる「四季をめぐる高精細複製屏風」に協賛。国宝4作品の高精細複製品にプロジェクションマッピングを行い、日本の美しい四季を感じながら、オリジナルではできない新しい鑑賞体験を提供しました。

このほか、国立文化財機構文化財活用センターとの「高精細複製品を用いた日本の文化財活用のための共同研究プロジェクト」において、国宝「檜図屏風」(狩野永徳 筆)、国宝「秋冬山水図」(雪舟 筆)、国宝「楼閣山水図屏風」(池大雅 筆)など6作品の高精細複製品を制作。東京国立博物館にある体験展示スペース「日本美術のとびら」をはじめ、綴プロジェクトの寄贈作品とあわせて広く活用されました。

米沢市上杉博物館で開催された企画展

米沢市上杉博物館で開催された企画展

「四季をめぐる高精細複製屏風」会場の様子

「四季をめぐる高精細複製屏風」会場の様子

ラグビーを通した社会への貢献

キヤノン(株)は、ラグビーというスポーツを通してスポーツファンや地域のみなさまに「感動」をつくり出し共有することをめざし、ジャパンラグビーリーグワンに所属する横浜キヤノンイーグルスを運営しています。

小学校でのタグラグビー教室

小学校でのタグラグビー教室

社会貢献活動として、全国の小中学生および高校生を対象に、イーグルスの現役選手・スタッフによるキャリア教育授業やタグラグビー教室を実施しており、ラグビーを通してチームプレーの大切さや体を動かす楽しさなどを体験してもらうことで、子どもたちの健やかな成長に貢献できるよう努めています。

2022年は小学校25校でキャリア教育授業とタグラグビー教室を開催し、生徒2,269人が参加したほか、東北復興支援活動として、宮城県内の中学生を対象としたラグビークリニック(講習会・指導)を行いました。

「キヤノン財団」を通じた人類の持続的発展に貢献する研究助成活動

キヤノン財団は、科学技術の発展への貢献を目的に2008年に設立され、キヤノンの事業活動にとらわれることなく、幅広い分野で科学技術研究を助成しています。

社会の新しい価値をつくり出すことをめざし、先端の科学技術に挑戦する研究を支援するというコンセプトのもと、「善き未来をひらく科学技術」「新産業を生む科学技術」という2つの研究助成プログラムを実施しています。

これまで13期14年間で207件、約37億円の研究助成を行ってきました。1件平均は約2,000万円と比較的高額な研究助成を萌芽期の研究や、まだ実績の多くない若手研究者などに行い、特徴のある研究助成財団として日本全国の大学や研究機関に認知されています。

人類社会が直面する課題克服への貢献をめざす「キヤノングローバル戦略研究所」

キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は、キヤノン(株)の創立70周年を記念して、2008年に一般財団法人として設立された非営利の民間シンクタンクです。

CIGSは、世界において日本がどうあるべきかという視点から現状を分析し、「グローバルエコノミー」「外交・安全保障」「エネルギー・環境」など多岐にわたる分野において戦略的な提言を発信することを目的に、産学官各界の多様な研究者によってグローバルな活動と知識の交流を図っています。コロナ禍においても、オンラインを活用したイベントや研究会活動を通じ、積極的な情報発信と政策提言を行っています。

講演するCIGSの宮家邦彦研究主幹

講演するCIGSの宮家邦彦研究主幹

その他の主な社会文化支援活動

人道・災害支援

寄付

キヤノンは、ウクライナへの人道支援として、国連の難民支援機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)や国際的な人道支援などを行う団体へ100万ユーロ(約1億3千万円)の寄付を行いました。また、トルコ南東部で発生した地震による被害への支援のために日本赤十字社やトルコ赤新月社などの団体へ、10万ユーロ(約1,400万円)を寄付するとともに、被災された方々の医療支援のために、医療機器を無償提供しました。

  • UNHCRの日本の公式支援窓口である国連UNHCR協会を通じての寄付
トルコの医療支援に活用される6台の超音波診断装置

トルコの医療支援に活用される6台の超音波診断装置

国連の支援活動への協力

国連UNHCR協会※1と共催で、「UNHCR難民アスリート写真展」を開催しました。また、同協会が主催し、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所が協力して開催した「難民映画祭」に賛同・協力しました。さらに、国連WFP協会※2の支援活動への協力も行っています。

  • 1 UNHCRの日本の公式支援窓口
  • 2 WFP国連世界食糧計画の日本の公式支援窓口

環境保全活動

環境出前授業

ものの特徴を利用した分別実験を通じて、環境問題に対する理解を深め、リサイクルの大切さを学ぶプログラム。2022年は、海外でもこのプログラムを展開し、フランスの小学校で初めて実施しました。

社会福祉活動

American Cancer Society

1998年からキヤノンUSAが支援する、 アメリカがん協会(ACS)への寄付を目的としたプログラム。「ACS乳がん撲滅チャリティーウォーク」への参加やファンドレイジング活動を実施しました。

地域社会活動

各種復興支援活動

タイにおいて水害対策活動や浸水被災地への支援を行いました。またベルギーにおいて洪水で被害を受けた写真を修復する取り組みなどを行いました。さらに東日本大震災の被災地を支援する活動も継続的に実施しています。

教育・学術支援

ジュニアフォトグラファーズ

自然をテーマとした写真撮影会を通じて、子どもたちの環境に対する意識を高め、豊かな感性を育むことを目的としたプロジェクト。2022年は8校で写真教室を開催し、336人が参加しました。

インターンシップ受け入れ

学生へのキャリア形成支援を目的としたプログラムなど、各種インターンシップを各グループ会社で実施。キヤノン(株)では、2022年は事務系・技術系・高専で合計約1,700人を受け入れました。

芸術・文化・スポーツ支援

写真新世紀

写真表現の可能性に挑戦する新人写真家の発掘・育成・支援を目的とした公募プロジェクト。30周年を迎えた2021年に最後の公募を行いました。2022年には30年の軌跡を振り返る記念展を2つの会場で開催しました。

また、30年の長きに渡り、若者たちの写真表現を多様化、拡張させ、その可能性に挑戦する新人写真家の発掘・育成に大きく貢献したことが評価され、公益社団法人日本写真協会が主催する「日本写真協会賞 功労賞」を受賞しました。

日本写真協会賞 表彰式の様子(2023年6月1日)