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TCFD提言に即した開示

キヤノンは、気候変動への対応を含む「地球環境の保護・保全」を経営の重要課題(マテリアリティ)の一つとしています。課題解決に向けて、開発、生産、販売といった自らの事業活動だけでなく、サプライヤーにおける原材料や部品の製造、販売店などへの輸送、さらにはお客さまの使用、廃棄・リサイクルに至るまで、製品ライフサイクルの各ステージにおける環境への影響を捉え、削減に取り組んでいます。

2050年にCO₂排出量をネットゼロとすることを目指し、製品の小型・軽量化、物流の効率化、生産拠点での省エネルギー活動、製品使用時の省エネルギー、製品リサイクルなど、様々な取り組みを推進しています。「キヤノングループ中期環境目標」である「ライフサイクルCO₂製品1台当たりの改善指数年平均3%改善」を確実に達成することで、CO₂排出量の着実な削減を図っていきます。

また、当社は、金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しており、サステナビリティレポートやウェブサイトを通じて、推奨される情報を継続的に開示しています。

ガバナンス

気候変動対応を含む環境目標は、代表取締CEOが承認しています。中長期計画については、サステナビリティ推進本部が策定の上、取締役を含めた役員間の協議を経た上でCEOの承認を得ています。目標達成に向けサステナビリティ推進本部が中心となってグループ全体で実行しています。目標の進捗について毎月経営層に報告するとともに、年間のレビューをCEOに報告しています。また、当社では取締役会決議に基づき、リスクマネジメント委員会を設置し、環境法規制や自然災害に関する重大なリスクは、リスクマネジメント委員会において審議を行っています。

戦略

専門機関や政府機関からの情報をもとに、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候変動シナリオなどを活用した製品ライフサイクルCO₂削減に対する数値シミュレーションを実施し、事業上のリスク・機会を特定するとともに中長期戦略を策定しています。(特定したリスク・機会の概要は、下表を参照。)

また、リスクを縮小し、機会を拡大するため、製品ライフサイクル全体を視野にCO₂削減を図る「緩和」と物理リスクへの「適応」の両面からのアプローチが重要と認識し、対応計画を策定・実行しています。さらに、資源循環への取り組みを通じたCO₂削減も実行しています。例えば、複合機のリマニュファクチュアリングは、新規の原材料調達や部品加工に伴い発生するCO₂の削減が可能であるほか、インク・カートリッジのクローズドループリサイクルにより、回収したカートリッジからプラスチックをペレット化し、再度原材料として使用することで、新規の原材料調達や輸送等にかかるCO₂を削減することが可能となります。

気候変動領域における主なリスク・機会

リスク機会 リスク・機会の概要 財務影響 対処
リスク 移行リスク 省エネルギー規制の強化と対応コストの増加
(製品・拠点)
  • 製品ライフサイクル全体での負荷削減を指標とした環境総合目標の達成
  • 環境規制動向に関する情報収集・分析・適合
経済的手法を用いた排出抑制(炭素税など)による事業コストの増加
  • 拠点エネルギー目標の達成
  • 開発・生産・設備・環境部門が連携し、各事業所の省エネ活動を推進
物理リスク 台風や洪水被害の甚大化など異常気象の深刻化による操業影響
  • BCPの策定、高リスク事業拠点の高台移転
評判リスク 情報開示の不足による外部評価の低下
  • 気候変動対応への考え方・取り組み状況の開示
機会 製品・サービス 省エネルギー製品をはじめライフサイクル全体でのCO2排出量が小さい製品に対する販売機会の拡大
  • 製品ライフサイクル全体での負荷削減を指標とした環境総合目標の達成
  • 省エネ性能と使いやすさを両立させた製品の開発・製造・販売
ハードとソフトの両面から革新を支えるさまざまな製品・ソリューションの販売を通じた社会全体のCO2削減への貢献
  • 製品ライフサイクル全体での負荷削減を指標とした環境総合目標の達成
資源の効率 生産や輸送の高効率化によるエネルギーコストの削減
  • 拠点エネルギー目標の達成
  • 高効率設備や輸送手段への切り替え・新規導入
エネルギー源 再生可能エネルギーの低コスト化による活用機会の拡大
  • 再生可能エネルギーへの切り替え
その他 気候関連情報の開示促進による企業イメージの向上
  • 気候変動対応への考え方・取り組み状況の開示

リスクマネジメント

特定した気候変動リスク・機会は、ISO14001のPDCAサイクルに沿って管理しています。当社は、環境保証活動の継続的な改善を実現するしくみとして、全世界の事業所においてISO14001によるグループ共通の環境マネジメントシステムを構築しています。具体的には、環境マネジメントシステムは、各部門の活動と連携した環境保証活動を推進(DO)するために、中期ならびに毎年の「環境目標」を決定(PLAN)し、その実現に向けた重点施策や実施計画を策定して事業活動に反映させています。さらに、各部門における取り組み状況や課題を確認する「環境監査」や、業績評価に環境側面を取り込んだ「環境業績評価」を実施(CHECK)することで、環境保証活動の継続的な改善・強化(ACT)へつなげています。これらリスク・機会への対応は、全社環境目標や重点施策に反映されるとともに、当社では、環境への対応を経営評価の一部として取り入れており、各部門の環境目標の達成状況や環境活動の実績は、グループ全体の経営状況の実績を評価する「連結業績評価制度」の一指標として実施される「環境業績評価」の中で年2回、評価・評点化しています。評価結果はCEOをはじめとする経営層に報告されています。

指標と目標

製品ライフサイクル全体をスコープに、省エネ、省資源、リサイクルなどあらゆる環境活動の成果を一つの指標で統合的に捉え、管理していくため、「ライフサイクルCO₂製品1台当たりの改善指数年平均3%改善」を「キヤノングループ中期環境目標」に設定しています。この目標を継続的に達成することで、2030年には2008年比でおよそ50%の改善になると考えています。2022年時点では目標を上回る2008年比43%の改善となりました。また、ライフサイクルCO₂排出量の総量は7,616千t-CO₂(スコープ1+2+3合計)でした。これらのGHG(Greenhouse Gas)排出量データは、毎年第三者保証を取得しています。2022年も取得済みです。

当社は、SBTi*の基準に即し、スコープ1、2排出量を2022年比で42%削減、スコープ3(カテゴリー1,11)排出量を2022年比で25%削減することをめざします。(SBTi認定を取得)
さらに、社会と連携しながら、製品ライフサイクル全体での取り組みを通じて、2050年にCO2排出量をネットゼロとすることをめざしています。

*SBTi (Science Based Targets initiative) : 科学的根拠に基づいたGHG排出削減目標の設定を推奨する国際イニシアティブ