未来社会の「眼」となるキーデバイスの開発に成功
SPADセンサー
これからの社会をいままで以上に豊かにすると期待されるキーデバイスが、光を電気信号に変換する「センサー」です。キヤノンは、暗闇でもフルHD(約207万画素)を超える世界最高※1の320万画素のカラー撮影が可能な超小型(13.2mm × 9.9mm)のSPADセンサーの開発に成功しました。
2023/10/16
光の量ではなく、数を測る
SPAD (Single Photon Avalanche Diode) センサーは、イメージセンサーの一種です。イメージセンサーといえば、カメラなどに搭載されるCMOSセンサーを思い浮かべますが、SPADセンサーはCMOSセンサーと原理が異なります。
光に粒子の性質があるとことを利用するのは同じであるものの、CMOSセンサーがある一定時間に画素にたまった光の量を測るしくみに対し、SPADセンサーは、画素に入ってきた光の最小単位である光子(以下、フォトン)を一つひとつ数えるしくみになっています。
画素に一つのフォトンが入ると、そのフォトンから多くの電子へと雪崩のように瞬時に増倍させることができるため、一つのフォトンを一つの電気信号として取りだせます。
CMOSセンサーでは、光を電気信号として読み出す時に、画質の低下を招くノイズも一緒に混ざってしまいますが、SPADセンサーでは、フォトンの個数をデジタルに数え、電気的なノイズの影響を排除することで、暗いところでもわずかな光を検出でき、暗闇でも被写体を鮮明に撮影できます。
暗闇でもあたかも明るい場所のように
キヤノンが開発したSPADセンサーは、画素内にフォトンを反射させる独自の画像構造により、有効画素面全体で効率よくフォトンを検出し活用できます。そのため、同一照度下において、一般的なCMOSセンサーの10分の1の画素面積で同等の撮影が可能で、小型でありながら感度が大幅に向上し、闇夜などの暗い環境下において、静止画はもちろん、動画の撮影も行うことができます。暗視や監視用のカメラにこのセンサーを搭載することで、暗闇であっても明るい場所で肉眼で見た色と同じ色で対象物の動きをとらえるようになります。
高画素化と高感度の両立を実現
従来のSPADセンサーは、感度領域という電界のかかっている空間のフォトンしか検出できず、画素を小さくして高画素化を図ろうとすると、感度が低下してしまうという課題がありました。
キヤノンのSPADセンサーは、独自の構造により、感度領域が画素全体に広がるため、フォトンによる電荷(電気の量)を効率よく集めることができます。そのため、フォトンの利用効率がよく、感度領域をほぼ100%使用できるため、画素の微細化と高感度の両立を実現しました。
これにより、星の出ていない闇夜よりも暗い環境下でも、世界最高画素数の320万画素の鮮明な画像を得ることができるようになりました。
フルHDを超える320万画素のカラー画像
これまでにない高速・高精細測距を可能に
キヤノンのSPADセンサーは、100ピコ秒(100億分の1秒)レベルの非常に速い時間単位で情報を処理することができるため、光の粒のような高速で動くものをとらえることが可能です。
極めて短い時間内に起こる高速な現象のスローモーション撮影を実現
(出典:スイス連邦工科大学ローザンヌ校およびキヤノン)
フルHDを超える高解像度、わずかな光をとらえる高感度性能に加え、1秒間に約30万km(地球7.5周分)という速さで動く光の軌跡をとらえることができます。これらの特長を生かし、自動運転や医療用の画像診断機器などに用いるセンサーとして幅広い活用が見込まれています。
キヤノンは、SPADセンサーを搭載した超高感度カメラを世界で初めて※2製品化。超望遠の放送用レンズと組み合わせることで、夜間に約5km先の船舶を発見するだけでなく、船体の種類までも確認が可能です。
詳細は、超高感度カメラ MS-500のWebページへ