しくみと技術大判インクジェットプリンター
高生産性と高画質を両立する
大判プリントを追求
グラフィックアーツ、写真、ポスター、CADといった用途に加え、サイン&ディスプレイなどの屋内外向け広告印刷や、壁紙や床装飾などの産業印刷の分野へと活躍の場を広げる大判インクジェットプリンター。それぞれの用途に合わせたインク特性が求められるほか、商業印刷としての高生産性、高画質の両立が大きな差別化の要素となっています。
2021/06/03
大判インクジェットプリンターのしくみ
大判インクジェットプリンターのプリントは家庭用のインクジェットプリンターと同じように、パソコンなどから印刷指示された画像データを高速処理し、プリントヘッドから超高速で極小インクを用紙に吹き付けて印刷します。
高精細画像を大判の用紙に高速で印刷するため、大容量の画像データを保存するHDD、データを高速処理するイメージプロセッサー、精密なプリントヘッドや大容量インクタンクなどが必要となります。
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大判インクジェットプリンターの技術
キヤノンの大判インクジェットプリンターは、さまざまな市場に対応した幅広いラインアップを備えています。
グラフィックアート市場には、12色モデルと8色モデルの2系統の「PROシリーズ」を展開。
また、CAD/ポスター市場には、生産性やセキュリティを強化した「TXシリーズ」、「TMシリーズ」と「TAシリーズ」。さらに、屋内外向け広告印刷や、壁紙や床装飾など幅広いメディアに対応する機種を展開しています。
より高い色域表現を実現するLUCIA PROインク
グラフィックアート向けの「imagePROGRAF PROシリーズ」に採用されているのが「LUCIA PRO」インクです。
キヤノンは、色材をマイクロカプセル化(※)したことにより、インク色材を用紙上に緻密・高密度に配置し、より高い色域表現を達成しています。光沢紙、半光沢紙へのプリントにおいて、印刷表面がより平らで滑らかになり、印字表面の散乱光を抑制。光沢性や写像性(像の鮮明度)が向上し、高品位なプリントを可能にします。
(※)マイクロカプセル化 :色材微粒子の表面をポリマーで覆いかぶせる技術
また、マット紙およびアート紙へのプリントにおいては、顔料が用紙の表面に留まるため、発色性に優れ色鮮やかなプリントを実現します。
光沢紙で高画質プリントを可能にしたクロマオプティマイザー
「imagePROGRAF PROシリーズ」12色モデルには、キヤノン独自開発の透明インク「クロマオプティマイザー」を搭載。光沢紙・半光沢紙における、さらなる高画質化を実現しています。
人がプリントを見るとき、光源となる照明の光を受けてプリントから反射した光を色として感じています。「クロマオプティマイザー」はプリントから反射する光を最適に制御することで、鮮やかな色は鮮やかなままに、淡い色は淡いままに、暗部はより深く、黒はぼやけることなく黒々と見えるように、原画に忠実なプリントを実現します。
普通紙でも高発色を実現するLUCIA TDインク
CAD・ポスター向けの「imagePROGRAF TX/TM/TAシリーズ」に採用されているのが「LUCIA TDインク」です。
従来の5色染顔料インクモデルでは、CAD図面を出力する際、インクジェット普通紙を使用すると線や文字を高品位に再現できるものの、インクジェット適性の低い普通紙を使用すると、高画質が実現できないことがありました。
そこでキヤノンは、表面張力の高い新マットブラックを採用した5色フル顔料インク「LUCIA TD」を開発。用紙にインク滴が着弾したときの濡れ広がりが小さく、色材が用紙表面近くに留まりやすいため、
インクの受容層がなくインクジェット適性の低い用紙においても、高濃度でにじみの少ない、くっきりとした線や文字を高品位に表現することを可能にしました。
また、 「LUCIA TD」は全色で新顔料インクを採用し、耐水性にも優れています。水濡れに強く、屋外の現場での図面の確認にも適しています。
CAD図面の高精細再現
インクジェット適性の低い普通紙で細線を高品位に再現 |
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従来のマットブラックインク |
LUCIA TD |
表面張力を最適化 |
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ポスターを出力する場合、インクジェット用コート紙や光沢紙を使えば高発色を実現しますが、インクジェット普通紙では満足のいく画質を得られない場合があります。
「LUCIA TDインク」は、分散剤を改良し顔料と用紙に含まれる成分との反応性を強化。顔料が用紙表面付近に留まり定着しやすく、鮮やかな発色を実現しています。
インクジェット普通紙でも、発色に優れた色鮮やかなポスターを作成できるため、ユーザーが外部に委託していたポスターやPOP、社内掲示物などの内製化を促進し、コストダウンに貢献します。
加えて、「LUCIA TDインク」は全色フル顔料インクであるため、耐光性に優れ、色褪せしにくいことも特長のひとつです。
ポスターの高画質再現
安価なインクジェット普通紙でポスターを高発色に再現 |
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従来のインクLUCIA TD 顔料と用紙に含まれる成分との反応性を強化し、より多くの顔料が用紙表面付近に留まることで、従来の顔料インクと比べて高発色となる |
自動ロール紙セット
高いユーザビリティーもキヤノン大判プリンターの大きな特長です。
グラフィックアート用の「imagePROGRAF PROシリーズ」、ハイエンドCAD・ポスター用の「imagePROGRAF TXシリーズ」では、ロール紙を本体給紙部に置くだけで自動ロール紙セットを実現しています。
ロール紙を給紙部に置くだけで、用紙は自動的に搬送され、内蔵のマルチセンサーが紙厚、紙幅や紙の斜行などを検知し印刷可能な状態まで自動調整を行います。オペレーターを煩わせていた紙の送り出しなどの面倒な作業を不要にし、給紙時に用紙の印刷面に触れる必要がないため、指紋や汚れの付着も防止できます。さらに用紙種類を自動で検知するほか、用紙残量も自動推計します。
オペレーターはロール紙を置いた後にその場を離れられるため、拘束時間の圧倒的削減を実現するとともに、作業負荷を軽減し出力ワークフローを効率化しました。
自動ロール紙セット動画(23秒)
独自開発のUVgelインク搭載により高画質、高生産性、幅広いメディア対応を実現
商業・産業用印刷向け大判プリンター「Colorado1650」は、サイン&ディスプレイの屋内外向け広告印刷や、壁紙や床装飾など、幅広いメディアに対応するキヤノンのインクジェット大判プリンターです。
Colorado1650
「Colorado 1650」に使用される「UVgelインク」は、エコソルベントインクの広い色域、ラテックスインクの無臭等の環境性能、UVインクの高生産性といった既存インク技術の長所をあわせ持つインクです。
インクの温度調整技術によりメディアへの着弾後ジェル状となり、正確なドットゲインコントロール(※)をおこなうことで着弾位置を維持して、インク同士の不用意な混合やにじみの発生を抑止。色の正確性、一貫性、シャープさを保ち高画質を生みだします。
(※)メディア(紙など)への着弾後、ドットサイズを拡大すること
キヤノンでは、「UVgelインク」の特性を活かすため、プリントヘッドとLED硬化ユニットにそれぞれ独立した専用のキャリッジを配置しました。
従来のUVプリンターのように吐出と硬化を何度も繰り返すことなく、画像形成して一気に硬化させるため、高品位な画像を圧倒的な印字スピードで実現します。
一台でグロス・マットの仕上がりを実現するFLXfinishテクノロジー
インクを交換することなく、煌びやかなグロスと落ち着いた高級感漂うマットインクという全く異質の仕上がりを実現するのが「FLXfinish」テクノロジーです。
グロス調、マット調のプリントを、インクの硬化タイミングで制御。硬化後のインクの形状が光の反射に影響してグロス調、マット調の仕上がりの差になり、印刷するメディアによって適する使い分けができるようになりました。