竜虎に綴られた美学。
竜は、雨を呼び生命の源である春を象徴し、虎は、風を呼び生命の終焉である秋を象徴するとされる。雪村の「竜虎図屏風」は、緻密な表現で雄大な題材を描きながら、その中に、遊び心を持たせる個性的な表現をしている。神聖な竜虎の表情は、どことなくユーモラス。竜を睨む虎の姿は、猫のようであり、空に旋回する竜の顔も柔和で親しみが持てる。
原本は、米国のクリーブランド美術館に所蔵されており、高精細複製品が、神奈川・早雲寺に里帰りしました。常陸に生まれ、禅門で画を学び、各地を遍歴した雪村が、1550年代に鎌倉、小田原での活動中に描いたとされます。戦国時代、武士が群雄割拠する乱世の中で生まれた「竜虎図屏風」。京都の文化に縛られない、地方独自の芸術が発展した時代でもあります。そんな時代を生きた雪村は、この竜と虎に、独自の美学を綴ったのかもしれません。
寄贈先:臨済宗大徳寺派 早雲寺 原本所蔵:クリーブランド美術館
Facsimiles of Shukei Sesson (Japanese, 1504-1589). Dragon, Tiger. Pair of six-fold screens; ink on paper, 171.5 x 365.8 cm, 157.2 x 339.0 cm. The Cleveland Museum of Art. Purchase from the J.H. Wade Fund, 1959.136.1-2
綴プロジェクト作品「竜虎図屏風」(高精細複製品)で見ることのできる絵の特徴をご覧ください。
早雲寺
臨済宗大徳寺派。戦国時代を代表する武将のひとり北条早雲(1432-1519)の遺命により子の北条氏綱が大永元年(1521)に創建した小田原北条家の菩提寺。早雲・氏綱・氏康像などの像が残されている。天正18年(1590)豊臣秀吉による小田原城攻めでは最初に占領され豊臣方本陣となり、北条氏降伏とともに焼失。伽藍は寛政年間に再建され、箱根町の文化財に指定されている。方丈・高精細複製品「竜虎図屏風」などは通常非公開。
〒250-0311 神奈川県足柄下郡箱根町湯本405
クリーブランド美術館
アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランド市にある全米有数の美術館。1913年実業家・市民らにより「全ての人々の永遠の利益のために」創設された。本館は1916年竣工。収蔵品はアメリカ大陸・中世ヨーロッパ・東洋美術・印象派など近代美術から現代美術まで45,000点を数える。中でも古代から江戸、近代にまで及ぶ日本美術のコレクションは全米屈指の規模と質を誇る。