サプライチェーンマネジメント
取り組み

サプライヤーに対する取り組み

サプライヤーの評価

キヤノンは、新規のサプライヤーと取引を開始する際には「キヤノンサプライヤー行動規範」などにもとづいて、企業倫理(法令遵守、製品安全、機密情報管理、人権、労働、安全衛生、知的財産権保護など)、地球環境保全(化学物質管理、大気汚染や水質汚濁の防止、廃棄物の適正処理、省資源・省エネルギー活動への取り組み、温室効果ガスの削減、生物多様性保全)、財務、生産体質(品質、コスト、納期、製造能力、管理)などの基準を満たしているかどうかを審査しています。

これらの基準をクリアできたサプライヤーだけが「サプライヤーリスト」に登録されます。サプライヤーリストに登録された既存のサプライヤーに対しては、定期調査を年1回行い、調査結果や取引実績などから総合的に評価します。その結果はサプライヤーリストに反映し、評価の高いサプライヤーと優先的に取引できるようにしています。さらに、評価が低かったサプライヤーに対しては現地監査を行うなど、改善に向けた指導・教育などを行っています。特に、人権、労働、環境などの法令や社会的取り決めに関わる項目を遵守していない場合には継続取引をしない場合があります。

サプライヤー評価のフロー図
サプライヤー評価のフロー
  • ※ 企業倫理には、法令遵守、製品安全、機密情報管理、人権、労働、安全衛生、知的財産権保護などを含む

キヤノンは、主要事業製品の部品/材料サプライヤー(以下、主要サプライヤー)に対しては、RBAのSAQを用いて、労働・安全衛生・環境・倫理に関するリスクの特定に取り組んでいます。2023年は、385社に対して調査を実施し、378社(512拠点)より回答を得ました。回答が得られなかったサプライヤーについては、個別確認を実施しています。結果として、リスクが高いと特定された主要サプライヤーはありませんでしたが、労働・安全衛生・環境・倫理の各項目の結果を主要サプライヤーにフィードバックし、弱点を把握して、今後の改善に生かすように要請しました。

また、日本およびアジアの主要サプライヤー数社について、SAQの回答内容の検証や、実地確認を適宜実施しています。

さらに、主要サプライヤーについては、RBA行動規範に関する同意書への署名をお願いしています。2023年に調査を実施した主要サプライヤー385社のうち、373社(96.9%)から同意を得ました。

このほか、2022年より、主要事業の生産拠点において、警備、清掃、食堂業者などの構内請負会社、設備や寮の管理会社、人材派遣会社などに対して、労働、安全衛生、環境、倫理に関するリスク評価を実施しています。2023年は、主に以下の項目ついてリスクが特定され、サプライヤーと連携して改善に取り組みました。

主要サプライヤーからのRBAのSAQ回答率:98.2% / 主要サプライヤーからのRBA行動規範に関する同意書取得率:96.9%

雇用に関する労働者の費用負担

制服などの着用が必要とされる場合に労働者がそれらを購入し、退職時に返金されている事例を確認した。サプライヤーに対して労働者が制服などの費用を負担しないよう指導し、サプライヤーとの契約書に同要求事項を入れ、再締結した。

避難訓練の頻度

避難訓練を年1回以上の頻度で実施できていなかったサプライヤーに対し、最低でも年1回の避難訓練の実施を要請し、避難訓練実施計画書を確認した。

文書記録の管理について

環境に関する法的許可、免許に関する最新の文書記録がないと回答したサプライヤーに対し、適用される法規制や免許を特定し、最新の記録を保持するしくみを構築するよう要請した。

安全衛生コミュニケーション

高所や高電圧などの危険をともなう作業がある、または、危険に関する情報表示に不備があるサプライヤーに対し、リスクアセスメントの実施と、保護具の使用および労働者が理解できる言語での危険情報の表示を要請した。

個人情報の管理

暗号化などの適切なアクセス制限を行って個人情報を管理していないと回答したサプライヤーに対し、パスワードの設定や保管庫の施錠などによる適切な管理を要請した。

グリーン調達とサプライヤーへの働きかけ

環境の分野では、キヤノンはサプライヤーへの要求事項を定めた「グリーン調達基準書」を策定し、サプライヤーとの取引において遵守を必須条件としています。具体的には、「事業活動の管理」「物品の管理」の2つの視点での管理を車の両輪ととらえ、次の図中のA~Dの4つの枠組みが有効に機能していることを要求事項としています。万が一、サプライヤーが環境にマイナスの影響を及ぼした場合には直ちに是正措置を求め、改善状況を確認しています。

グリーン調達基準の要求事項の考え方
グリーン調達基準の要求事項の考え方

地球環境保全活動を進めるために、サプライチェーンを通じたサプライヤーに、事業活動の環境負荷低減に向けた環境マネジメントシステムの構築、運用を要求しています。特に製品含有化学物質については、グリーン調達基準の要求事項に加え、部品・材料の含有化学物質情報を社内システムにて一元管理する体制を構築し、製品への禁止物質の混入を未然に防いでいます。

サプライヤーにおける環境汚染の未然防止に向け、キヤノンはこれまでもサプライヤーの事業活動のしくみ、パフォーマンスに関する状況・是正確認を行ってきましたが、リスク管理をより一層強化する取り組みを進めています。たとえば、強化される法規制に確実に対応していくため、新興国・地域における排水や廃棄に関する法規制情報の収集・分析の強化を図っています。また、重金属を多く使用することから、排水処理に関わる環境汚染リスクが相対的に高い「めっき」工程について、リスク管理を強化しています。キヤノンの2次サプライヤーに該当するめっき業者のなかには、排水処理業者に委託しているケースもあることから、排水処理業者も含めた遵法確認を行っています。このようにリスク管理の対象範囲を拡大することで汚染の未然防止に努めています。

グリーン調達活動

製品含有化学物質の管理体制
製品含有化学物質の管理体制
中国公衆環境研究中心(IPE)と連携した「サプライチェーンの環境リスク低減」

キヤノンは、中国の環境NGOである公衆環境研究中心(IPE)が公開するサプライヤー情報をもとに、サプライチェーンの上流に位置する2次・3次などの中国国内のサプライヤーに対して、環境リスク削減に向けた勧告や改善を行っています。定期的にIPEと情報共有を行い、ベストプラクティスを共有することで、サプライチェーン全体の環境リスク低減を推進しています。

ステークホルダーの声

キヤノンは長年、IPEブルーマップ・データベースを用いてサプライチェーン管理を展開し、サプライヤーの環境違反行為の是正を推進し、サプライチェーン全体の環境負荷低減に積極的に貢献してきました。IPEグリーンサプライチェーンCITI(Corporate Information Transparency Index)の評価で、キヤノンは10年連続の業界トップ10にランキングされています。また、企業自身や企業のサプライチェーン全体にわたる気候変動への取り組みを評価するCATI(Corporate Climate Action Transparency Index)でも、業界上位にランクインしています。今後もキヤノン、IPEの双方で協力しながら、環境負荷低減の推進を加速させていきたいと考えています。

馬軍 氏 公衆環境研究中心 主任
馬軍 氏
公衆環境研究中心 主任

サプライヤーとの連携

キヤノンは、「EQCD思想」を実践するために、サプライヤーとの協力関係を強化しています。

具体的には、「調達方針説明会」において、環境推進の取り組みとして、サプライチェーン全体でのCO2排出量の可視化、サプライヤーのCO2排出量削減促進、低CO2排出材料・部品の採用など、キヤノンがめざす2050年ネットゼロに向けた施策をサプライヤーに説明しています。

このほか、品質分野においては、不良品の解析と要因推定を行い、その結果をもとにサプライヤーと連携し、工程改善を実施して品質向上を図っています。

こうしたコミュニケーションを通じて、サプライヤーとの情報共有、連携強化を図り、ともに成長していくことをめざしています。

キヤノンの環境保証の考え方 「EQCD思想」

サプライチェーンにおけるリスクに関する連絡窓口

キヤノンではサプライチェーンに関する懸念について社内外問わず匿名で連絡できる窓口を設けています。児童労働や強制労働の発生など人権、労働安全衛生などに関する具体的な懸念や情報がある場合には、この窓口を通じて通報ができることを「キヤノンサプライヤー行動規範」に記載し周知しています。

責任ある企業行動に関する通報窓口

責任ある鉱物調達への取り組み

キヤノンを含め多くの企業が製造・販売する製品には、さまざまな鉱物由来の材料が使用され、世界中の原産地から多様なサプライチェーンを経由して調達されています。これらの中には鉱物の採掘地や製錬所などの加工先において、武装勢力の関与、深刻な人権侵害や環境破壊が指摘されるものがあり、紛争地域や高リスク地域を把握して、人権・環境リスクが高い事業者から供給される材料の使用を回避することが企業の社会的責任の一つとして求められています。

キヤノンはお客さまに安心して製品をお使いいただくため、取引先や業界団体と協力しながら、責任ある鉱物調達の取り組みを進めています。

責任ある鉱物調達に関するキヤノングループの基本方針

デュー・デリジェンス

キヤノンは、鉱物の原産国調査ならびにデュー・デリジェンスの実行において、経済協力開発機構(OECD)が発行する「OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンスガイダンス(OECDガイダンス)」記載の5段階の枠組みに従って取り組みを進めています。

グループで統一した方針と調査・報告体制を整えるとともに、調査対象となる鉱物や金属が含まれている製品を特定し、その部品や材料について、サプライチェーンをさかのぼった調査を実施し、世界の紛争地域や高リスク地域に所在する人権・環境リスクを特定するデュー・デリジェンスを実施しています。

リスクの特定と評価

アフリカのコンゴ民主共和国(DRC)およびその隣接国で産出されるスズ、タンタル、タングステン、金(3TG)は、その一部が武装勢力の資金源となり、深刻な人権侵害や環境破壊、違法採掘などを引き起こしているとして紛争鉱物と呼ばれています。キヤノンは、2013年からアフリカのDRCおよびその隣接国から産出される3TGのリスク調査を継続しています。

また、2021年にはEU紛争鉱物規則の運用が開始されました。キヤノンは本規則の適用を受けませんが、DRCおよびその隣接国に限定しない、紛争地域や高リスク地域にも調査範囲を拡大しました。

さらに、3TG以外の鉱物の調達リスクに関しても世界的な関心が高まっており、特に、リチウムイオンバッテリーなどに使用されるコバルトについて、採掘場における児童労働、人権侵害が懸念されています。キヤノンでは2021年からコバルトの調達リスクの調査を開始しました。

上記のリスクを特定するため、デュー・デリジェンスでは、Responsible Minerals Initiative(RMI)が公表する標準調査票であるConflict Minerals Reporting Template(CMRT)とExtended Minerals Reporting Template(EMRT)を活用しています。必要に応じてキヤノン独自の調査票も併用しています。

  • ※ 責任ある鉱物イニシアティブの略で、紛争鉱物対応で主導的な役割を果たしている国際的なプログラム

リスク低減に向けた取り組み

鉱物の原産地や製錬所の特定には、サプライヤーの協力が欠かせません。キヤノンは調査マニュアルなどを作成して取引先の調査を支援するとともに、調査の結果、著しいリスクが発見された場合には、サプライヤーに対しリスクの低いサプライチェーンへの切り替えを要請し、リスク軽減に取り組んでいます。

また、懸念されるリスクを早期に認識するため、公式Webサイトに「鉱物リスクに関するご連絡窓口」を設置しています。キヤノン製品のサプライチェーンに関連して、紛争地域および高リスク地域における鉱物の採掘・取引・取り扱い・輸出をめぐる具体的な懸念や情報(紛争地域における武力勢力の資金源や人権侵害となっている事実など)がある場合は、この連絡窓口に通報することができます。

鉱物リスクに関するご連絡窓口

業界団体との連携

キヤノンは、2015年4月より、鉱物リスクの問題解決に注力する国際的なプログラムであるRMIに加入し、その活動を支援しています。

日本国内では、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の「責任ある鉱物調達検討会」の主要メンバーとして活動しています。また、JEITAと主要日系自動車メーカーとの協議体であるコンフリクト・フリー・ソーシング・ワーキンググループ(CFSWG)にも参加しています。

2023年調査と情報開示

2023年の調査では、調査対象のサプライヤーにCMRTおよびEMRTを送付し、CMRTについては約94%、EMRTについては約88%から回答を得ました。(いずれも2024年3月31日時点)。

回答があった範囲内においては、重大な人権・環境リスクを明示するものはありませんでした。しかし、複雑なサプライチェーンをさかのぼる調査においては、製錬所の特定が難しい、不明回答が多いなどのさまざまな課題が生じるため、キヤノンではさらなるリスクの特定と改善に努めています。

キヤノンでは、OECDガイダンスに従い、キヤノングループにおける調査結果、調査体制、リスク分析、特定された製錬所の情報などを「紛争鉱物報告書」にまとめ、毎年キヤノンのWebサイトで開示しています。

この報告書については、キヤノングループの鉱物調査への取り組みが国際的な基準であるOECDガイダンスに合致していることを確認するため、独立した専門家による監査を受け、合理的保証を受けています。

また、2023年は生産会社8拠点においてRBAのVAP監査を受審し、RBA行動規範(D.倫理 7.責任ある鉱物調達)にもとづく要求基準に適合していることが外部監査機関により確認されました。

紛争鉱物報告書(英文)

現代奴隷法への対応

2015年に英国で現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015)が制定され、英国で事業活動を行う一定規模の企業は、自社およびそのサプライチェーンにおいて強制労働、人身取引、児童労働のリスクを確認し、年次のステートメントを公表することが義務づけられました。また、2018年には豪州においても現代奴隷法が制定され、豪州で事業活動を行う一定規模の企業は、サプライチェーンおよび自社の事業活動における強制労働などのリスクを評価し、その軽減措置について報告することが義務づけられています。

キヤノンでは毎年、生産拠点および調達先に対して人権リスクを確認し、この結果にもとづき法の適用対象となるグループ会社がステートメントを公表しています。

また、キヤノンメディカルおよびアクシスでは、同法にもとづきそれぞれステートメントを公表しています。

Canon Europa N.V.、Canon Europe Ltd.、Canon(UK)Ltd.のステートメント(英文)
Canon Australia Pty Ltd.のステートメント(英文)
キヤノンメディカルのステートメント(英文)
アクシスのステートメント(英文)(139KB)