独自技術を守る。クロスライセンスで使用技術を増やす
「論文を読むなら特許を読め。レポートよりも特許を書け」とは、キヤノンの研究開発部門で語り継がれてきた言葉です。
知的財産マネジメントにより独自技術を守るとともにクロスライセンスなどで使用できる技術を増やし、製品開発力を高めています。
2019/05/30
キヤノンにとって独自技術の権利化は、グローバルに事業を展開する上で欠かせない活動です。毎年、開発者から1万数千件以上のアイデアが出され、国や地域ごとに特許出願し、米国における特許登録件数は、日本企業の中で14年連続1位という実績を誇ります。キヤノンの知財戦略は、保有する独自のコア技術を他者の侵害から保護するという「守り」。そして、自社だけでなく他社も使う価値のある特許を多数取得することで、ライセンス交渉などを通し自社事業を有利に展開する「攻め」。この攻守備えた知財マネジメントにより製品開発力を強化しています。
年度 |
総合順位 |
日本企業順位 |
件数 |
2018年 |
3位 |
1位 |
3,056件* |
2017年 |
3位 |
1位 |
3,285件* |
2016年 |
3位 |
1位 |
3,665件* |
2015年 |
3位 |
1位 |
4,134件 |
2014年 |
3位 |
1位 |
4,048件 |
2013年 |
3位 |
1位 |
3,820件 |
2012年 |
3位 |
1位 |
3,173件 |
2011年 |
3位 |
1位 |
2,818件 |
2010年 |
4位 |
1位 |
2,551件 |
2009年 |
4位 |
1位 |
2,200件 |
2008年 |
3位 |
1位 |
2,107件 |
2007年 |
3位 |
1位 |
1,983件 |
2006年 |
3位 |
1位 |
2,366件 |
米国商務省発表による年間合計件数を基に算出
*2016-2018年はIFI CLAIMS パテントサービスによる
知的財産権を重視するキヤノンの姿勢は、1960年代の複写機分野への参入にさかのぼります。
米国ゼロックス社が保有していた複写機の完璧な特許網を打破し、キヤノンはゼロックスの特許に触れない、新しい電子写真技術「NP方式」を開発することに成功しました。キヤノンは、NP方式を権利化。他社と差別化された独自技術を保護するとともに周辺技術も権利化し、他社が持つ、キヤノンに必要な技術のライセンス交渉も可能になりました。この経験がキヤノンの知財戦略の基礎となり、企業DNAとして今日まで受け継がれています。
公開特許公報に掲載された実際の出願(一部)
キヤノンの知財戦略の大きな特徴は、開発者と特許エンジニアと呼ばれる知財担当者の活発なコミュニケーションにあります。国内には各事業拠点に約300名の特許エンジニアがおり、開発者のアイデアや研究成果をさまざまな角度から検証し、より多くの発明を創出する可能性を探っています。
〉知的財産活動は事業展開を支援する重要な活動である
〉研究開発活動の成果は製品と知的財産である
〉他社(企業・個人)の知的財産権を尊重し、適切に対応する
単独で自社の技術を保護することが困難といわれる現在、キヤノンは2014年7月、自社の正当性を主張し国際的な特許紛争を避けるために、米国マイクロソフト社とクロスライセンス契約*を締結し、米国グーグル社などと6社の特許連合「LOTネットワーク」を設立。2018年11月時点で318社が参加し、約136万件の特許数を保有しています。他社との連携を視野に入れ、キヤノンは知的財産活動を通じた国際競争力をさらに強化していきます。
*特許権の権利者同士(企業等)が、自らの持つ特許権等をお互いに利用できるように許諾する契約のこと
日本国内で多大な功績を挙げた発明などを表彰する「全国発明表彰」(発明協会主催)において、キヤノンは数々の賞を獲得しています。また、社内では優れた発明を表彰する「社内発明表彰」制度を設け、開発者と発明功労者の努力を高く評価しています。
応募名称 |
発明協会主催 |
社内発明表彰 |
||
受賞年 |
賞名 |
受賞年 |
賞名 |
|
撮像面位相差オートフォーカス方式を実現するイメージセンサーの発明 |
2018 |
内閣捴理大臣賞 |
2017 |
優秀発明賞 |
2つの基本波の差周波と第2高調波を利用する超音波診断装置の発明 |
2018 |
文部科学大臣賞 |
- |
- |
CMOSセンサーのシェーディング低減技術の発明 |
2015 |
日本経済団体連合会会長発明賞 |
2005 |
社長奨励賞 |
機動性に優れた小型軽量デジタルシネマカメラの意匠 |
2014 |
内閣総理大臣発明賞 |
2013 |
社長賞 |
クリーナーのない中間転写型プリンターの発明 |
2013 |
文部科学大臣発明賞 |
2004 |
社長賞 |
ボックス形状のインクジェットプリンターの意匠 |
2006 |
朝日新聞発明賞 |
2005 |
優秀社長賞 |
リアルタイムX線撮影装置用大画面センサー |
2005 |
恩賜発明賞 |
2001 |
優秀社長賞 |
高速ズームが可能な小型光学機器の発明 |
2003 |
朝日新聞発明賞 |
2004 |
優秀社長賞 |
薄型フラッドベッドスキャナーの意匠 |
2002 |
発明協会会長賞 |
2001 |
社長賞 |
オゾンレス帯電方法の発明 |
1999 |
特許庁長官賞 |
1991 |
優秀社長賞 |
アクティブ型測距装置の発明 |
1997 |
朝日新聞発明賞 |
1996 |
社長賞 |
世界知的所有権機関(WIPO)から人工知能(AI)の特許に関する初の報告書 「AI テクノロジートレンド 2019」 が発表され、キヤノンはAI関連の特許出願数上位10社にランクインしました。
https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_1055.pdf
キヤノンではAI技術を活用した製品の開発を推進しており、例えば、映像から人数をカウントする映像解析技術にディープラーニングを導入することで、約6000人が密集するような複雑な混雑状態での人数推定を可能とする技術などがあります。このように、これまで培ってきたキヤノンの技術にAIを取り入れることで、更なる可能性を追求しています。
ネットワークカメラの搭載技術