テクノロジー

材料研究材料研究

これまでにない製品性能・環境配慮実現のために材料から開発

材料研究

競争力を高めるために欠かせないのが、色材やレンズなどをはじめとした材料技術です。
これまでにない性能を味わっていただくために、そして持続可能な社会のために、新材料を作り出しています。

2019/05/23

高発色キサンテン系染料

いつまでも色あせない鮮やかな赤を

プリンターメーカーは、色材そのものの自社開発はせず、他社から調達した共通の染料を使用することが多く、色味での差別化は困難な状況にありました。キヤノンでは、視認性の高い「赤(マゼンタ)」の染料開発のために発色性に優れたキサンテン系染料に注目し、自社で開発を開始。堅牢性(耐光性)に課題があり、実用化は難しいとされていたキサンテン系染料の弱点を克服し、堅牢性と鮮やかな赤を両立する新規マゼンタ染料の開発に成功しています。

独自の分子設計により堅牢性を高める構造を探求

1980年代から新規染料の開発に取り組んでいるキヤノンでは、現在、1万種類を超える染料を「キヤノン材料バンク」に蓄積しています。このバンクでは合成・物性情報に加え、染料が外部からの光やオゾンガスなどの刺激を受けて崩壊するメカニズムなど、多種多様な技術ノウハウをデータベース化しています。キサンテン系染料の開発では、このバンクに蓄積された材料をもとに、シミュレーション、分子設計、合成、評価・分析を繰り返し、最適な場所に特定の置換基を配置することで、発色性と高堅牢性を両立する新たな染料を誕生させました。
独自開発した染料は、2012年発売のインクカートリッジ「BCI-351」に初搭載。さらに性能を進化させた第二世代の新規染料が2017年発売のインクカートリッジ「XKI-N11」に搭載され、プリント画質向上に貢献しています。

実験室レベルから量産レベルヘチャレンジ

実験室では完成したものの、染料の製品化は、量産対応という課題を乗り越えなければ達成されません。300mlという小型の反応容器を用いる実験室とは異なり、量産時に使う反応釜は1t以上とその規模が格段に大きくなります。特に、インク吐出量をピコリットル単位で制御するインクジェットプリンターでは、合成中にわずかでも不純物が発生すると、プリントヘッド部分にあるインクのノズルを詰まらせてしまいます。要素開発部門と事業部門が共同で研究に取り組み、不純物を100万分の1以下に抑制。量産時でもインク品質を安定させ、製品化を実現しました。

鉛フリー圧電体

環境負荷の少ない圧電体の開発

圧電体は電気エネルギーを機械エネルギーに変換する特性を持ち、モーターやセンサーには欠かせない材料ですが、環境に悪影響を与える鉛を材料に使用することが、業界の課題となっています。キヤノンでは現在、ハンダやレンズ用光学ガラスの鉛フリー化に続き圧電体の鉛フリー化にも挑み、自社製品への搭載をめざして材料開発に取り組んでいます。

イメージイメージ

混ぜ合わせた原料粒子を焼結し、分析用鉛フリー圧電体のサンプルを作製

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