太陽は、「核融合」反応によって光り続け、エネルギーを出しています。
レーザー光を利用して“人工の太陽”を作りだそうとするのがレーザー核融合です。
「核融合」とは、物質の原子と原子がぶつかって新しい原子ができる反応のことをいいます。太陽の中心部では、水素が核融合して、ヘリウムに変化していると考えられています(詳しくは→第2章の【太陽の光】)。水素は地球上で入手しやすい物質ですから、この核融合を実現できれば人類の“人工太陽”となり、究極のエネルギー源となるはずです。もっとも実現しやすい核融合は重水素と3重水素によるものですが、これでも1億度近い高温が必要で決して簡単ではありません。レーザー光を利用する方法などの研究が進んでいます。
「E=mc2」という公式があります。アインシュタインの『特殊相対性理論』からみちびかれた「質量・エネルギー則」です。これは質量(m)が、完全にエネルギー(E)に変化し得ることを示しています(→参考【光と単位】)。
この公式によると、1kgの物質が完全にエネルギーに変化した場合、約300万トンの石炭を燃やした場合と同じ膨大なエネルギーを得られることになります。実は、「核分裂」や「核融合」など、原子の“核”が反応して発生するエネルギーの量は、この公式を利用して求められているのです。その原子核とは、「陽子」「中性子」という粒子の集まった原子の中心部のことをいいます。
現在の原子力発電所では、ウラニウム235の核分裂でエネルギーを得ています。近い将来は、重水素と3重水素を核融合させて10倍近い効率でエネルギーを発生させようとしています。
重水素と3重水素の原子核が融合すると、ヘリウムと中性子になりますが、この反応の前後で質量は0.38%軽くなります。この軽くなった部分が「E=mc2」により、エネルギーとして放出されます。1kgの重水素と3重水素を融合させると約1gの質量が消えてエネルギーに変わり、石炭3000トンに相当するエネルギーを放出します。
核融合を起こすのは簡単ではありません。1億度以上の温度であること、原子核だけが裸になって飛びまわる「プラズマ」状態であること、核が1立方センチあたり200兆個以上存在する高密度状態が1秒間持続することという「ローソン条件」を満たさなければならないからです。
ローソン条件を実現するためにさまざまな試みがなされていますが、そのひとつが強力なレーザー光を集中させ、中心部で爆縮を起こす方法です。大阪大学で行われている研究では、『激光』(中国語でレーザー光の意味)という装置でカプセル状の燃料ペレットに高出力レーザー光を照射して瞬間的に核融合反応を起こし、その繰り返しで核融合エネルギーを取り出す方法をとっています。