生物多様性の取り組み
ネイチャーポジティブ実現に向けた取り組み
昨今「生物多様性」が世界共通の課題として認識されており、生物多様性保全だけではなく生物多様性回復に関する取り組みである「ネイチャーポジティブ」という考え方が注目されています。キヤノンはグループ全体で「ネイチャーポジティブ」をスローガンに掲げ、世界各地域の販売拠点および生産拠点でステークホルダーと協働し、各地域のニーズに沿った活動を展開しています。
TNFDへの対応
キヤノンは生物多様性保全の活動が経済活動の損失防止や雇用・ビジネスの創出および自社の持続的発展につながると考えています。このことから、自然資本への依存・影響をはじめとする自然関連課題についての評価を進めており、その内容を自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD:Task Force on Nature-related Financial Disclosures)のフレームワークに沿って順次公開していく予定です。
2025年の取り組み
2025年はTNFDの情報収集のためTNFDフォーラムに参画しました。また、LEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)アプローチに沿って、直接操業を対象に、主な事業所・生産販売拠点(国内外80拠点)に対してLocateフェーズの分析を開始しました。
自然との接点の分析(Locate)
ENCORE※を用いてキヤノンの事業セクターごとの自然への依存・影響を評価しました。ヒートマップを作成してスコア化を行ったところ、複数の事業において相対的に自然への依存・影響度が高いという結果となりました。
また、拠点の位置情報をもとに生態学的な要注意地域の評価を行いました。要注意地域の定義(右表)にもとづき、以下の分析ツールを用いて5つの項目に対してスコア化を行ったところ、各拠点の生態学的な依存・影響度を把握することができました。
- ※ ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure):経済活動ごとに自然への依存・影響を評価できる自然関連のリスク管理ツール。
要注意地域の定義
- 生物多様性にとって重要な地域
- 生態系の完全性が高い地域
- 生態系の完全性が急速に低下している地域
- 物理的な水リスクが高い地域
- 先住民族、地域社会、利害関係者への利益を含む、生態系サービスの提供にとって重要な地域
要注意地域の分析ツール
- IBAT※1
- WWF Risk Filter Suite(BRF/WRF)※2
- Global Forest Watch※3
- ※1 IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool):IUCNレッドリスト、世界保護地域データベース(WDPA)、世界生物多様性重要地域データベース(WDKBA)などの世界的なデータベースを統合した生物多様性評価ツール。
- ※2 WWF Risk Filter Suite(BRF/WRF):自然関連リスクを評価するツール群。生物多様性リスクを評価するBRF(Biodiversity Risk Filter)と、水リスクを評価するWRF(Water Risk Filter)の2つのツールがある。
- ※3 Global Forest Watch:森林監視のためのデータとツールを提供するオンラインプラットフォーム。
得られた結果と、キヤノンは製品の製造過程において多くの水資源を必要としている実態を踏まえて、80拠点の中から優先地域の絞り込みを行いました。その結果、優先地域の候補として暫定的に12拠点を選定しました。
一方で、ツールの評価は一般的な評価にとどまり、各拠点の属する地域の実態と整合していない場合があります。そのため、今後も引き続き、詳細調査を行い、事業への影響と自然への影響を評価して優先地域の特定に取り組むとともに、Evaluateフェーズ以降の分析に沿って依存と影響、リスクと機会の特定を進めていく予定です。
世界各地でのネイチャーポジティブ実現に向けた取り組み
グローバルに展開をしているキヤノンバードブランチプロジェクトをはじめ、さまざまな生態系や生物多様性の保全活動への取り組みを紹介します。
森林資源の持続的活用に向けた取り組み
キヤノンは、生物多様性の保全に関連して、キヤノン製品が使用する用紙の原材料に森林資源が使われていることを認識し、森林資源の持続的活用に努めています。2015年に森林資源保全に配慮した木材製品の調達に関する方針を設定し、販売しているオフィス用紙に、「森林認証用紙」や「環境に配慮された供給源の原材料から製造された用紙」を採用しています。
キヤノンバードブランチプロジェクト
生物多様性とは、地球上のさまざまな生物がつながりながら共存している状態を指します。そのなかでも鳥は、植物、虫、小動物などから構成される地域の生態系ピラミッドの上位に位置する生命の循環のシンボルとなっています。キヤノンでは、「キヤノングループ生物多様性方針」にもとづいた活動の象徴として、鳥をテーマとした「キヤノンバードブランチプロジェクト」を2015年に開始し、10周年を迎えました。国内外の各拠点が本プロジェクト活動を推進しており、たとえば、キヤノン(株)下丸子本社の敷地にはさまざまな木々が植えられた緑地帯「下丸子の森」があり、日本野鳥の会による監修のもと、野鳥の飛来状況を毎月調査しています。確認できた野鳥は2014年の23種から2025年末時点で45種類に増え、生息種の多様化が確認されました。
キヤノンエコロジーインダストリーでは日本野鳥の会の専門家の支援のもと、2020年より敷地内にある調整池にカワセミを誘致する活動を展開しました。モロコ、ギンブナなどといったカワセミの餌となる小魚の放流などの活動の結果、カワセミの成鳥を確認することができました。
大分キヤノンマテリアルは、周辺環境との調和や季節感を大切にした緑化を推進し、さらに鳥の生育環境創出のため巣箱の設置、周辺環境美化のためのボランティア活動へ積極的に参加しています。
キヤノン富士裾野リサーチパークは、敷地の88%を占める緑地を適切に維持・管理し、野鳥が飛来しやすい環境づくりのための植樹や巣箱の設置などの取り組みに加え、事業所周辺をはじめとする地域の清掃活動や小・中学生を対象とした環境出前授業・キャリア教育などを実施しました。
キヤノン中国では、野鳥をテーマとした写真を中国のグループ会社の社員から募集し、北京、上海、広州、成都のショールーム等で展示を行う「愛鳥写真展」を開催しました。また、ウェブサイトやSNSで、活動や野鳥観察コラムなどを積極的に情報発信しています。
その他の拠点においても、ビオトープやバードバス(野鳥の水浴び場)、巣箱の設置・掃除、バードストライク対策など、野鳥が敷地内で生息しやすい環境を整備しています。これらの活動は、社員にとっても、営巣された巣箱の公開などを通じて、身近な場所でも野鳥の生命が育まれていることを知る機会となっています。また、国立環境研究所が進める「生物季節モニタリング」に大分キヤノンマテリアルを含む12拠点が参加しており、敷地内で確認できる鳥類、植物、爬虫類、昆虫の「初鳴日」「初見日」「開花日」を報告し、学術の面でも貢献をしています。
世界目標「30by30」への貢献
2023年、キヤノン本社敷地内の約80種類1,000本近い木々が植えられた緑地帯が「下丸子の森」として環境省の「自然共生サイト」に認定されました。
これは、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする世界目標「30by30」の達成に向けて、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する事業で、「下丸子の森」は地域の生物多様性保全に貢献していることに加えてバードブランチプロジェクトの取り組みも評価されました。
また「下丸子の森」は、2024年に「OECM※」として国際データベースに登録されました。
また、2024年に大分キヤノン大分事業所とキヤノンメディカルシステムズ本社が、2025年にキヤノンエコロジーインダストリーがそれぞれ「自然共生サイト」に認定されました。
- ※ Other Effective area-based Conservation Measures 保護地域以外で生物多様性保全に資する地域