メモリーやイメージセンサーなど幅広い半導体デバイスの生産に使われるi線露光装置
AI、IoT、電気自動車(EV)、ロボット、宇宙開発など、未来を担う技術も、微細な回路パターンをつくり込む半導体露光装置なしに語ることはできません。キヤノンは1970年に国内初の半導体露光装置を発売して以来、半世紀以上にわたり半導体デバイス生産に貢献してきました。現在では、ロジックやメモリー、5G通信、車載向けパワーデバイスなど社会に欠かせない半導体デバイスの生産に用いられる、i線(水銀)やKrF(フッ化クリプトン)を光源とする露光装置が世界中で活躍。ニューノーマル時代にふさわしいリモートサービスも展開し、半導体デバイスメーカーの生産性向上に貢献しています。
液晶や有機ELといったディスプレイの生産にもキヤノンは欠かせない存在です。大型のガラス基板に回路を露光するフラットパネルディスプレイ(FPD)露光装置は、スマートフォンやノートPC、タブレット端末はもちろん、4K・8Kテレビなど薄型かつ大型で高精細なディスプレイパネルの生産を支えています。
ガラス基板にディスプレイの回路を焼き付けるフラットパネルディスプレイ(FPD)露光装置
漆黒の黒色まで表現でき、省電力、薄型・軽量という点でも優れる有機ELディスプレイは、スマートフォンやタブレット端末、テレビの主流になりつつあります。しかし、生産は難しく、かつては量産は不可能といわれていました。立ちはだかるさまざまな壁を打ち破り、世界に先駆けて量産装置を製品化したのがグループ会社のキヤノントッキです。以来、世界の量産をリードし続け、有機ELディスプレイの普及を促進。現在では、新たな製造方式や材料の開発にも力を注いでいます。
キヤノントッキが生産する有機ELディスプレイ製造装置
真空下でナノレベルの成膜を行うキヤノンアネルバのスパッタリング装置
キヤノンは、ほかにも幅広く特徴ある装置を展開しています。グループ会社のキヤノンアネルバは真空成膜技術でハードディスクやDRAMなどの金属薄膜を形成するスパッタリング装置などを手がけ、キヤノンマシナリーは薄いダイ(半導体チップ)もハンドリング可能なダイボンダーをはじめとした自動化・省力化機器を生産。インダストリアルグループとして各社の技術を持ち寄りながら連携を強化し、今後のデジタル社会におけるものづくりの新しい価値をつくり出していきます。
ダイを高速・高精度で接合するキヤノンマシナリーのダイボンダー
回路線幅20nm以下の最先端デバイスを低コストで製造する手段として開発が進むのが、キヤノンのナノインプリントリソグラフィです。
ナノ単位の回路パターンをハンコの原理で形成するシンプルな装置構成となっているため、圧倒的な省エネルギーと低コストの実現を可能にします。超微細半導体製造時の省エネルギー技術として第49回環境賞※を受賞するなど、IoT社会を支える技術として期待が高まる一方、すでに主要性能はメモリーの量産レベルに達し、現在半導体デバイスメーカーとともに量産適用の検証を行っています。さらに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、先端ロジック製造工程への適用に向けた研究開発も進められています。
1. インクジェット技術を使って、液滴状にしたレジストを回路パターンにあわせてウエハー上に塗布する
2. 回路パターンが彫り込まれたマスクと呼ばれる型をスタンプのようにウエハー上のレジストに直接押しつける
3. 紫外線でレジストを硬化させて回路パターンをつくり、マスクをレジストからはがす