テクノロジー

DXを先導するオフィス複合機 DXを先導するオフィス複合機

文書電子化の面倒な作業を高速・正確、そして静かに処理

DXを先導するオフィス複合機

オフィスのDXに欠かせない紙文書のデジタル化。キヤノンはスピード、静音性などの本質性能を徹底的に高めた複合機をクラウドサービスと一体化させ、高機能化を進めています。これにより、高速・高品質な電子ファイリングの自動化を実現。多様な働き方に応え、DXを追求しています。

2021/1/28

本質性能を高めた複合機をクラウドサービスで高機能化し、オフィスのDXを推進

今、デジタル技術の活用により、これまでになかった新しい価値を生み出していくデジタルトランスフォーメーション(DX)が時代のキーワードとなっています。オフィスにおいて、DXの第一歩となるのが、帳票をはじめとした紙文書の電子化。働き方の推進や新型コロナウイルスの影響により急速に増えているテレワークを効率的に行うためにも、オフィスにある膨大な紙文書を、利用しやすいように電子化することが求められています。

しかし、紙文書をスキャンして保存、整理するには、面倒な設定やファイルの保存先の指定など煩雑な手作業が必要で、かえって業務の妨げになったり、スキャン画質自体そのものが悪く情報が活用できないなどの問題点がありました。

DXが複合機の大きなトレンドとなることを見据え、文書の電子化について研究開発を続けてきたキヤノンは、こうした課題を解決すべく、DXを追求する機能を搭載した「imageRUNNER ADVANCE DX」(以下、iR-ADV DX)シリーズを2020年に発売しました。

複合機をクラウドサービスとシームレスに連携して「簡単・快適」「確実」なスキャンを実現するだけでなく、さまざまなタイプの帳票など、文書内の情報の自動抽出や自動ファイリングといった高機能化を実現。複合機をスピード・静音性といった本質性能向上と高機能化の両面から追求し、名実ともにオフィスの中心的存在へと進化をさせています。

iR-ADV DXシリーズの機能と特長

iR-ADV DXシリーズの機能と特長

原稿の傾きを瞬時に補正するデジタル斜行補正技術

複合機で紙文書をスキャンする時、原稿を読み取るのが自動原稿送り装置(Auto Document Feeder:ADF)です。大量の文書をADFにセットしスキャンを始めると、原稿を読み取り部に高速で搬送していきますが、その際、原稿の傾きができることがあるため、それを補正するしくみが重要になります。一般的には、搬送する途中でレジローラーと呼ばれる斜行補正を行う機構に原稿を突き当て、機械的に傾きを補正していましたが、レジローラーで一度搬送を止めることになり、スキャンのスピードが落ちたり、レジローラーへの紙の衝突音がうるさいといった課題がありました。

ADF

ADF

iR-ADV DXシリーズでは、原稿が斜めになってもそのまま原稿を搬送。一枚一枚の紙の端にできるわずかな影をADFで読み取り、新開発の画像処理LSIチップで、瞬時に傾き角度を計測しデジタル補正します。原稿の影で原稿サイズや角度を検知するため、サイズの違う原稿をまぜてスキャンしても、正しいサイズを自動で検出し読み取ることが可能です。また、スピードを落とさず原稿を搬送できるため、1分間に270ページ(A4表裏)というスキャンの高速化を実現しました。

従来技術と新デジタルスキャン技術の比較

従来技術と新デジタルスキャン技術の比較

ADF特有の気になる動作音を静音化

従来のADFでは、レジローラーに原稿が当たると独特の衝突音が発生していました。iR-ADV DXシリーズはこのレジローラーによる斜行補正機構をなくしたため、衝突音がなくなった分搬送音が低減。さらに、搬送モーターへの電流を必要最低限におさえる制御方法の開発や、搬送経路の構造自体を見直して滑らかに紙が通るようにするなどの工夫を積み重ね、これまでとは異次元の静音化を実現しました。

音の評価方法についても、一般的な音の大きさをあらわすデシベル(dB)ではなく、キヤノン独自の指標を採用しました。デシベルでは同じ数値であっても人が不快に感じる音とそうでないものがあるため、独自指標では人が心地よく感じるかどうかを数値化。この指標をもとに設計・評価を行うことで、ADF稼働時において、人が不快に感じる動作音の大幅低減に成功しました。

キヤノンがここまで徹底して静音化に取り組むのは、複合機がオフィスの一角に設置されるからこそ。実際にお客さまからも「静かになった」との反響を多くいただいており、仕事を邪魔しない静かさを実現しています。

カメラで培った光学技術で表裏に差のない同一のスキャン画質を実現

両面の紙文書を電子化する際に表裏の色味に差があると、情報の再現性が損なわれてしまいます。通常、ADFで両面原稿を読み取る場合、表面は複合機本体の光学ユニットで、裏面はADF内部に配置した光学ユニットで読み取ります。光学ユニットはいわばスキャンする際に画質を左右する重要な部分ですが、ADFの内部には表面用よりも小さい機構しか搭載できず、表面用と裏面用で違う方式のユニットを採用せざるを得ないため、表と裏でスキャンされた画像の色味の差が出るという現象が生じていました。

ADF内部の構造

ADF内部の構造

キヤノンは光学技術を生かした独自開発の小型読み取りモジュールにより、光学ユニットを小型化。表用と裏用で同じ光学ユニットを搭載することを可能にしました。表と裏で同じ光学ユニットで原稿を読み取るため、表裏の差が出ず、色味も忠実に再現できます。

読み取りモジュールの小型化を可能にしたのは、カメラで培った光学技術です。レンズの一部にプラスチックの特殊な非球面レンズを採用し、小型化を実現。熱膨張によるピントのズレも独自の機構で補正します。さらに、レンズの組み立てをロボットで自動化し、精度の高いモジュールを実現しています。

小型読み取りモジュールに搭載されるレンズ

小型読み取りモジュールに搭載されるレンズ

キヤノンの光学技術を応用した新千鳥配列イメージセンサー

コピーやプリントにスジが入ってしまったという経験は誰しもしたことがあるのでは?これは、読み取り部のガラスについた汚れが原因で起こる現象です。大量の原稿をスキャンする時は、作業をやり直すだけでも大変です。iR-ADV DXシリーズでは、汚れのないキレイな読み取りを実現するために、光学ユニット内にある読み取りセンサーそのものの構造を刷新しました。

一般的なイメージセンサーでは、RGBそれぞれが1列で配置されています。ガラスにゴミが付着していると、その上を原稿が通過する時、RGBを読み取れずに色が抜けて、紙の搬送方向にスジが発生してしまいます。そこで、キヤノンは千鳥配列のイメージセンサーを新規開発し、RGBの各色を交互に配置。ゴミが付着しても、隣接する画素をそれぞれ異なる色で千鳥状に配列しているため、原稿の線と汚れとの区別がつきやすく検出が容易になり、周辺の画素情報を利用して高精度に補正をすることが可能です。

従来の配列と千鳥配列のスジ補正の違い

従来の配列と千鳥配列のスジ補正の違い

イメージセンサーを自社開発・生産するキヤノンは、千鳥配列イメージセンサーの開発において、各画素に光を取り込むマイクロレンズの構造設計などにデジタルカメラで培った技術を生かし、開発を行いました。キヤノンだからこそできる質の高いスキャンデータの作成を可能にしています。

ファイリングアシストで簡単・確実なファイリングを実現

紙文書の電子化はスキャンして終わりではありません。実は面倒なのはそれから。スキャン後にファイル名を入力したり、適切な場所へとデータを格納する必要があります。キヤノンはiR-ADV DXシリーズとクラウドサービス「uniFLOW Online Cloud Scan Advance」との組み合わせにより、紙文書の電子ファイリングの自動化・効率化を実現します。

従来、帳票類を自動ファイリングするには、システムエンジニアなど専門の技術者が設定作業を行い、設定した通りの帳票のみ自動ファイリングすることができました。キヤノンが開発した「ファイリングアシスト」機能では、お客さまによる簡単な操作で、スキャンした文書を自動ファイリングすることが可能です。また、OCR(光学文字認識)処理と画像認識処理により抽出した複数の単語を組み合わせ、ファイル名、フォルダ名を自動で作成。お客さまがあらかじめ設定したフォルダに自動で振り分けます。スキャンからフォルダへの保存までの作業を、ボタン操作一つで自動で行うことができ、飛躍的な事務処理の効率化に貢献します。

ファイリングアシストのフロー

ファイリングアシストのフロー

この機能で重要な技術となるのが、帳票のレイアウトパターン認識機能です。帳票の記載内容を「文字列」ではなく、「文字の領域」をレイアウトパターンとして認識。そのため、帳票の明細の内容や行数が違っていても、同一帳票として認識可能です。

キヤノン独自の画像認識アルゴリズム

キヤノン独自の画像認識アルゴリズム

さらに、文字ブロックで認識するため、日本語だけではなく多言語対応も実現しました。あらゆる業種で使用される複合機では、さまざまな種類の帳票に対応する必要があります。キヤノンは、世界中に拡がる販売ネットワークを生かし、さまざまな国・地域の数百の帳票を集めて検証を重ねました。文字の区切り方やラテン語圏で使われるウムラウト記号の認識などの難しい難題に直面しながらも繰り返し改良を行い、世界中のお客さまが活用できるように汎用性と精度を高めることができました。

クラウドとの一体化でオフィスの業務効率化を進化させるDX時代の複合機

文書の電子化はスキャンをして終わりではありません。データを格納して終わりでもありません。その電子化を生かしてこそ、真の意味でのDXが息づいていきます。スキャンした文書を経費精算のクラウドサービスに自動で読み込みこませるなどの、新たな取り組みもすでに始まっています。キヤノンはこれからも、複合機とクラウドサービスを一体化したDXを推進する技術で、お客さまのニーズに応えていきます。

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