龍虎に宿る、等伯の覇気。
右隻に、黒雲の中から現れる龍。左隻に、悠然と待ち構える虎。「龍吟ずれば雲起こり、虎嘯(うそぶ)けば風生ず」という禅語の世界を表す、「龍虎図屏風」。両隻の端に龍と虎を配し、広く取られた空間から緊張感が漂う。龍は、輪郭線を主として描かれているのに対して、虎は、ほとんど輪郭線を用いず、一本一本の毛や紋で対照的に描かれ、両者は覇気をまといながら対峙する。
本作は、「自雪舟五代長谷川法眼等伯筆六十八歳」の落款より慶長十一年(1606)、等伯最晩年の作品と分かる。
原本は、ボストン美術館に所蔵されており、高精細複製品が、大分県立美術館に里帰りしました。当時、画壇の頂点に君臨していた永徳率いる狩野派に、果敢に挑み続けた長谷川派の長、等伯。最晩年の円熟した等伯の絵は、その生き様まで感じられる覇気と緊張感に満ちています。
寄贈先:大分県立美術館 原本所蔵:ボストン美術館
All photographs c 2015 Museum of Fine Arts, Boston. Reproduced with permission.
綴プロジェクト作品「龍虎図屏風」(高精細複製品)で見ることのできる絵の特徴をご覧ください。
大分県立美術館
大分県立芸術会館の老朽化、絵画等の展示スペース確保のため2009年より構想着手、2015年4月24日開館。坂茂設計の透明度の高い、可変性に富んだ空間は「常に変化しながら成長するミュージアム」を体現する。大分と世界、古典と現代、美術と音楽など、さまざまな「出会い」をテーマにした企画展を通して感性や創造性に訴え、訪れる人が「五感」で楽しむことができる美術館を目指している。収蔵作品は「豊後南画」の礎を築いた田能村竹田、伝統的な日本画にモダンな切れ味を与えた福田平八郎や髙山辰雄、幾何学と色彩交響の抽象スタイルを確立した宇治山哲平、大正から昭和にかけて彫刻界をリードした朝倉文夫、竹工芸を芸術の域に高めた生野祥雲齋など大分ゆかりの作家を中心に5,000点にのぼる。略称「OPAM(オーパム)」。
〒870-0036 大分市寿町2番1号
TEL:097-533-4500 FAX:097-533-4567
ボストン美術館
アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンにある全米屈指の規模を誇る美術館。アメリカ独立100周年にあたる1876年7月4日に開館した。当時の所蔵作品は5,600点であったが、今では古代エジプトから現代アートに至るまで総数約50万点に及ぶ。活発な教育・普及・研究活動にも定評がある。隣接する美術学校は美術館と同年に開校され、現在ではタフツ大学との連携により学位プログラムを提供している。仏画・絵巻物・浮世絵・刀剣など日本美術の名品を数多く所蔵し、日本との関係が深いことでも知られる。モース、フェノロサ、ビゲローらの日本美術コレクションの多くがボストン美術館に寄贈されている。20世紀初頭には岡倉天心が東洋部長として在籍し、日本文化の紹介に努めていた。