蕭白の奇想から現れた、巨大な雲龍。
縦165センチメートル、横10メートルもある漆黒の空間から、姿を現す巨大な龍。頭と尾の間に描かれたと考えられる四面の胴体部分は現在に伝わっていないが、そのスケールとダイナミックな構図、力強い筆さばきが見る者を圧倒する。まさしく大作であり、曽我蕭白の最高傑作であろう。
原本は、ボストン美術館に所蔵されており、高精細複製品が、京都市・天龍寺に寄贈され、日本に帰ってきました。
1911年以来、襖から剥がされた状態でボストン美術館に所蔵されていた蕭白の「雲龍図」。近年の修復作業により、本来の襖に近い状態に仕立て直されています。
そして、今では、天龍寺を訪れる多くの参拝者に感動や驚きを与えています。型破りな画風から奇想の画家と称される、曽我蕭白。その蕭白でも、自分が描いた「雲龍図」が、何百年の時を超え、世界中の人たちに驚きを与えているとは、さすがに想像しなかったことでしょう。
寄贈先:臨済宗天龍寺派大本山 天龍寺 原本所蔵:ボストン美術館
All photographs © 2015 Museum of Fine Arts, Boston. Reproduced with permission.
綴プロジェクト作品「雲龍図」(高精細複製品)で見ることのできる絵の特徴をご覧ください。
大本山天龍寺
京都・嵐山に建つ臨済宗の禅刹。後醍醐天皇を弔うために暦応2年(1339)足利尊氏が夢窓国師を開山として創建した。康永4年(1345)落慶。南禅寺を五山の上とし、天龍寺は長く五山の筆頭とされていた。大方丈から見える曹源池は夢窓国師作の借景式の庭園で、龍門瀑を中心に、後ろに嵐山・亀山・小倉山を観る。国の史跡・特別名勝第一号に指定され、1994年世界遺産に登録された。
〒616-8385 京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
ボストン美術館
アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンにある全米屈指の規模を誇る美術館。アメリカ独立100周年にあたる1876年7月4日に開館した。当時の所蔵作品は5,600点であったが、今では古代エジプトから現代アートに至るまで総数約50万点に及ぶ。活発な教育・普及・研究活動にも定評がある。隣接する美術学校は美術館と同年に開校され、現在ではタフツ大学との連携により学位プログラムを提供している。仏画・絵巻物・浮世絵・刀剣など日本美術の名品を数多く所蔵し、日本との関係が深いことでも知られる。モース、フェノロサ、ビゲローらの日本美術コレクションの多くがボストン美術館に寄贈されている。20世紀初頭には岡倉天心が東洋部長として在籍し、日本文化の紹介に努めていた。