精彩に描かれた、平安の雅び。
土佐光吉の真筆とされる数少ない大画面作品。画中には、光吉が最も得意とした王朝文学の傑作「源氏物語」の関屋、御幸、浮舟の場面が描かれている。画面全体は、非常に精彩に描かれ、表情や服装の細かな部分まで見て取れる。左隻の左下には本図が光吉筆で、孫の光起が一部を補筆したとする、ひ孫の光成による作品の来歴を記した墨書き(紙中極:しちゅうぎめ)があり、土佐派の繋がりを示す資料としても価値が高い。また、国宝の俵屋宗達筆「関屋澪標(みおつくし)図屏風」は、本作を手本にしたとも言われ、当時の源氏絵描きの第一人者として、光吉を語る上で興味深い。
その貴重な「源氏物語図屏風」が、高精細複製品として、海外から里帰りしました。光吉は、後に土佐派の跡目争いにより、京を去ってしまうのですが、彼が描いた、関屋、御幸、浮舟の場面は、すべて京の都を離れたシーン。「源氏物語図屏風」は、その煌びやかな画面とは相反する、光吉の気持ちが描かれているのかもしれません。
寄贈先:平等院 原本所蔵:メトロポリタン美術館
Facsimile of a work in the collection of The Metropolitan Museum of Art:Scenes from The Tale of Genji: "The Royal Outing," "Ukifune," and "The Gatehouse", Tosa Mitsuyoshi (Japanese, 1539-1613), Momoyama period (1573-1615), mid-16th - early 17th century. Pair of four-panel folding screens; ink, color, and gold leaf on paper, Image (each screen): 65 1/2 in. × 11 ft. 8 in. (166.4 × 355.6 cm), Fletcher Fund, 1955 (55.94.1, .2) Image c The Metropolitan Museum of Art.
綴プロジェクト作品「源氏物語図屏風」(高精細複製品)で見ることのできる絵の特徴をご覧ください。
宇治平等院
京都市郊外の宇治は源氏物語「宇治十帖」の舞台。現在の平等院の地は源氏物語のモデルとも言われる嵯峨源氏の源融が別荘を営んでいた。永承7年(1052)、時の関白藤原頼通が、父・道長より譲り受けたこの別荘を仏寺に改め、平等院とした。その翌年の天喜元年(1053)には阿弥陀堂(鳳凰堂)が落慶し、堂内には、平安時代の最高の仏師定朝によって制作された丈六の阿弥陀如来坐像が安置され、華やかさを極めたとされている。約1000年前に建立された建造物や仏像が今に伝えられ、世界遺産にも登録されている。
〒611-0021 京都府宇治市宇治蓮華116
メトロポリタン美術館
アメリカ合衆国ニューヨークにある世界最大級の美術館。1866年、ジョン・ジョンストンがアメリカに国際的規模の美術館が存在しないことを憂い、設立構想を訴えたとき、美術館の建物は愚か1点の絵画さえ所有していなかったが、6年後に開館。その後は基金による購入や、さまざまなコレクターからの寄贈に寄って収蔵作品数を増やし、現在では絵画・彫刻・写真・工芸品ほか家具・楽器・装飾品など300万点を所蔵。その特色は、コレクションの幅がきわめて広く、古今東西問わずあらゆる時代、地域、文明、技法による作品を収集していることにある。