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救急医療を支えるX線CT 救急医療を支えるX線CT

高精細画像と自動化技術で検査をサポート

救急医療を支えるX線CT

地域医療の中核を担う福岡市の白十字病院で、AIによる自動化技術※1などの機能を備えたキヤノンのCTが重要な役割を果たしています。患者さんに安心感を与えながら、迅速な対応が求められる救急診療現場の効率化に貢献しています。

2023/05/31

救急医療で迅速な画像診断が可能に

社会医療法人財団白十字会 白十字病院(以下、白十字病院)は、救急医療のニーズが高まるなか、新病院への移転を機に新しいコンピュータ断層撮影(Computed Tomography、以下、CT)装置の導入を検討。そこで選ばれたのが、キヤノンメディカルシステムズ(以下キヤノンメディカル)のCTです。

X線を利用して身体の内部を画像化するCT検査は、脳卒中や心筋梗塞など、緊急対応の診断・診療に欠かせません。

白十字病院では、広範囲の断層撮影を高速に行えるキヤノンメディカルのフラッグシップモデルで一回転の撮影範囲が160mmである320列CT(以下320列CT)を2021年4月に導入。救急部門や各診療科の検査に活用し、医師や診療放射線技師から高い評価を得ていました。病院の新築移転後は、年間約4,000件を超える救急搬送を受け入れ、CT検査が1日50件を超えてきたため、2022年2月、高速連続回転で撮影でき 、装置サイズもコンパクトな80列マルチスライスCT(以下80列CT)を導入しました。

社会医療法人財団白十字会 白十字病院

1982年に福岡市に開設された、健康なまちづくりに貢献する地域の中核病院である白十字病院

社会医療法人財団白十字会 白十字病院 渕野 泰秀 病院長

「地域医療支援病院※2として、ニーズが高い救急医療を中心に、しっかりとした体制を整えています」と語る渕野 泰秀 病院長

キヤノンメディカルの80列CT導入の決め手について、白十字病院の渕野泰秀病院長は次のように話します。

「素早く全身を撮影でき、既存の320列CTと同等の高精細画像を得られること、さらにAIを活用した自動化技術※1によるサポート機能があり、検査効率の向上も期待できました。」

80列CTは救急センターに隣接した放射線部門の高度画像センターに設置され、救急患者さんがすぐにCT検査を受けられる体制が整えられています。使用開始から1年が経過し、渕野病院長は次のように評価しています。

「救急医療に対する高度で迅速な画像診断が可能になり、期待どおりの役割を果たしています。特にコロナ禍の状況では、患者さんの待ち時間を短縮でき、感染症対策にも役立っています。」

位置決め用画像を活用し、救急処置までの対応を迅速に

従来のCTでは、本撮影前に撮影範囲を決めるための位置決め用画像を取得した上で、それをもとに撮影範囲を決定し、疾患部分を撮影していました。しかし、撮影技師の経験やスキルに左右されていたため、撮影範囲不足で画像欠損などにより再撮影を行うこともありました。CTを操作する診療放射線技師の山口広之技師は、この80列CTは最初の位置決め撮影で3次元データにもとづく画像を取得し、自動で撮影範囲を決定する機能が備わっており、検査時間の大幅な短縮につながっていると話します。

社会医療法人財団白十字会 白十字病院 放射線技術部 山口 広之 技師

社会医療法人財団白十字会 白十字病院
放射線技術部 山口 広之 技師

さらに、この位置決め用画像で体の断面まで見ることができるため、本撮影前に治療方針が立てられることに大きなメリットを実感しています。

「たとえば、手がしびれている患者さんの位置決め撮影時に、頭部画像で脳出血なのか、脳梗塞によるものなのかを推測できます。脳の疾患のように、一刻を争うような場合においても位置決め撮影の段階から早期に治療方針が検討できるので役立っています。」

緊急処置が必要な患者さんへの適切な対応のために、疾患の疑いがある部位を迅速に見つけることができ、救急処置の効率化につながっています。

低線量での撮影による3次元データにもとづく画像を取得
AI技術※1を活用した画像解析により撮影範囲を自動設定

救急患者さんを動かさずに素早く撮影準備

この80列CT導入後、患者さんがCT室に入室したあとの技師の動きが大きく変わったと山口技師は言います。これまでは患者さんにCTの寝台に寝てもらったあと、装置本体のボタン操作に加えて、患者さんを動かして適切な撮影開始位置に調整するために時間がかかりました。この80列CTでは、人体を撮影する架台部(以下、ガントリ)に内蔵された2台のカメラ映像をもとに患者さんの体位を認識。AIを活用した技術※1で撮影開始位置を自動で算出し、タッチパネルの寝台移動ボタンを押すだけで、患者さんを動かさずに、適切な撮影開始位置まで寝台を素早く移動させることができることに、山口技師は大きなメリットを実感しています。

2台のキヤノン製カメラの映像と、ディープラーニングを用いて設計した姿勢推定モデル※1により、患者さんの骨格特徴から関節位置などを検出

「患者さんを動かさなくて良いのは、患者さんにとってもメリットです。また、救急搬送の患者さんで体が動かせない場合も、寝台は左右にスライドできる※3ため、ポジショニングする時間が大きく短縮しました。」

患者さんに安心を提供できるCT

CTは大きく、患者さんが恐怖を感じることもあるため、サイズやデザインも重要です。80列CTはコンパクトでありながら、ガントリは800mmの大開口径を実現しており、山口技師は、患者さんからの評判が良い、と話します。

「検査空間が広いので、患者さんが検査時に感じる圧迫感を軽減でき、装置本体もきれいなデザインだという声が患者さんからも聞かれており、安心感につながっているのではないかと思います。また、救急患者さんが運ばれた際など、肘が張るような体位でも、装置に体が当たりにくいので安心です。」

さらにコロナ禍では、感染対策が必要となり、装置の消毒など衛生管理を徹底するため、従来の装置では、検査後の清掃に要する時間や労力がかかっていましたが、
「80列CTになって、タッチパネル式で装置の凸凹が少ないことで清掃がしやすくなり、患者さんの検査待ちの時間を短縮でき、安心できる検査環境を提供できています。」

また、X線照射による医療被ばくのリスクは、患者さんはもちろん、医療従事者にとっても重要な問題です。80列CTは、銀素材を主体として開発したX線フィルターで照射量を低減する撮影技術や、ディープラーニングを用いて開発した画像処理技術※1で画像を高精度にするなど、低いX線照射量で検査を可能にしています。白十字病院は、医療被ばく低減施設(日本診療放射線技師会)の認定を受けており、被ばく線量のモニタリングを続けて、患者さんが安心できる放射線診療に取り組んでいます。

シンプルな操作性で習得が容易に

CTは、操作を習得するまでに時間を要しますが、若い技師は少し教えるだけで、装置を使えるようになる、と山口技師は話します。

「CTのインターフェースが一新され、シンプルで使いやすさを感じています。特にスマホ世代といわれる若い技師は、直感的に操作できるからか、操作方法を習得するスピードが速く、驚きました。これからの医療を担っていく若い世代が使いやすいという点はとても重要だと思います。」

撮影終了後はデータを選択するだけで、部位や検査種別ごとにあらかじめ設定しておいたレイアウトで画像を表示させることができるなど、確認作業の効率も向上しています。

「27インチの大画面で画像を確認することが可能になったことに加え、撮影が終了したらすぐに検査の種類や部位に適した断面像や3D画像を確認できます。特に一刻を争う救急医療では、技師の画像処理を待たずに医師が結果を参照して処置に進めることができるのは、大きなメリットです。」

画像を確認したいデータを選択

プリセットしたレイアウトに自動で画像を表示

これからの医療をサポートする技術開発に期待

白十字病院は、地域医療支援病院としての役割を果たすためにも、キヤノンメディカルのCTに期待するところが大きいと話す渕野病院長は、さらに医療界の未来にも目を向けています。

「医療界でもDX化が進んでいる現在、キヤノンの技術で将来の医療界をサポートしてくれることを望んでいます。そのなかでも特に、今回の80列CTのようにこれからの医療を支える若い世代が使いやすいような製品開発と、今後も起こりうる感染症への対応を念頭に置いた技術開発に期待しています。」

患者さんに安心していただくとともに、医療従事者が抱える課題の解決に向けて、キヤノンは新しい技術で貢献していきます。

  • ※1 設計の段階でAI技術を使用しており、本システムは自己学習機能を有していません
  • ※2 (1)紹介患者への医療提供(かかりつけ医への逆紹介も含む)(2)医療機器の共同利用(3)救急医療の提供(4)地域の医療従事者への研修の実施、の4つの役割・機能などを満たした医療施設。都道府県知事が承認する
  • ※3 本機能はオプション機能となります

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