自動化、成形・実装…。進化を続けるものづくり技術
生産技術
高度な生産技術は、魅力的で競争力のある製品を生み出すために不可欠です。キヤノンでは、生産技術力の強化を最も重要な経営課題の一つととらえ、自動化・内製化の技術開発を積極的に行い、「ものづくり」を常に進化させています。
目次
独創的な製品を生み出す加工プロセス技術
キヤノンでは、製品性能を決定付ける重要部品(キーパーツ)を内製することで、徹底的な製品の差別化を進め、競争力の向上を図っています。
開発、設計された「もの」を形ある製品とするためには、材料や部品に合わせ、より早く、安く、正確に作り上げる最適な加工プロセスを確立する必要があります。キヤノンでは、材料から工具・加工条件まで含めた「加工プロセス技術」を独自開発することで、独創的な製品を創出しています。
ガラスモールド技術
カメラの代表的なキーパーツにはレンズがありますが、その中でも、非球面レンズの製造には、ガラスモールド技術などのキヤノン独自の技術が注ぎ込まれています。
ガラスモールド技術は、超精密加工を施した金型でガラスを高温で直接プレスすることにより、金型の形状をガラスに転写してレンズを作る技術です。上下一組の金型によって同じ形状の非球面レンズを大量に作ることができるため、ガラスモールドは生産性に優れた加工方法であり、キヤノンのさまざまなレンズの製造に用いられています。
そして、さらに安く、多様なレンズの製造を実現するために、キヤノンではガラスの変形過程を高精度に予測できるシミュレーション解析技術の研究開発にも取り組んでいます。
研削・研磨加工技術
放送/業務用機器向けの高精度な非球面レンズや、半導体露光装置に搭載されている大口径/超高精度な非球面レンズを生み出しているのが、研削・研磨加工技術です。研削・研磨加工技術は、ガラスなどの光学素子材料を非球面形状に削り出す方法であり、さまざまな光学素子材料に適用が可能なうえ、直径200mmを超える大きなレンズも加工できるのが特徴です。
キヤノンでは、研削加工でレンズの表面形状を100nm※1レベルの形状精度にした上で、研磨加工によって形状精度をさらに向上させながら、表面の細かな粗さを1nmレベルの凹凸に磨き上げるなど圧倒的な加工精度を実現しています。また、加工精度の追求のみならず量産性の向上にも取り組み、ミラーレスカメラ用の非球面レンズにも研削・研磨加工技術を採用しています。
さらに、学術分野にも展開され、TMT※2(Thirty Meter Telescope:30メートル望遠鏡)向け分割鏡の加工にも貢献しています。
- ※1 nm
ナノメートル。1nm=0.000001mm。ナノメートルの世界になると、ごくわずかな温度差や気圧差も精度に大きく影響する。 - ※2 TMT
Thirty Meter Telescope。「TMT国際天文台プロジェクト」記事はこちらをご覧ください。
プラスチック成形技術
キヤノン製品には、多くのプラスチック成形部品が使用されています。製品のキーパーツの成形部品には、高い精度、機能性、耐久性などが求められるため、機能向上やコストダウンなどの改善を継続的に進めています。
これらを実現するために、長年培った精巧な金型を加工する技術をはじめとしたさまざまなキヤノン独自の技術を盛り込むほか、プラスチックと金属のような異種材料の多部品一体成形までも行うことで、生産工程を効率化し、コストダウンを実現しています。
また、カメラやプラスチック光学レンズのような光学部品においても、このプラスチック成形技術が使われ、プラスチック素材でガラスレンズと同等の光学性能を達成しています。
高速・低ノイズ・高密度実装技術
半導体チップは微細化の進展により高性能・高機能化が進み、カメラやプリンターをはじめとするデジタル製品の小型・軽量化に貢献してきました。一方で、微細化した半導体を回路基板上に実装する際には、狭ピッチでの高密度実装が必要になります。また、半導体とメモリー間の高速信号を誤動作なく伝送するためには電源電圧変動ノイズの抑制が課題となります。
キヤノンは独自のPoP(Package on Package)による三次元実装技術を開発して実装面積の縮小を実現しています。また、電源電圧変動ノイズを高精度に再現するシミュレーション解析技術も開発し、コンデンサーの最適配置によるノイズを抑えた高速信号伝送を可能にする高度な実装技術へと発展させています。これらの実装技術は、映像エンジン「DIGIC」の継続的な進化に貢献しています。
独自の精密加工・計測技術を盛り込んだ装置化技術
キヤノンでは、製品の部品を加工する生産設備の内製化にも積極的に取り組んでいます。部品の中でも、特にカメラやオフィス向け複合機、半導体露光装置、天文などに用いられる光学素子は、ナノメートルレベルの形状精度が必要とされ、キヤノン独自開発の精密加工、計測技術を盛り込んだ内製装置によって作り出されています。
精密加工装置化技術
レンズ金型などの曲率変化※3の大きい自由曲面の高精度の光学素子加工には、5軸同期加工が可能な超精密切削加工機が必要になります。
高速で運動する刃先位置を高精度に制御するキヤノンの自由曲面精密加工装置では、高剛性空気軸受けや高分解能変位センサーなどの装置の要素技術から独自に開発を行いました。完成した装置は、表面粗さ1nmPV※4、形状精度10nmPVの部品加工精度を実現しています。
キヤノン独自の超精密加工技術は、宇宙望遠鏡や次世代天体望遠鏡などの天体観測に使用される反射型回折素子の加工にも活用されており、その一例として、JAXAの地球観測衛星「いぶきGW(GOSAT-GW:Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle)」に搭載されています。
- ※3 曲率変化
曲率は線や面の曲がり具合を表す数字。自由曲面レンズは曲率が一定でなく大きく変化するため、特殊な加工技術が必要となります。 - ※4 PV
表面粗さのJIS規格で、断面曲線の最大谷深さを意味します。
精密計測装置化技術
非球面光学素子の形状計測には、光学素子に触針を接触させながら全面を高精度で測定する自由曲面測定装置が用いられます。
この測定装置には、測定する光学素子を上下6枚のミラーとレーザー変位計ではさむようにして、触針の位置を正確に算出する制御システムや、光学素子の部分測定形状を合成して全体形状を算出するスティッチアルゴリズムなどが搭載されています。
これらの技術により、カメラレンズのような小さなものから、超大型望遠鏡(TMT: Thirty Meter Telescope)などの分割鏡までナノメートルレベルの高精度計測を実現しています。