謎多き絵師の大作。
俵屋宗達は、謎の多い絵師である。本人に関する歴史資料がほとんどなく、作品が残るのみである。この「雲龍図屏風」は、宗達の真筆とされる数少ない作品であり、大画面水墨画としては、唯一。雲や海の波間を、左隻の龍が上昇、右隻の龍は下降して対峙する。墨のにじみを巧みに使うたらしこみの柔らかな墨調の雲に、太く柔軟な線で描かれた龍が白く浮かび上がる。コントラストのある画面は、明るくひろやかな空間をイメージさせ、右隻の光焰(こうえん)にあるわずかな紅色が不思議な雰囲気を添える。
宗達を知る上でも貴重な「雲龍図屏風」は、門外不出のフリーア美術館から、高精細複製品として里帰りしました。寄贈先は、東京藝術大学大学美術館。いつでも見ることができる高精細複製品は、主に、研究の場で活用されています。俵屋宗達の作品は、芸術的価値の高さに加えて、歴史の謎を解くような知的好奇心が湧いてくる、不思議な魅力に溢れています。
寄贈先:東京藝術大学大学美術館 原本所蔵:フリーア美術館
Facsimiles of works in the collection of the Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington, DC: Gift of Charles Lang Freer F1905.229, F1905.230
綴プロジェクト作品「雲龍図屏風」(高精細複製品)で見ることのできる絵の特徴をご覧ください。
東京藝術大学大学美術館
明治20(1887)年の東京美術学校(東京藝術大学の前身)設置に先立つ時期から、教育資料として収集が行われてきた芸術資料は、文庫と呼ばれた図書館内に保存されてきた。1970年、芸術資料部門が独立し、音楽学部に保管されてきた楽器資料を加えて芸術資料館が発足。美術音楽両学部の共同利用機関として運営されてきた。1998年、美術館としての活動を発展すべく芸術資料館を大学美術館に改組。美術館として芸術資料の研究・保存・公開を行うだけでなく、制作と教育・研究の現場である芸術大学という特質を合わせて我が国に前例のない実験的な美術館として存立する。展覧会の開催会期以外は閉館している。
〒110-8714 東京都台東区上野公園 12-8
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
フリーア美術館
アメリカ合衆国首都ワシントンD.C.にある美術館。実業家、チャールズ・ラング・フリーアによって設立。スミソニアン協会が管理・運営するスミソニアン博物館群の一つ。1923年に一般公開となった。国宝級の日本美術作品を含む豊富なアジアの美術品を中心に、19世紀・20世紀初頭のアメリカ美術など幅広いコレクションを所蔵しているが、フリーアの遺言により一切の作品が門外不出となっている。