生物多様性の取り組み
ネイチャーポジティブ実現に向けた取り組み
昨今「生物多様性」が世界共通の課題として認識されており、生物多様性保全だけではなく生物多様性回復に関する取り組みである「ネイチャーポジティブ」という考え方が注目されています。キヤノンはグループ全体で「ネイチャーポジティブ」をスローガンに掲げ、世界各地域の販売拠点および生産拠点でステークホルダーと協働し、各地域のニーズに沿った活動を展開しています。
世界各地でのネイチャーポジティブ実現に向けた取り組み
グローバルに展開をしているキヤノンバードブランチプロジェクトをはじめ、さまざまな生態系や生物多様性の保全活動への取り組みを紹介します。
キヤノンバードブランチプロジェクト
生物多様性とは、地球上のさまざまな生物のつながりを指します。そのなかでも鳥は、植物、虫、小動物などから構成される地域の生態系ピラミッドの上位に位置する生命の循環のシンボルとなっています。キヤノンでは、「キヤノングループ生物多様性方針」にもとづいた活動の象徴として、鳥をテーマとした「キヤノンバードブランチプロジェクト」を2015年より国内外の各拠点で推進しています。
2026年までにはプロジェクト参加拠点を下丸子本社1拠点(2015年)から国内外60拠点に拡大していき、取り組みを強化していきたいと考えています。
国内外での活動
キヤノン(株)下丸子本社の敷地にはさまざまな木々が植えられた緑地帯「下丸子の森」があり、日本野鳥の会による監修のもと、野鳥の飛来状況を毎月定期的に調査しています。確認できた野鳥は2014年の23種から2024年末時点で43種類に増え、生息種の多様化を確認しています。
キヤノンエコロジーインダストリーでは日本野鳥の会の専門家の支援のもと、2020年より敷地内にある調整池にカワセミを誘致する活動を展開しました。モロコ、ギンブナなどといったカワセミの餌となる小魚の放流などの活動の結果、カワセミの成鳥を確認することができました。
大分キヤノンマテリアルは、緑地面積の維持に加え、周辺環境との調和や季節感を大切にした緑化を推進し、さらに鳥の生育環境創出のため巣箱の設置や国立環境研究所と連携した生物季節モニタリング調査の実施、小学生を対象とした工場見学を開催しています。
キヤノン富士裾野リサーチパークは、敷地の88%を占める緑地を適切に維持・管理し、野鳥が飛来しやすい環境づくりのための植樹や巣箱の設置などの取り組みに加え、事業所周辺をはじめとする地域の清掃活動や小・中学生を対象とした環境出前授業・キャリア教育などを実施しました。
キヤノン中国では、2024年6月に、北京・上海のキヤノングループ3社と合同で野鳥観察会を開催。専門家の指導のもと、社員とその家族50名以上が参加しました。
また、WebサイトやSNSを活用し、積極的に情報発信しています。
キヤノンUSAでは、社員が専門家と構内を散策しながら野鳥を観察する「Bird Watching Walk」など、多彩な活動を展開しています。
その他の拠点においても、ビオトープやバードバス(野鳥の水浴び場)、巣箱の設置・掃除、バードストライク対策など、野鳥が敷地内で生息しやすい環境を整備しています。これらの活動は、社員にとっても、営巣された巣箱の公開などを通じて、身近な場所でも野鳥の生命が育まれていることを知る機会となっています。また、国立環境研究所が進める「生物季節モニタリング」に大分キヤノンマテリアルを含む12拠点が参加しており、敷地内で確認できる鳥類、植物、爬虫類、昆虫の「初鳴日」「初見日」「開花日」を報告し、学術の面でも貢献をしています。


世界目標「30by30」への貢献
国内のキヤノングループでは、環境省が実施する「自然共生サイト」認定取得を進めています。本事業は、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする世界目標「30by30」の達成に向けて、「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定するものです。
認定区域は、2024年に「OECM※」として国際データベースに登録されました。認定を受けた「キヤノン 下丸子の森」は、約80種類1,000本近い木々が植えられた本社敷地内の緑地帯です。地域の生物多様性保全に貢献していることに加え、バードブランチプロジェクトの取り組みも評価されました。また、2024年には大分キヤノン大分事業所とキヤノンメディカルシステムズ本社も「自然共生サイト」に認定されました。
- ※ Other Effective area-based Conservation Measures


バリューチェーンにおける森林資源の持続的活用に向けた取り組み
キヤノンは、バリューチェーンにおける生物多様性の保全に関連して、キヤノン製品が使用する用紙の原材料に森林資源が使われていることを認識し、森林資源の持続的活用に努めています。2015年に森林資源保全に配慮した木材製品の調達に関する方針を設定し、販売しているオフィス用紙に、「森林認証用紙」や「環境に配慮された供給源の原材料から製造された用紙」を採用しています。