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世界初、100万画素SPADセンサーの開発に成功 世界初、100万画素SPADセンサーの開発に成功

イメージセンサーとして、測距センサーとして、未来の社会の「眼」となる

世界初、100万画素SPADセンサーの開発に成功

AR、VR、自動運転、超高速度撮影、自動ロボット。IT革命によって可能性が大きく広がり、今後の社会を変えていくと期待されるキーデバイスが、光を電気信号に変換する「センサー」です。キヤノンが開発発表したSPADセンサーは、SPADセンサーとして世界で初めて(※1)100万画素を実現。世界中から注目を集めています。

2021/3/31

光の量ではなく、数を測る

SPADセンサー(Single Photon Avalanche Diode)とはイメージセンサーの一種。イメージセンサーといえば、カメラなどに搭載されるCMOSセンサーを思い浮かべますが、SPADセンサーはCMOSセンサーと原理が異なります。

光に粒子の性質があることを利用することは同じであるものの、CMOSセンサーがある一定時間に画素に「溜まった光の量を測る」 しくみなのに対し、SPADセンサーは、画素に入ってきた光の粒(光子=フォトン)の「一つひとつを数える」 しくみです。画素に光子が入るとすぐに電荷に変換され、その電子はあたかも雪崩(アバランシェ)のように一つの光の粒をきっかけに倍増し、大きな信号電荷として取り出すことが可能になります。

CMOSセンサーとの比較

CMOSセンサー

SPADセンサー

CMOS センサーでは、光を電気信号として読み出す時に、ある一定期間に画素に溜まった光の量を測るというしくみ上、光の粒(光子=フォトン)と一緒に画質の低下を招く「ノイズ」も混ざってしまいますが、SPADセンサーでは、光子の個数をデジタル的に数えるため、電気的なノイズが入り込みにくく、クリアな画像を得られます。

多画素化の壁に挑戦

これまで、SPADセンサーは多画素化することが困難と言われてきました。

一つひとつの画素において、入ってくる光を信号として検出できる面積(感度領域)が小さいため、多画素化のために画素サイズを小さくすると、感度領域がいっそう小さくなり、結果として入ってくる光子が少なくなるという大きな課題がありました。具体的には、従来のSPADセンサーは、構造上隣り合う画素の感度領域の間に一定の距離を保つ必要があったため、1画素に光が入ってくる割合を示す開口率は、画素サイズが微細化するほど小さくなり、信号電荷を検出しにくかったのです。
キヤノンはCMOSセンサーの製品化で培った技術を応用した独自のデバイス構造を採用することで、画素サイズに依存せずに、開口率をほぼ100%にすることに成功。これにより、多画素化しても、入射する光子を漏れなくとらえることが可能となり、100万画素というこれまでに例がない多画素化を実現しました。

SPADセンサーの技術課題とキヤノンの優位性

これまでにない高速・高精細測距を可能に

キヤノンが開発したSPADセンサーは、100ピコ秒(※2)という時間分解能をもち、非常に高速の情報処理を実現できます。これにより、光の粒のような、高速に動くものの動きをとらえることができ、さらに、この「高速応答」という特長を生かし、3次元測距のような高精度な距離測定をすることも可能です。対象物に光を当て反射光が戻ってくるまでの時間を計測して距離を算出する「Time-of-Flight(ToF)方式」は、高精度な距離測定ができるものの、光の速度は極めて速いため、非常に高速な応答性を持つ光センサーがなければ採用できませんでした。キヤノンが開発したSPADセンサーは、光が戻ってくる時間をナノ秒(※3)以下の単位で認識。これまでの光センサーでは実現できなかったToF方式での測距を実現しています。

Time-of-flight(ToF)方式の測距のしくみ

イメージセンサーとして広がる可能性

今回開発したSPADイメージセンサーは、高速移動する被写体をゆがみのない正確な形状で動画撮影できるグローバルシャッター機能も備えています。画素行ごとに順次露光するローリングシャッター方式と比べ、全ての画素に対して露光を一括制御するため、露光時間を3.8ナノ秒(※3)まで短縮でき、1bitの出力で最大24,000fpsという高速撮影レートを実現。これまで不可能だった、極めて短い時間内に起こる高速な現象のスローモーション撮影を可能にしました。

例えば、今までは正確にとらえることができかった高速の化学反応や雷などの自然現象、あるいは物体の落下や衝突時の破損の様子などを、詳細に撮影できるようになるため、現象の解明や安全性・堅牢性の解析など、イメージセンサーとして幅広い分野での応用が期待されます。

極めて短い時間内に起こる高速な現象のスローモーション撮影を実現

AR・VR、自動運転のキーデバイスにも

ToF方式による距離測定を可能にしたキヤノンのSPADセンサーは、100万画素の高解像度かつ高速撮影ができることで、複数の被写体が折り重なっている複雑なシーンでも精度よく3次元測距ができる可能性を拓きました。

AR(拡張現実)、VR(仮想現実)といった分野では、実際の映像と仮想空間を重ね合わせるときに、SPADセンサーを使えば正確で高速な3次元空間情報を把握でき、リアルタイムでより正確な位置合わせができるようになります。また、自動運転実現のキーとなる、車と周囲の人やモノとの距離を測るセンサーへの応用にも大きな期待がかかります。

空想を現実に。社会の将来を切り拓く

100万画素 SPADイメージセンサーの開発は、奥行き情報を認識できる3次元カメラの解像度が100万画素に到達したということを意味します。これからの社会で必要とされる高性能な「ロボットの眼」としての活躍も大いに期待されます。

しかし、何と言っても、3次元カメラが100万画素を達成することなど、誰もが現実的とは想像していなかったできごとです。

キヤノンの開発により、これまでの常識では考えられなかった大きなインパクトをもった未知の製品やサービスが現実のものとなる可能性が広がり始めています。

  • ※1 SPADセンサーにおいて。2020年6月23日現在。キヤノン調べ。
  • ※2 1ピコ秒=1兆分の1秒。
  • ※3 1ナノ秒=10億分の1秒。

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