しくみと技術レーザープリンター・複合機
プリントを快適にこなし、
環境性能も進化
PCで作成した文書や資料などのデータを処理し紙に印刷する「レーザープリンター」。レーザープリンターにコピー、スキャン、FAXなどの複合機能をプラスした「レーザー複合機」。メンテナンスが簡単で無線LANやモバイル連携にも対応できることから、オフィスだけでなく学校や病院などさまざまなシーンで活躍しています。
2021/12/09
レーザープリンターのしくみ
レーザープリンターは電子写真技術を用いたプリンターです。まずPCから送られてきたデータをプリントエンジンで印刷用データに生成。その印刷指令をレーザー光にして円筒状の感光ドラムに照射(露光)します。感光ドラムはあらかじめ静電気を帯びさせて(帯電)あり、露光により印刷部分だけ静電気が消失(現像)。感光ドラムに粉状インクのトナーをまぶすとレーザー光の当たった部分にだけトナーが残るので、静電気の力でトナーを紙へ「転写」します。さらに、熱と圧力をかけて紙にトナーを密着(定着)させることで、プリントが完成します。
露光にレーザー光を使用するためレーザープリンターと呼ばれ、機構は大きく「レーザースキャナー部」「プリンター部」の二つから成り立っています。
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レーザープリンター・複合機のテクノロジー
キヤノンは複写機で培った電子写真技術とレーザー技術により、高速で美しい印字を実現するレーザープリンター・複合機を提供しています。また、使用済みのカートリッジを廃棄せずリサイクルするシステムや待機時消費電力低減など、環境配慮技術の開発でもトップランナーとして走り続けています。
コンフィギュレーションフリーアーキテクチャー
キヤノンは単機能プリンターから複合機まで、多品種な製品を低コストで短期開発できるよう、デバイスや操作部、機能の組み合わせが自在で、かつ軽量コンパクトなアーキテクチャーを構築しています。
このアーキテクチャーを用いることで、スキャナーやプリンターといった「デバイス」、UIなどの「操作部」、コピー・プリント・スキャンなどの「機能」をブロック構造で実現し、自在に組み合わせて製品化できるようになりました。
デバイスや機能のブロック流用が簡単なため、開発の効率化と高品質化に貢献。モバイルプリントや認証機能など新機能の追加も自在で、高機能化にも威力を発揮しています。また、言語依存部分が完全分離しているため、同時に30言語以上の製品化対応が可能です。
コンフィギュレーションフリーアーキテクチャーの概念図
独自の省エネルギー技術
キヤノンは独自の省エネルギー技術によりレーザープリンター・複合機の消費電力を削減しています。その一つが、キヤノン独自の「オンデマンド定着技術」です。レーザープリンター・複合機は、粉状のトナーを熱で溶かし加圧ローラーで圧力をかけて紙に定着させます。以前広く用いられていた定着技術は、ローラー内部に設けられたハロゲンヒーターから伝わる熱で定着ローラーを温める方式でした。この方式では定着ローラーが温まるのが遅いため、プリントを開始するまで時間がかかるだけでなく、プリント待機中も定着ローラーを常に温め続けることが必要でした。
キヤノンは早期からこの課題に目をつけ、熱容量の小さい定着フィルムと定着フィルムを直接加熱するセラミックヒーターからなるオンデマンド定着器を開発。待機時に温めておく必要がなく、プリントコマンド(印刷指令)を受信した時点でヒーターが作動し瞬時に熱を与えることから、プリントを開始するまでの時間を数分から数秒へ短縮しました。高速FPOT(ファーストプリントアウトタイム:1枚目のメディアが出力される時間)の実現と同時に、プリントするときだけヒーターを熱することで待機中の電力消費をなくし、大幅な省エネも達成。画期的な技術として今もキヤノンのレーザープリンターの特徴となっています。
さらに、定着ローラーを瞬時に発熱させるキヤノン独自の「IH定着技術」は、家庭炊飯器などでも知られている電磁誘導加熱の原理を応用。短時間で十分な熱量を確保することを可能にしています。CO2排出の削減という環境配慮への期待にこたえられるよう、キヤノンは努力を続けています。
本体の小型化に貢献する4 in 1 薄型レーザースキャナー
光で感光ドラムに画像を描くためのレーザースキャナーは従来、CMYK4色に対応する4つの感光ドラムに対し4つのレーザースキャナーで走査していました。「4 in 1薄型レーザースキャナー」は、一つのポリゴンミラーに向かって4色分のレーザー光を斜めにあてて光路を4方向に分け、ミラーで反射してそれぞれの感光ドラムへ導くという技術です。ポリゴンミラーをスキャナー本体中央の低位置に配置し、レーザーの光路を綿密に設計。これにより、レーザープリンター・レーザー複合機本体の小型化・薄型化を実現しました。
一体型トナーカートリッジ
1982年、キヤノンは世界で初めてトナーと感光ドラムなど主要部品をまとめて交換する「一体型トナーカートリッジ方式」を開発。プリンターの定期的なメンテナンスを不要にし、イージーメンテナンス、小型・高品質化でレーザープリンターは爆発的にヒットし、世界中で使用されるようなりました。
また、カラートナーにおいては、マイクロカプセル構造を持つ球状の超微粒子トナー「重合法Sトナー」を独自に開発。定着オイルの代替となるワックスをトナー内部に多量に内包化できるため、画面のぎらつきや粒状感がなく、より自然で高品位の画質を実現しています。
資源を循環利用するトナーカートリッジリサイクル
キヤノンは資源の有効利用と廃棄物削減を目標に他社に先駆けて、1990年から「トナーカートリッジリサイクルプログラム」を開始。世界5カ所にリサイクル拠点を構え、使用済みのトナーカートリッジを回収し、プラスチック材料を新しいトナーカートリッジの材料として再び使用する「クローズドループリサイクル」を行っています。