気候変動
基本的な考え方/目標と実績

製品ライフサイクルのあらゆるステージでGHG排出量削減に努めています。

キヤノンは、環境目標の継続的な達成、さらには、事業活動を通じたCO2排出量の2050年ネットゼロをめざし、製品のライフサイクル全体(「サプライヤーでの原材料や部品の製造」「事業拠点活動」「物流」「お客さまの使用」)でのCO2排出量を把握し、技術を通じそれぞれのステージでその削減に努めています。

2050年にめざす姿

製品ライフサイクル(スコープ1~3)を通じたGHG排出量を2050年にネットゼロとすることをめざします。

2030年目標

  • スコープ1、2のGHG排出量を2022年比で42%削減、スコープ3(カテゴリー1、11)のGHG排出量を2022年比で25%削減します。
  • 「ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数年平均3%改善」(原単位目標)に取り組み、この目標を継続的に達成することで、2008年比で50%の改善をします。

GHG排出量削減イメージ

スコープ1+2

スコープ1+2

スコープ3(カテゴリー1、11)

スコープ3(カテゴリー1、11)

  • スコープ1:直接排出(都市ガス、LPG、軽油、灯油、非エネルギー系温室効果ガスなど)
  • スコープ2:間接排出(電気、蒸気など)
  • スコープ3:サプライチェーンでの排出(1:購入した物品・サービス、11:販売した製品の使用)

キヤノンのGHG削減の取り組み(~2030年)

キヤノンは、自らの事業活動だけでなく、サプライヤーにおける原材料や部品の製造、販売店などへの輸送、お客さまの使用、廃棄・リサイクルにいたるまで、製品ライフサイクル全体で気候変動による影響をとらえ、GHG排出量削減に取り組んでいます。

2050年までにGHG排出量をネットゼロとすることをめざし、2030年までにスコープ1、2のGHG排出量を2022年比で42%削減、スコープ3(カテゴリー1、11)のGHG排出量を2022年比で25%削減を目標としています。なお、2030年目標については、科学的根拠にもとづいたGHG排出量削減目標の設定を推奨する国際イニシアティブであるSBTiの認定を取得しています。そのために、再生材を使用した製品の開発、製品の小型・軽量化、生産拠点での省エネルギー活動、製品使用時の省エネルギー、製品リサイクル、物流の効率化などさまざまな取り組みを推進しています。

TCFD提言への賛同

キヤノンは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の最終報告書「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」に賛同しています。以下の項目ではTCFDのフレームワークに沿って気候関連の情報を開示しています。

ガバナンス—気候影響に対する経営の管理体制

気候変動によるキヤノンへの影響や対応計画、目標については、サステナビリティ委員会の傘下の気候変動ワーキンググループ(以降、WG)で議論しました。気候変動WGは、各事業部門とコーポレート部門の幹部社員で構成され、議論した内容は、サステナビリティ委員会にて報告し、承認を得た上で、代表取締役CEOに報告しています。

目標達成に向けては、サステナビリティ推進本部が中心となり、キヤノン全体で活動を推進しています。目標の進捗については、毎月経営層に報告するとともに、年間のレビューを代表取締役CEOに報告しています。

グローバルな環境推進体制

戦略—複数シナリオを用いた、気候関連のリスク・機会の特定と財務影響の分析

キヤノンは、非財務情報開示で推奨されているTCFDフレームワークにもとづいたシナリオ分析を行い、バリューチェーン上のGHG排出量の削減を図る「緩和」と物理リスクへの「適応」の両面からのアプローチがキヤノンにとって重要と認識し、GHG排出量削減目標の達成、および気候関連の影響にレジリエントで持続可能なビジネスモデルの構築に向け、取り組みを進めています。

分析のために参照したシナリオ

シナリオ分析では、現在の政策の延長線上で経済活動が行われる「現行シナリオ」と、パリ協定の目標が達成されることを前提に、世界が2050年までのネットゼロ実現に向けてGHGの排出を抑制し、気候関連の政策や技術開発が現状以上の速度で進展する「1.5℃シナリオ」を選択しました。参照したシナリオは以下の通りです。

  • 現行シナリオ
    移行リスク:IEA APS、NGFS Current Policies
    物理リスク:IPCC RCP8.5
  • 1.5℃シナリオ
    移行リスク:IEA NZEシナリオ、NGFS Net Zero 2050
    物理リスク:IPCC RCP2.6

なお、キヤノンが事業を営む主要地域の気候関連政策や法規制、技術の進展、顧客の行動変容、市場環境なども考慮しています。

時間軸と影響度の定義

次の表の通り、時間軸については、キヤノンの中長期経営計画と整合した形で検討しています。影響度については、非常に重要、重要、軽微の3段階で検討しています。

時間軸
区分 時期
短期 2025年まで
中期 2030年まで
長期 2030年以降
影響度
区分 売上高への影響度
非常に重要 売上高±10%以上の変動要因になりうる
重要 売上高±5~10%程度の変動要因になりうる
軽微 売上高±5%未満の変動要因
  • ※各グループの影響度基準については、当該グループの売上高にもとづき判断しています

現行/1.5℃シナリオのもとでの事業環境の想定

キヤノンでは、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの産業別グループの事業によって気候関連のリスク・機会が異なるため、全社および各グループにおける主な気候関連のリスク・機会とその対応策、財務影響について検討を行いました。

現行シナリオのもとでの事業環境として、既存の気候関連の規制の継続、カーボンプライシングの導入、再生材やバイオプラスチックの普及、モーダルシフトの導入、顧客からの脱炭素要求と気候変動対応を意識した購買行動の拡大、各国の脱炭素に向けた産業政策の導入などを予想しています。1.5℃シナリオのもとでは、前述の環境がさらに厳格化し、進展するほか、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルをめざす動きが加速すると想定しています。

キヤノンに影響のあるリスク・機会要因と財務影響試算結果

低炭素経済への「移行」に関するリスク・機会の概要は以下の通りです。

移行リスク
政策・法規制
  • カーボンプライシング対応費用の増加
  • 規制に対応できない場合の売上の減少
  • 規制対応の設備投資の増加
市場
  • 再生材の採用による原価の増加
  • 他社製品が優位となった場合の売上の減少
  • 気候変動対応コストの価格転嫁が受容されない場合の売上の減少
技術
  • 気候変動対応のための研究開発費の増加
評判
  • 気候変動対応が十分でない場合のステークホルダーの懸念の高まりにともなう売上の減少
機会
資源の効率性
  • エネルギー効率改善による原価の低下
  • 共同配送、モーダルシフトによる物流費の低下
市場
  • ステークホルダーの評価向上にともなう売上の増加
  • 資金調達の多様化
エネルギー源
  • 低炭素エネルギー活用によるカーボンプライシングの影響の減少
製品/サービス
  • GX、資源循環対応製品の売上の増加
  • 低炭素製品の売上の増加
  • 適応製品の売上の増加

移行リスク・機会詳細—全社レベル

シナリオ分析の結果、カーボンプライシングが全社的に影響を受ける可能性のあるリスク要因であることが分かりました。キヤノンのスコープ1,2および3の排出量見通しにもとづき、2030年以降のカーボンプライシングの導入を想定した場合の影響額は、現行シナリオおよび1.5℃シナリオの炭素価格を使用した場合、2030年で約83~445億円、2050年で約43~403億円と試算しています。リスク対応策として、グリーン技術開発を通じて脱炭素化を図る活動をすでに行っています。たとえば、各拠点においては、搬送や加工など生産設備の動作単位まで電力を細かく分解し、隠れたムダを見つけ出すとともに改善ターゲットを浮き彫りにするなど、「電力の可視化」「削減ポテンシャルの分析」「削減施策の展開」の3つのステップで生産時の電力削減をめざす取り組みを進めています。電力コストの想定削減額は、2030年で約45~57億円、2050年で約97~121億円と試算しており、プラスの影響ももたらすことを確認しました。それぞれの事業特性を勘案して物流面での気候変動対応も進めており、その成果も機会としてとらえています。

さらに、全社共通で原材料調達におけるCO2排出量(スコープ3カテゴリー1)削減に取り組み、調達における低炭素部材の検討や今後の調達に向けた準備を行っています。取引先から収集した部品原材料CO2の実データをLCA(ライフサイクルアセスメント)に組み込むなど製品開発でLCAの手法を導入し、ライフサイクル全体で環境負荷低減をめざしています。

気候変動対応が十分でない場合、気候変動対応を重視するステークホルダーの懸念の増加による評価の悪化と販売機会逸失による売上の減少をリスクとして認識しています。対応策として、実効性のある気候変動対応の推進とステークホルダーへの適時かつ適切な開示を継続して行っていきます。さらに、気候変動対応の適切な開示により、投資家、顧客をはじめとするステークホルダーの理解と評価の向上や金融機関の投融資要件を満たすことによる資金調達の多様化も機会となるととらえています。

移行リスク・機会詳細—産業別グループ

産業別グループごとの分析では、プリンティング事業は、電機・電子業界に対する気候関連の規制や消費者選好の変化、競合他社との競争などの影響を受けることが予想されますが、規制動向の把握や規制対応のための研究開発・設備投資、調達要件の取得などリスク低減策はすでに計画に織り込まれており、試算の結果、現行シナリオ、1.5℃シナリオのいずれのシナリオ下でも大きな影響はないことを確認しました。低炭素製品の需要増にともなう販売機会の増加やエネルギー効率改善にともなうコスト削減が機会となり、プラスの影響があると見込んでいます。

メディカル事業では、欧州の顧客を中心にサステナビリティへの関心が高まり、省電力などが入札要件となる事例もあります。イメージング事業、インダストリアル事業においては、足元では規制や顧客からの要求は比較的低いものの、今後、要求が高まる可能性があります。そのため、新たな研究開発や設備投資が必要となる可能性を想定して試算を行いました。その結果、コスト増加のリスクはあるものの、事業を展開する地域における法規制動向の調査やエネルギー効率改善に向けた取り組みを始めており、影響は比較的小さいことが分かりました。エネルギー効率改善にともなう原価低減をはじめ、既存技術を活用した気候変動への適応に資する製品やGX推進など各国の産業促進策に合致した製品の販売機会増加など、機会の側面の方が大きいと考えています。

移行リスク(全社・産業別グループ)
移行リスク分類 リスク要因 全社/グループ 財務影響 発現時期 影響度 対応策
政策・法規制 カーボンプライシング 全社 対応費用の増加 中期~長期 軽微
  • 全社でのGHG排出量削減に向けた取り組み
既存製品に対する気候関連規制の強化 プリンティング 対応できない場合の売上の減少 短期~長期 軽微
  • 各種規制対応の研究開発・設備投資の継続(オフィス機器の省エネルギー制度である国際エネルギースタープログラム改定への対応、再生機開発など)
プリンティング 規制対応の研究開発費の増加、設備投資の増加 短期~長期 軽微
  • 規制動向に対応した研究開発計画および設備投資計画と係る費用計画の検討
メディカル 規制対応にともなう原価の増加 長期 軽微
  • 省エネ性能向上の取り組みの継続
インダストリアル 対応できない場合の売上の減少 長期 軽微
  • 規制措置(PFCsなど)に対応する製品開発、生産技術開発
技術 顧客の気候変動対応に関する要望の強化 メディカル 対応できない場合の売上の減少 長期 軽微
  • 省エネ関連の入札要件に合致した製品開発
インダストリアル 対応できない場合の取引制限および縮小にともなう売上の減少 長期 軽微
  • 顧客要望の変化に対応した低炭素製品開発、生産技術開発
市場 再生材の普及 プリンティング 再生材使用による原材料費の増加 短期~長期 軽微
  • 各種再生材の使用に関する検討・評価を実施
  • 材料メーカー集約による価格交渉、長期契約による価格保証および新規採用拡大の検討
  • 代替素材の情報収集
  • 代替素材の内製検討
競合他社との比較 プリンティング ライフサイクルCO2が他社よりも大きい場合の売上の減少 短期~長期 軽微
  • LCAを活用した研究・製品開発の継続
  • 製品ライフサイクル全体でのGHG排出量管理
顧客選好の変化 イメージング 気候変動対応コストの価格転嫁が顧客に受容されない場合の売上減 長期 軽微
  • 各国・地域の気候変動対応の価格受容調査の継続
機会(全社・産業別グループ)
機会分類 機会要因 全社/グループ 財務影響 発現時期 影響度 対応策
資源の効率性 エネルギー効率の改善 全社 電力費の削減による原価の低下 短期~長期 軽微
  • エネルギー効率改善の取り組みを全社で展開
物流費の低下 全社 共同配送、モーダルシフトによる物流費、販管費の低下 短期~長期 軽微
  • キヤノン内および他社との共同輸送/ラウンド輸送
  • モーダルシフトの適用拡大
エネルギー源 低炭素エネルギーへの切り替え 全社 カーボンプライシング影響低減にともなう費用の低下 中期~長期 軽微
  • 低炭素エネルギーの活用を含む多様な低炭素化手段を継続して検討
製品/サービス 低炭素製品の需要増加 プリンティング 販売機会の増加にともなう売上増加 短期~長期 軽微
  • 低炭素製品の開発(省エネルギー製品、製品の長寿命化、再生材の採用など)
  • 調達要件への対応(環境評価システム「EPEAT」登録、環境ラベル「ブルーエンジェル」など取得)
顧客選好の変化にともなう売上の増加 メディカル 販売機会の増加にともなう売上増加 短期~長期 軽微
  • 省エネ関連の入札要件に合致した製品の開発
気候変動への適応に資する製品の需要増加 イメージング 販売機会の増加にともなう売上増加 中期~長期 軽微
  • 気候変動への適応に資する製品の開発(防災用ネットワークカメラ、画像ベースインフラ構造物点検サービスなど)
各国の半導体産業促進策による製造装置需要の増加 インダストリアル GX推進による半導体需要増加にともなう売上増加 短期~長期 重要
  • パワー半導体向け半導体製造装置拡大
  • 新工場建設など、増産体制の整備
顧客選好の変化にともなう売上の増加 インダストリアル 販売機会の増加にともなう売上増加 短期~長期 軽微
  • 低消費電力製品の販売拡大(ナノインプリントリソグラフィおよび現行品のモデルチェンジなど)
  • プラスチックリサイクル対応製品の販売拡大(プラスチック選別装置)

物理リスク(気候変動による気象変化にともなうリスク)

キヤノンの施設や事務所は、世界中に点在しており、気候変動による自然災害は事業に影響を及ぼす可能性があります。気候変動による物理リスクについては、日本と海外の主要拠点を対象に、河川洪水、高潮、暴風などのリスクについて、世界資源研究所のAqueduct、自治体のハザードマップ、XDI社の自然災害リスク分析サービスなどの分析ツールを使用して検証した結果、国内外の生産拠点や事業所のうち、4拠点について河川洪水、高潮リスクが中程度または高いとの結果となりましたが、すでに止水板設置や雨水配管の改造、外周フェンスのブロック嵩上げなど、拠点の状況に応じて必要な施策を実施済みです。なお、これら4拠点の資産額がキヤノン総資産に占める割合は約3%となります。

今後も自然災害による被害および損失の影響を低減すべく、各種対応策を検討していきます。

シナリオ分析結果

バリューチェーン上では、特に、研究開発、調達、販売において、規制強化にともなう研究開発、原材料価格の変動、お客さまや取引先の低炭素製品への考え方や需要動向による影響があることが、シナリオ分析を通じて明らかになりました。

対応策を講じない場合は、いずれのシナリオにおいても販売機会の逸失やコスト増加をはじめとする財務上のリスクが生じる可能性があります。これらは配慮すべきリスクではありますが、すでに規制動向の把握や規制対応のための研究開発・設備投資、調達要件への対応など、リスク低減の取り組みを計画に織り込み済みです。

各シナリオ下で実施した複数パターンの財務シミュレーションを通じて、対応策については、現在実行中の取り組みや計画中のものを含め、財務に大きな影響を与えるものはないことを確認していることから、影響は限定的であると判断し、従来から実施している対応策に不足はなく、製品や生産拠点における取り組みの方向性が正しいことを再確認しました。

また、脱炭素への移行が進む世界では、消費者選好の変化や適応製品の需要の増加、GX推進に向けた産業施策の進展などにともなうキヤノンの低炭素製品や適応製品、GX推進に資する製品の売上の増加やエネルギー効率改善にともなうコスト削減により、プラスの影響を見込んでいます。

シナリオ分析を通じて、気候変動によるキヤノン全社および主要事業の売上高や営業利益などの財務業績、財政状態、キャッシュ・フローへの影響は、短期・中期・長期においていずれも限定的であり、ポートフォリオやビジネスモデルを見直す必要性はないことを確認しました。

ただし、今後カーボンプライシングや気候変動に関する規制などが導入された場合、対応費用や研究開発費・設備投資の増加などにより、キヤノンの財務業績やバリューチェーン全体が影響を受ける可能性があることも認識しており、気候関連リスク・機会への影響について分析を行うとともに、引き続き事業環境を注視していきます。

リスクマネジメント

気候関連のリスク・機会への対応は、全社環境目標や重点施策に反映されるとともに、キヤノンでは、環境への対応を経営評価の一部として取り入れており、各部門の環境目標の達成状況や環境活動の実績は、キヤノン全体の経営状況の実績を評価する「連結業績評価制度」の一指標として実施される「環境・CSR業績評価」のなかで、年2回、評価しています。評価結果は代表取締役CEOをはじめとする経営層に報告されています。特定した気候関連リスクは、ISO14001のPDCAサイクルに沿って管理しています。

環境マネジメントシステム

指標と目標

キヤノンは、製品ライフサイクルを通じたGHG排出量を2050年にネットゼロとすることをめざしています。その達成に向けて、2030年にスコープ1、2のGHG排出量を2022年比42%削減、スコープ3(カテゴリー1、11)のGHG排出量を2022年比で25%削減することを掲げ、SBTi(Science Based Targets initiative)の認定を2023年11月に取得しました。

また、2008年以来、キヤノングループ環境目標の総合目標として「ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数 年平均3%改善」(原単位目標)を掲げています。この目標を継続的に達成することで、2030年に2008年比で50%の改善を見込んでいます。2024年は、目標を上回る年平均3.76%、2008年比44.6%の改善となりました。

当事業年度の実績は、スコープ1は198千t-CO2e、スコープ2は733千t-CO2e、スコープ3は7,173千t-CO2eとなり、ライフサイクルCO2排出量(スコープ1、2、3合計)は8,104千t-CO2eとなりました。次年度以降も、目標の継続的な達成をめざします。

2024年はSBTiに関して、種々の省エネ施策の推進や再生可能エネルギーの導入、小型、軽量化や炭素排出量の小さな部品の採用などにより、2022年比でスコープ1、2で12.8%、スコープ3(カテゴリー1、11)で17.7%の削減となりました。

キヤノンでは、環境目標は、経営の3カ年計画にあわせて設定され、毎年レビューを行い、目標変更の要否を判断しています。また「ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数年平均3%改善」の総合目標のもと、製品目標として、「原材料・使用CO2製品1台当たりの改善指数年平均3%改善」、拠点目標として、「エネルギー使用量」に対する原単位改善の目標を定めています。

なお拠点目標については、「廃棄物総排出量」「水資源使用量」「管理化学物質の排出量」もあわせて設定し、環境面でのリスク・機会管理をより包括的かつ確実なものとしています。

環境目標と実績

  2030年目標 2024年実績
GHG排出量
(2022年比)
スコープ1、2:42%削減
スコープ3(カテゴリー1、11):25%削減
スコープ1、2:12.8%削減
スコープ3:17.7%削減
  • ※ データ集計の対象

環境パフォーマンスデータ

GHG排出量

スコープ1, 2

スコープ1, 2

スコープ3(カテゴリー1、11)

スコープ3(カテゴリー1、11)

  • ※ SBTiに則り基準年(2022年)の実績を再計算しています。
  • ※ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書にもとづいて計算しています。

総合目標に対する実績

2024年は、拠点における省エネルギー活動の強化や再生可能エネルギー量の増加、省エネ製品の拡充や航空輸送の減少など製品ライフサイクル全体での継続的な改善活動が進みました。その結果、「ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数年平均3%改善」の目標に対し、年平均3.76%(2008~2024年)、2008年から44.6%の改善となりました。

製品目標に対する実績

製品の小型・軽量化、省エネルギー化などに取り組みましたが、「原材料・使用CO2製品1台当たりの改善指数年平均3%改善」の目標に対し、年平均2.22%(2008~2024年)の改善となり、目標をわずかに下回りました。

拠点目標に対する実績

拠点エネルギー使用量の原単位改善度

ファシリティ管理部門を中心に推進しているエネルギー削減活動や生産効率の向上などにより、2024年の原単位は4.6%改善となり、2.4%改善の目標を達成しました。2025年についてもエネルギー削減と生産効率化を進めることで目標の継続的な達成をめざします。

廃棄物総排出量の原単位改善度

梱包箱の通い箱化による包装材削減、評価用紙の削減など各拠点の改善施策の継続により、2024年の原単位は2.2%改善となり、1%改善の目標を達成しました。2025年についても調達資材の包装材削減など、取引先との協業活動を進めることで目標の継続的な達成をめざします。

生産に起因する水資源使用量の原単位改善度

設備のメンテナンスや高温による冷却水使用量増加などにより、2024年の原単位は0.6%の改善となり、1%改善の目標に対し未達となりました。2025年は生産工程における洗浄の効率化などにより改善活動を進めます。

管理化学物質排出量の原単位改善度

部品洗浄の増加などにより、2024年の原単位は0.9%の悪化となり、1%改善の目標に対し未達となりました。2025年は化学物質使用条件や除害装置の運転条件の見直しなどにより改善活動を進めます。

2025年目標

昨年と同様としています。

  2030年目標 2024年実績※2
ライフサイクルCO2製品1台
当たりの改善指数(2008年比)
50%改善 44.6%改善
  2024-2026年目標 2024年実績※2
総合目標 ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数 年平均3%改善 年平均3.76%改善(2008~2024年)
製品目標 原材料・使用CO2製品1台当たりの改善指数 年平均3%改善 年平均2.22%改善(2008~2024年)
  2024年目標※1 2024年実績※2
拠点目標 原単位当たりのエネルギー使用量:2.4%改善 4.6%改善
  • ※1 直近3年平均改善率、ただし日本の拠点エネルギーについては省エネ法に準じる。原単位分母は各拠点の特性に応じて決定(生産台数、有効床面積、人員など)
  • ※2 データ集計の対象

環境パフォーマンスデータ

「ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数」推移
「ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数」推移

環境負荷の全体像

2024年の製品ライフサイクル全体(スコープ1~3)のCO2排出量は、約810万t-CO2eとなりました。省エネルギー活動の推進、再生可能エネルギーの増加、低CO2排出の電力への切り替えなどにより、製品ライフサイクル全体では、約30万t-CO2eの減少となりました。製品ライフサイクル全体を通じ、事業活動で使用した資源(インプット)および地球環境への排出(アウトプット)は「2024年のマテリアルバランス」の通りです。

ライフサイクルCO2排出量の推移
ライフサイクルCO2排出量の推移
  • ※ 2024年のデータは第三者保証を取得済みです。また、2022年、2023年のデータは一部、2024年算定方法にあわせて再計算しています。
2024年のGHG排出量
カテゴリー 算定対象 2024年
(千t-CO2e)
算定方法
スコープ1 直接排出 198
  • 燃料使用量に燃料種に応じた排出係数を乗じて算出
スコープ2 マーケット基準での間接排出 733
  • 契約している供給会社ごとに公表されている排出係数に供給会社ごとに使用した電気消費量を乗じて算出
ロケーション基準での間接排出 847
  • 電力の種類に関わらず特定の地域で平均的に算定した排出係数に当該地域で使用した電気消費量を乗じて算出
スコープ3 サプライチェーンでの排出 7,173  
カテゴリー1 購入した製品・サービス 3,201
  • 製品素材重量、および製品起因の廃棄物素材重量に素材/加工別原単位を乗じて算出
カテゴリー2 資本財 733
  • 購入した資本財の資産区分ごとの合計金額に資産区分別原単位を乗じて算出
カテゴリー3 スコープ1、2に含まれない燃料/エネルギー活動 171
  • 各拠点での燃料/電力使用量を集計し、燃料採掘から燃焼/発電までの原単位を乗じて算出
カテゴリー4 輸送、配送(上流) 391
  • サプライヤーから自社生産拠点までの物流は、平均輸送距離、輸送重量を求め、輸送の原単位を乗じて算出
  • 生産拠点から顧客倉庫までの物流は、物流実績に輸送の原単位を乗じて算出
  • 倉庫保管にかかる排出は、倉庫の電力使用量に電力原単位を乗じて算出
カテゴリー5 事業から出る廃棄物 24
  • 各拠点での素材別重量を集計し、廃棄処理の原単位を乗じて算出
カテゴリー6 出張 50
  • 交通手段ごとの支給総額に、交通手段ごとの原単位を乗じる
カテゴリー7 雇用者の通勤 138
  • 交通手段ごとの支給総額に、交通手段ごとの原単位を乗じる
カテゴリー8 リース資産(上流) 0
  • 賃借している建物、車両からの排出が該当するが、いずれもスコープ1、2に含まれている
カテゴリー9 輸送、配送(下流) 52
  • 地域ごとに平均輸送距離と製品輸送重量を求め、輸送の原単位を乗じて算出
  • 倉庫保管にかかる排出は、年間平均在庫量から求めた電力使用量に電力原単位を乗じて算出
カテゴリー10 販売した製品の加工 0
  • 自社ブランドで販売される製品における、中間製品のアウトソーシング先での排出は、カテゴリー1で計上している
カテゴリー11 販売した製品の使用 2,196
  • 製品ごとに生涯使用電力量を求め、平均電力原単位を乗じて算出
カテゴリー12 販売した製品の廃棄 175
  • 販売した製品を素材別に分類し、素材重量ごとに廃棄処理の原単位を乗じて算出
カテゴリー13 リース資産(下流) 42
  • 賃貸した資産の年間消費電力量を求め、電力原単位を乗じて算出
カテゴリー14 フランチャイズ 0 該当なし
カテゴリー15 投資 0 該当なし
2024年のマテリアルバランス
2024年のマテリアルバランス
  • ※1 リユースされた製品・部品
  • ※2 使用済み製品から取り出され、新たな製品の原材料として使われたプラスチック

温室効果ガス(エネルギー系温室効果ガスであるCO2と非エネルギー系温室効果ガスであるPFCs、HFCs、SF6、N2O、メタン、NF3)を集計対象としています。電力のCO2換算係数については、電力供給会社ごとのCO2換算係数を使用し、CO2換算計数が公開されていない電力供給会社については、地域別の公表値を使用しています(事業所活動の対象範囲は、データ集をご覧ください)。「お客さまの使用」については、上記と同様の換算値を使用し、対象年度の出荷製品が平均使用年数・平均使用枚数などにおいて消費する電力量をCO2換算しています。なお、データ集計のさらなる精度向上などにより、過去のデータが修正される場合があります。

環境パフォーマンスデータ

GHG排出量(CO2換算値)の第三者保証について

「2024年のマテリアルバランス」「ライフサイクルCO2排出量の推移」に掲載の2024年のCO2排出量ならびに「2024年のスコープ3GHG排出量」に記載の各数値について、第三者保証を取得しています。