私たちが暮らす地球には、宇宙空間からの光が絶え間なく届いています。
地球に恵みをもたらす太陽光をはじめ、宇宙からの光のいろいろを見てみましょう。
宇宙空間には、さまざまな波長の波が降り注いでいます。可視光のほか、目に見えない赤外線や紫外線、ガンマ線やX線、電波などがあります。これらは、電場と磁場が交互に振動しあう波となって何もない宇宙空間を伝わるもので、これらを総称して「電磁波」といいます。光も電磁波の一種です。地球は大気におおわれていますから、地上に届く電磁波は、可視光、近赤外線、電波の一部です。このことは、地球上の生命の存在とも深く関わっています。
地球上の生命は、太陽が放出する光の恩恵を受けています。太陽から地球に届くエネルギーは、1分間に1平方cmあたり約2カロリー(太陽定数)。この数字から計算すると、太陽は、毎秒1兆トンの1万倍の石炭を燃やすのと同じエネルギーを宇宙空間に放出していることになります。太陽光がもたらす地球への恵みのうち、もっとも多大なものは植物による「光合成」でしょう。本来、光のエネルギーは物体に吸収されたとき、熱に変わって物体の温度を上げます。蛍光や燐光が出る場合もありますが、多くの場合は物質に何の変化も起こりません。
しかし、ときには光によって物質が化学反応することもあります。これを「光化学反応」といいます。光化学反応は赤外線では起こらず、波長の短い可視光や紫外線が吸収されたときに起こるのがほとんどです。光合成も、光化学反応の一種です。植物は、太陽光エネルギーを利用して、二酸化炭素と水からブドウ糖を合成し、さらに、デンプン、セルロースなどを生成します。つまり、太陽光エネルギーをブドウ糖というかたちで蓄積します。人間を含む動物はすべてこれら植物を食べることによって間接的に太陽光エネルギーを取り込み、光合成の際に発生する酸素を吸って生きています。つまり、太陽光は地球上の生命の源でもあるのです。どのようにして植物が光合成をしているかは、いまだ詳細が解明されていませんが、緑色植物では細胞内にある葉緑体が、重要な働きをしていることがわかっています。
地球は、表面を大気がおおっています。宇宙からやってくる電磁波のうち、大気に吸収されて地表にまで届かない波長の電磁波があります。横の図をよく見てください。地球の大気は、可視光よりも波長の短い紫外線やX線、ガンマ線の大部分を吸収してしまうのです。エネルギーの大きいX線やガンマ線は、ストレートに地上に届くと生物の細胞を傷つけてしまいます。地球の大気は、地上の生物を守ってもいるのです。
また、波長の長い電波や遠赤外線も、地表には届きません。地上で一般に観察される電磁波は、大気に吸収されにくい可視光、近赤外線、電波の一部となります。この波長領域を「大気の窓」といいます。地上からの天体観測は、大気の窓を利用した光学望遠鏡や電波望遠鏡で行われ、大気の窓が閉じている赤外線やX線、ガンマ線は、気球や天文衛星を利用して大気圏外で観測します。
可視光以外でも、紫外線や赤外線は、身近な電磁波です。可視光よりも波長の長い赤外線は、電化製品でもおなじみです。赤外線の中でも波長が2500ナノメートル以下のものを「近赤外線」といい、テレビやビデオのリモコン、光ファイバー通信に利用されています。波長が2500ナノメートル以上のものが「遠赤外線」で、コタツやコンロに利用されています。
可視光よりも波長の短い紫外線は、エネルギーが大きく、皮膚やカーテンを日焼けさせる原因となります。特に波長が315ナノメートル以下の紫外線は生体の細胞の中のDNAを破壊する危険な面をもっています。紫外線は殺菌作用があるため、医療用具などに応用されていますが、大量の紫外線は皮膚ガンなどの病気を誘発し、生態系全体へも影響も与えることがわかっています。近年、クローズアップされている地球環境問題のひとつに、オゾン層の破壊がありますが、これは、この紫外線の悪影響が懸念されているためです。上空25km付近には15ppmというかなり濃いオゾン層があり、このオゾン層は生体に極めて有害な波長350ナノメートル以下の紫外線を吸収、カットしています。
ところがオゾン層の一部が冷蔵庫やクーラーに使用されているフロンという気体によって破壊されつつあります。オゾン濃度が極端に薄い「オゾンホール」が、南極などで観測されています。
光化学反応によって起こる環境問題には、「光化学スモッグ」もあります。自動車の排気ガスが光によって化学反応して刺激性物質となり、大気汚染を引き起こすのです。これは、風のない暑い日に交通量の多い道路周辺で発生します。自動車のエンジンなどからは、一酸化窒素が排出されます。空気中に出るとすぐに酸素分子と反応して、二酸化窒素になります。二酸化窒素は褐色で可視光をよく吸収し、光化学反応が起こって一酸化窒素と酸素原子に分解します。ところが、この一酸化窒素はまたすぐに酸素分子と反応して二酸化窒素になってしまいます。
つまり、光によって少量の一酸化窒素から多量の酸素原子ができてしまうのです(酸素原子ふたつからできている酸素分子を分解し、酸素原子を作り出す作用をしているのです)。できた酸素原子は酸素分子と結合してオゾンとなったり、排気ガス中のほかの有機化合物と結合して過酸化物となります。オゾンも過酸化物も、目やのどを強く刺激します。
地球環境問題には、「温室効果」もあります。農業や園芸では、ガラスやビニールで作った温室が多用されています。ガラスやビニールは波長が400~3000ナノメートルの可視光線、近赤外線は通しやすいけれども、10000~20000ナノメートルの赤外線は通しにくい性質をもっています。赤外線は熱の放射の主役で、このため温室内に熱がたまるのです。地球については、ガラスやビニールと同じ働きをするものに雲などの水蒸気や二酸化炭素、メタン、フロンなどがあります。これらは「温室効果ガス」と呼ばれています。
これらの気体は、酸素と窒素を主体とする空気よりも比熱が高く、一度上がった温度がなかなか冷めにくいのです。地球上の気温は大気と、植物・動物の生態系の微妙なバランスのうえに決定されてきました。ところが、最近の二酸化炭素の急激な増加によって温室効果が強まり、大気の温度が上昇することが懸念されているのです。